「IPOを実現する労務管理の基礎知識」第1部書き起こしレポート

2019年4月22日、「”元東証上場推進担当役員”が語る!上場を実現する”成長を加速させる組織創り”とは」と題する、共催セミナーが行われました。本セミナーの第1部「IPOを実現する労務管理の基礎知識」の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー

社会保険労務士法人みらいコンサルティング代表社員/特定社会保険労務士
森田 穣治

大手百貨店を経て、2003年にみらいコンサルティング株式会社へ入社、2007年より現職となる。 従業員数名のベンチャー企業から、上場企業まで、さまざまな業種・規模の、企業の人事労務改善コンサルティングを実施。特に IPO(株式上場)準備会社の労務改善支援の実績多数。

IPO労務というキーワード

改めましてこんにちは、只今ご紹介頂きました社会保険労務士法人みらいコンサルティングの森田と申します。本日一時間程私の方でお時間を頂いておりましてIPOを実現する労務管理の基礎知識というテーマでお話をさせて頂きます。

私が2003年からこのみらいコンサルティンググループに入りまして、当時はまだ中央青山監査法人というのがあり監査法人の100%出資子会社の中央青山PwCコンサルティングという名前の経営コンサルティング会社に入社しました。当時は監査法人の先生とIPOを目指す企業様の監査法人のショートレビュー、証券会社のショートレビュー、受けたことのある会社様も多いと思いますが一緒に労務に関するショートレビューをやっていたのは15、6年前になります。IPO労務というキーワードは当時はあまり聞きませんでした。

上場するにあたっての労務周りの整理というのは社会保険未加入の問題などが中心であった印象があります。IPO労務という分野を監査法人の子会社というポジションでやることになり15、6年間やってきたところで実績やノウハウも溜まってきたと思います。その中でも本日はIPO労務の中でも重要項目に絞ってお話をさせて頂きます。

第1ステップ自社の現状と課題の把握

お手元の資料にもありますが最初に第一ステップは全ての改善することの基本かと思いますが最初に自社の現状と課題を把握するということです。IPO労務においても自社で今どの程度出来てるのか出来ていないのかよく人間ドックに入るイメージで調査を受けてくださいという話をしますがまず第1ステップは現状を知るということです。

労務コンプライアンス調査とは

2ページにありますのが、労務コンプライアンス調査です。いわゆる短期調査のメニューを私どものサービスメニューとして労務コンプライアンス調査と呼んでいます。あくまでも短期調査ですので労務管理体制全般の確認をさせて頂きそれをレポートにまとめてご報告するサービスになります。実はこの労務コンプライアンス調査はロゴを作って商標登録しているので同業の皆様も労務監査などの名前でされていることが多いですが労務コンプライアンス調査という名前はおそらくは私たちしか使っていないと思います。

資料に調査の流れを書いていますがこれは例というか私どもが実際にやっているサービスの流れになります。①事前資料確認は、通常は人事関連の規程と各種勤怠管理など帳票類をお預かりしたものに目を通し、②調査は、実務担当者にインタビューをさせて頂きます。そこから課題をまとめて③報告書を作り、④報告会の実施という流れでやらせていただいております。大体一か月くらいで完了するサービスになりますがこのような形で弁護士の先生でも結構ですし労務に関して詳しい方に一度レビューをしてもらうことは一番最初のステップとしては必要なことかと思います。

第2ステップ:課題解決に向けた具体的な検討

次の3ページに第2ステップと書きましたが課題解決に向けて具体的な検討開始と最初の現状把握したらそれをどのように改善するかという流れになります。4ページを見て頂くと今回のIPOを目指すというテーマになっていますのでIPO審査の流れと労務における整理事項という形で整理しています。

申請期に上場という枠を書いていますがそこから遡ってどのタイミングでどんなことが必要かということが書いてあります。ただ、あくまでも理想形であって理想通りにいかないことも多く1〜6まで番号がある中で1番目のタスク内容は労務コンプライアンス構築期間とありますが、3期前からになっています。そんなに前から出来る会社様は少なく実際私共もご支援をさせて頂く時は直前期に入ってからとか直前前期の終わりごろから関わらせていただくことが多いかなと思います。ただ3番目に過去勤務債務の解消が求められる期間とありますがこれは未払い賃金の話です。未払い賃金の時効は2年になりますから、本来は上場を目指すとなると直前前期の頭から適正な運用を将来に向かってやれるのが理想ではあります。

先ほど労務コンプライアンス調査といったものは理想としては3期前に実施して一通りの改善が終わって直前前期の頭から適正運用されるのが一番良いと思います。まだ上場のタイミングまでスケジュールが明確になっていない出来るだけ早く着手出来る企業様は一番最初の現状把握を出来るだけ早く実施し課題を見つけておいたほうがいいと思います。ですので証券会社の方とお話しすると適正運用はいつから実施すればいいですかという話をすると直前期はせめてちゃんとしてほしいという話はよく聞かれます。直前期の1年間でも特に人事労務の問題においては未払い賃金の問題もあるので直前前期の頭からが理想ということはお伝えしておきたいと思います。

労働時間管理

5ページをご覧下さい。一つ目の労働時間管理、労務の問題でIPOを目指される以外でもそうなんですが労働時間管理はすべての起点になります。というのは時間を正しく把握すると残業代も正しく払いますし長時間労働が実際あるのかないのかも分かります。三六協定を守れているのか守れていないのか全ては労働時間を適正に管理しているかという所から始まります。当然IPOの審査においても労務、労働時間管理は最重要事項になります。ここの入り口しっかりしていると全般的にしっかりしている会社かなという印象を与えられるくらい重要な項目になっています。

(お手元の資料の)一番上にビックリマークが書いてありますが、「長時間労働に対する意識の面接指導がある」をしっかり実施するために、全ての労働者の労働時間を把握することがこの4月から義務付けられています。一番下の枠の中にも書いてありますが、これまでは割増賃金を適正に支払うために労働時間を客観的に把握するよう通達がありましたが、この4月からは健康管理面という意味で全てと書いたのはこの後のページでも対象者が出てきますが、管理監督者や裁量労働制の適用を受けている方も含めて労働時間をきちんと記録して下さいとなっていますので、管理監督者が記録をとっていない会社があればこの4月からはしっかり記録する必要がありますのでお気を付けください。また、いくつか「労働時間とは?」と労働時間の考え方を記載していますが、労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間にあたります。明示は言葉の通りで業務命令として残業しなさいとか働きなさいというものですが黙示の指示と言われるものはなにか、例えばこれから三六協定を順守しなければいけないので、時間通りに働かなくちゃいけないのであまり残業できない、例えば上司が部下に19時だから帰れと言っていながら、一方であの企画書は明日の朝出せと言ったとしたら結局明日早出なのか家でやるのかになります。家でやれとは言ってませんが実際には家でやれと指示しているのと同じようなものになる。そのようなものも含めて黙示の指示になります。あとは休日に出勤する、休日出勤の手当を払っていない、休日出勤のしたという事実を上司が把握しているかどうか、ただ事前申請が必要な休日出勤申請をしていなかった、申請がないから労働として扱わなくていいかというと働いたことを知ってしまってる以上はそれは黙認したということになります。それも含めて労働時間と考えなければいけないということもあったりします。

次のような時間は労働時間に該当しますと1〜3まで例示しています。従来から労働時間と考えられている項目なのでこれは後ほど確認していただければと思います。6ページをご覧下さい。労働時間管理の続きになりますがこの4月からすべての労働者の労働時間を管理することになりました。対象者は記載の通りで繰り返しになりますがいわゆる裁量労働制等のみなし労働時間制の人も含め管理監督者、要するに会社の中で雇用されている方なので役員の方は除かれますがすべての労働者の時間管理をすることが義務付けられています。労働時間を客観的に把握する方法は①のタイムカードもありますし②のようにPC等で勤怠システムを導入して記録を残すという方法が客観的に把握することになります。客観的に把握するもの以外は自己申告制と呼ばれるものになります。自分が働いた時刻を手書きやする、エクセルに自分で入力するとかは客観的な記録ではなくて自己申告制による記録ということになるので例外的には認められていますけれどもそれ以外の制約事項はいくつか付いています。ですので原則はあくまでも記録を客観的に残してそれを本人が変更できない状況が必要になります。その意味ではIPOの準備中の企業様でまだエクセルで管理しているという会社様には出来たらせめて勤怠システムは入れたいですねということはお伝えしています。というのは客観的な記録も取れますしこの後出てくる三六協定とかエクセルとか手書きですと残業時間の累計を出さなければいけない。勤怠システムですと設定した時間になるとアラートメールを飛ばすことも出来ます。そういう管理にしていかないとおそらく特に今後は働き方改革関連の法案の4月以降法改正で三六協定の上限の時間の管理も変わってきてますのでそういったところを手作業でやるのは難しくなっていますのでシステムは必要かと考えています。

一番下の記録の保存については勤怠記録は3年間保存が義務ですのでお忘れのないようにしてください。7ページを見て頂きますと一番上に労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインが2017年1月に出ていますけれども労働時間の状況を把握するというのはどういうことですかというのはそこに書いてあると通りです。始業終業の時刻をきちんと記録して下さいとあります。左側の原則が先ほど見て頂いたところで私が例外と言った自己申告制は右の枠の中にあります。

例外事項を良しとするためにきちんと労働者と管理する方に時間を例えば1分単位でしっかり管理しなさいとか働いた時間をちゃんと申告しなさいという説明をきちんとするというのが一つです。要するに適正に時間が申告出来るような説明や体制を整備するというのが制約事項としてあります。そこに乖離の把握、在社時間と乖離の把握と書いてありますがこういったものもあるのかどうか確認する所まで求められます。乖離は下に図を載せていますが在社時間というのは会社に出てきて会社を出ていくまでの一番長い時間であり通常はその内側に始業と就業がありますので当然出社と始業には乖離が生まれます。

もちろん就業と退社にも乖離が生まれます。こういったところが例えば出社してから始業まで1時間くらい時間が空いていると、この1時間は何をしていたんですかとなるのでそれが早出なのかそれとも労働ではなく人によっては朝勉強しています、新聞読んでたりとか、ご飯食べてますとかありますので自己申告の場合は乖離が何なのかきちんと会社としては積極的に残しておいたほうが後々に労働時間ではないのかと言われたときに労働時間ではありません確認が取れています、という言い方が出来ると思います。

36協定の順守

8ページをご覧下さい。二つ目に重要な項目はここだけピンポイントですが三六協定の順守になります。三六協定はご存知の通り違反している状態を非常に判断しやすい法令違反なのでしっかりと確認されます。三六協定に関する注意点も書いてありますが一つは適切に管理されているかそれから内容が適切なのかそれから協定の範囲内に時間外労働を抑える管理体制が整っているか。どちらかというと一つ目と二つ目は気を付けやすいです。この管理体制の部分は難しく管理体制がないとどうやって守られてるかという質問に答えられないのでやっぱり管理体制がきちんと整っていることは重要かと思います。

一つ目には適切な管理と文書と書いてますが、例えば本店、営業所、支店がある会社で本社だけ三六協定出してますという会社もありますがそれでは足りません。事業所ごとに三六協定をそれぞれ最低年1回の届け出をする必要がありますということが書いています。適切な内容というのはそこに期間と限度時間の平成10年労働省告示というのを載せていますがこれは今年3月まではこれでした。今度から法令によって定められていますので適切な内容というのはそもそも協定出来ないような時間で協定してないかどうか、そんなところが確認のポイントになってきます。一か月45時間、一年360時間、これが一番有名な時間だと思いますのでこれが最長です。1年単位の変形労働時間制を採用している企業様はこれを1か月42時間、年320時間と読み替えますけどその範囲できちんと協定されているかというのが適切な内容かどうかという話になります。

この後出てくる特別条項、いわゆる月45時間で年360時間で収まりませんという場合にそれを越えることが出来るのがこの特別条項になります。次の9ページですが特別条項はおそらく三六協定に盛り込んでいる会社様もあれば使っていない企業様もあると思いますがそこに文章で2行ほど書いてあります。要するに特別な事情があるときに使える協定です。今回の働き方改革関連法案の中で上限規制という言われ方をしています。三六協定の上限規制は特別条項にこの3月までは上限がなく、要するに月45時間を越えて100時間や120時間でも実質法令違反にならず協定することが出来ました。そこに上限を設定したのが上限規制の話になります。もちろん年間にも上限がつきました。なので特別条項の改正があったということになります。特別条項自体は臨時的に使うもので特別な事情と書いてありますが原則的には恒常的に使うものではなく突発事由に対して対応出来るように協定しているものになります。

時間外労働の上限規制

次の10ページを先にご覧下さい。三六協定の順守はIPO審査上に非常に重要視されています。大企業は今年4月1日から中小企業に該当する企業様は来年4月1日から法改正がスタートしています。何がどうなったか一番上のビックリマークですが三六協定で定める時間外労働に罰則付きの上限が設けられました。特別条項の月100時間、120時間というのはもう出来なくなりましたということです。三六協定の原則を考える時にそこに基本事項を載せています。

これはおさらいとして三つほど書いてますが労働基準法の中で労働時間、原則一日8時間、週40時間これを法定労働時間と呼んでいます。実際にはこれを一分たりともオーバーして働かせてはいけないのですが三六協定を届け出することでこれを越えて残業させることが出来ます。もう一つは法定休日の考え方ですが労基法は原則一週間に一日の休日を与えなさいとなっていてこれが法定休日と呼ばれているものです。実際には一般的には週休2日がほとんどで週休2日で働いてる企業様が多いと思うのでその片方が法定休日、もう片方が法定外休日として会社の所定休日は週2日というのが多いと思います。

11ページを見て頂きますと今回の上限規制の内容です。原則としては従来の1ヶ月45時間、一年360時間という協定できる条件ですがこの月45時間、年360時間という限度時間には法定休日労働は含まずにカウントしていいことになっています。それが現状、今年の3月までそうでした。

それが4月以降どう変わっていくのかといいますと、臨時的な特別の事情がある場合という特別条項の所の改定内容ですけれども、特別な事情ってどういう時に使えますかというのがそこに書いてあります。通常予見することの出来ない業務量の大幅な増加とそれに伴って臨時的に原則月45時間、年360時間のこの原則の限度時間を越えて労働させる必要があるとありますが、あくまでも臨時なので毎月毎月年12回使えるものではなくて一年のうち6か月6回までという上限が設けてあります。

6回というのは会社で6回ではなくて個人ごとに6回です。じゃあこの特別条項を適用したらどのくらい働かせることが出来るかというと①〜③になります。①は月100時間未満とあって新聞とか結構前に見たことがあるかもしれませんが月どんなに働いても100時間未満に抑えてください。時間外労働プラス休日労働と書いてありますがこの休日労働というのは法定休日労働のことを指しています。今までは月45時間というのは時間外労働だけ拾っていましたがこの特別条項の考え方、4月以降は月100時間未満というカウントについては時間外労働プラス法定休日労働を合算してカウントすることになります。

今までは法定休日に1、2、3回とカウントしていましたがそれが働いた時間を加算することなります。②は年720時間以内、これは年360時間を越えていい時間が720時間までということになります。こちらが時間外労働のみでのカウントします。③が今度2か月から6か月の平均をとって80時間以内、2か月3か月4か月の平均をとっていた時に常に80時間以内で収まるように時間外労働と法定休日労働の時間を合算してカウントする、こういう管理が4月以降必要になっています。この2か月から6か月の平均の考え方として、12ページをご覧ください。左側に現在と書いてあるのは3月までという見方をしていて改正後は4月以降です。現在と書いているのは先ほど見て頂いた法律上では残業時間の上限はなくて告示によって決まっていたものが改正後4月以降は法律によって上限時間が決まりましたよとなります。その決まった内容は前のページで見て頂いた内容になりますが、次の13ページには2か月から6か月の平均を取る時にどう考えるか右の真ん中に米印で青字で書いてありますが2か月から6か月のカウントは三六協定の有効期間に縛られませんとあります。三六協定は通常一年間なので4月から翌3月、1月から12月とか一年間で出していますが基本的にはずっと継続していきます。なので三六協定の有効期間をまたがってでも2か月から6か月の平均というのは常に80時間以内に抑える必要があります。

左の方の4月に当月と書いてます。当月何時間まで働かせることが出来ますかといった時に真ん中の下の方に前月に99時間の時間外をした場合に当月は61時間まで働けます。こういう管理をしてくださいとなりました。14ページをご覧下さい。すでに新しい書式を大企業に該当する会社様はもう出したかもしれませんがこれが新様式になります。三六協定の新様式は中小企業は来年4月からになります。従来は三六協定はA4横書き一枚分でその中で特別条項も書いてました。今度から特別条項を使う場合には一枚目と15ページの2枚目の2枚組になります。新様式はネットでワード形式でダウンロード出来ますけれどもこれを使う場合には特別条項を使うには二枚目も必要になります。細かい内容はここでは見ていきませんが先ほどの99時間、100時間未満に抑えるとか年間720時間未満に抑えるとかそういう話に沿って協定の内容を記載することになります。

36協定の有効期間

16ページをご覧下さい。既にご存知の方も多いと思いますが、うちの(会社の)三六協定はいつから新しい書式にする必要があるかという話ですが一番上ですが改正法は2019年4月1日以後の期間のみを定めている三六協定に適用です。これの意味は例を見て頂いたほうが早いが例えば三六協定の有効期間が昨年の10月1日から今年の9月30日までという一年間で出している場合、大企業の場合この4月から新しい様式が必要になりますが、実際にはこの4月1日をまたいで一番最初に更新するタイミングです。ですからこの例でいうと今年の10月1日に出し直す三六協定から新様式で届け出をすることになります。

ということは当然新しい管理も10月1日からとなります。中小企業の皆様も考え方は一緒ですので来年の4月1日をまたいで最初に更新する時からこの新しい様式で出していただくようになります。もちろん前倒しで4月から変えても構いませんが、原則考え方としては次に4月1日をまたいで出す時からで大丈夫です。時間外労働の上限規制の適用除外は記載の通りですが自動車運転業務の方は現状の三六協定の上限を受けてません。いわゆる改善基準告示の中で規制されていると思いますがその辺りは猶予期間をおいて5年後適用されるとか建設の事業、これは業務と事業をあえて使い分けてますが建設事業・建設業の会社様はそこで働く総務経理の方を含めて適用除外です。ですから5年間の猶予があります。こういう適用除外があるということを改めて確認しておいてください。

管理監督者の範囲

ここから3つめの項目になりますが、17ページをご覧ください。管理監督者の範囲はいわゆる労基法上の管理監督者は、IPO労務の改善のお手伝いの中でも一番手間のかかる部分であります。管理監督署の範囲はどこまでが妥当かとありますがそもそも管理監督者とは法律にどう書いてあるのかというのは一番上の段にあります。労働基準法41条第2号に書いてあります。

事業の種類にかかわらず監督もしくは管理の地位にある者、これが労基法上の管理監督者になりますが細かいことは書いていないのでわからないということで下に古い通達が書いてあります。管理監督者とありますがその前に管理職と管理監督者の違いをあえて書いていますがうちの会社で管理職と言っているのといわゆる労基法上での管理監督者は必ずしもイコールではない、イコールのほうが管理しやすいが使い分けても構わないです。

青い丸の2つ目に管理職のうちに管理監督者に該当しない者には当然残業代を支払う必要があります。それをあえて払わないといわゆる名ばかり管理職という言われ方をします。管理監督者の通達はその下の枠の中にあります。経営と一体的の立場にあるものの意味であり、これに該当するかどうかは名称にとらわれずその職務と職責、勤務態様、その地位にふさわしい待遇がされているか否か実態に照らし合わせて判断すべきですとこれまた通達もぼやっとしています。なのでなかなかこうやっておけば大丈夫ですと言いにくいので管理監督者の範囲は非常に難しいです。

次の18ページに私たちがざっくり管理監督者の範囲として大丈夫そうかなとイメージする時のフローみたいなものを載せてあります。左側にスタートと書いていますがそこに勤怠・報酬・権限等のチェックがたくさん入れば入るほど管理監督者性が高まるという見方をして頂ければ思います。なので該当項目数が多い少ないと書いてあり矢印を進んでいきますと構成割合が10~40%、それから対象の満足度が高いか低いか、要するに該当項目を多く構成割合が全体の従業員に占める割合が少なく、対象者も自分は管理監督者だと満足している場合には管理監督者に該当する可能性が高いとそのようにざっくり見て判断してます。もちろん審査上はそんなざっくりは判断してくれませんのでそもそも対応が必要か必要じゃないか一番最初の段階ではこんな感じで判断しています。

もう少し細かく見ると次の19ページですが判断のポイントというところの一番は左側のフローに書いていた項目になりますのでチェック項目の例、あくまで例ですのでこれだけあれば大丈夫というわけではありません。それから2番目にある全社員の内どの程度の割合かというのも目安でしかありません。労基署の判断するにあたって少ないほど良い。ですので10~15%程度なら大丈夫ではないかという話を私たちもしますがそれが必ずしも正しいわけではありません。それでも30~40%が管理監督者だと多いですと、おそらく審査上も多いですねというところから入って管理監督者の範囲が妥当だと考える理由を質問でたくさん聞かれることになります。1次質問から5次質問までいくケースもありますのでそうなる前に範囲を見直しておいたほうがいいんじゃないですかというケースも出てきます。

なので他の労働時間管理の問題と違って管理監督者の範囲の見直しは賃金制度にも影響します。残業代を払うことになったりしますので手間がかかるといったのはそのことです。もし管理監督者の範囲を見直さなければいけなくなると賃金制度も手を入れるケースも出てきます。なので出来るだけ早くうちはいけるかいけないかは確認しておいたほうがいいと思います。一番下の3番目の満足度、先ほどのフローにもありましたが本人が管理監督者だと納得しているかどうかというのは法的要素でもなんでありませんが要するにトラブルになるリスクが高いか低いかということです。

当然満足度が低いとトラブルになるリスクがありますよねということです。20ページを見て頂きまして管理監督者の範囲を私どもが見直す時は基本的にはどっちかです。左側の現状維持か範囲を縮小する必要がありますねかどっちかの判断をします。現状を維持する時というのは例えばうちの会社は課長以上を管理監督者として現状維持で行きましょう、18%いるんですね、微妙ですねという場合でも現状維持と判断するならば矢印のそのまま下で判例上の要件をすべて満たしているか確認していきましょう、足らなければ補強していきましょうというやり方をして範囲を変えないという場合もあります。

ただ30%いるとなるとおそらく審査に突入してから見直してくださいと言われたらそこから時間がかかりますのでいきなり当月1か月間で賃金制度の見直し出来ませんよねとなりますのでやるなら早めに範囲を縮小するという検討をするということもあります。そのメリットデメリットやらなきゃいけないことを書いた改善のお手伝いの時に実施している例になります。いずれにせよ早いタイミングでうちはいけるかいけないのか範囲を見直す必要があるのかないのかは確認しておいたほうがいいと思います。

割増賃金の支払い

21ページの4つ目の項目になりますが、割増賃金の支払い、未払い賃金という話をしていますが未払いが無い状態にするのは必須項目です。そこに書いたのは会社が把握管理している残業時間は氷山の上の方(一角)でありもしかしたら未払いの残業があるんじゃないんですかというところで①~④まであります。①は端数処理と呼んでいますがうちは時間30分単位で管理しているので30分未満は切り捨ててますよといった場合にそこは未払いになります。もしくは②割増賃金単価の計算の間違っていた場合は未払いの可能性があります。③固定残業手当いわゆるみなし残業制を入れています、これが適正じゃないとそれも否認されれば残業代を払っていないという扱いになることもあります。

それから④労働時間に該当する時間を労働時間として扱っていないような問題があると先ほども触れた通り残業代の時効は過去2年間でしかも今度5年に延ばそうということも検討されています。いきなり5年になることはないとは思いますがそうすると例と下のほうに書いているのは一人当たりこれくらいの未払い、要するに労働時間として扱っていない時間があったとして積み上げると大きな金額になりますよという例を載せていますので参考までに見て頂ければと思います。インパクトを見ていただくために載せただけの表です。

未払い賃金発生パターン①

22ページを見て頂くと未払い賃金の発生パターンの①と書いてあるのは先ほどのいわゆる労働時間を15分とか30分単位で管理していてそれ未満を切り捨てているパターンです。この例は30分単位で管理していますが30分未満を切り捨てて残業時間が120分と表には出ているが実際に適正に1分単位で管理したら実は214分というのが正しい残業時間でしたとなるとここだけで94分足りていないことになります。これを同じような内容が100人いてそれが2年間だったら大きな額になりますとこれもインパクトを見ていただくために書いています。不用意に時間管理を15分未満カットなどをやっているとこういう可能性がありますのでまずこれが1点目です。

未払い賃金発生パターン②

パターン2ですがこれは時間単価の算出が間違っている例になります。総支給月額 260,000円の内訳と書いてありますが、①~⑤まで基本給から特殊勤務手当、ここの時間単価の算定基礎に入れるべき賃金というのが①(基本給)、④(営業手当)、⑤(特殊勤務手当) なんですがそれをベースに計算したものを時間単価として1,743円になりますが誤った計算方法の場合は基本給だけで時間単価を出そうすると当然単価が下がりますので時間管理が完璧であってもそもそも時間単価が間違っていると未払いが発生するケースも意外とあります。これが2つ目です。

時間単価の算出方法

それに関連して24ページは時間単価の算出方法、これは計算式が決まっていますということです。計算式通りに計算する必要があります。ですから分母と分子、先ほどの算定基礎が間違っているのが分子、総支給月額に含める手当が足らなかった例になります。

割増賃金の算定基礎

その除外していい手当、分子から除いていい手当は25ページですが一番上の枠の中の家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当に住宅手当、臨時に支払われる賃金、1か月を超える期間にごとに支払われる賃金、これは正確に言うと名前だけではなくてここに該当する定義に合致した手当を払っている場合には残業単価の算定基礎から除いていいとなります。家族手当はミスはないが住宅手当は意外と(ミスが)あります。

上から2番目に住宅手当の説明が書いてありますが住宅に要する費用に応じて算定される手当を言いますので賃貸でいえば家賃5万円の所を10%を住宅手当で払いますとすると、家賃10万円の人は10%と要するに金額が変わってきます。変動するような住宅手当を払っている必要な要素になります。うちは賃貸住宅に住んでいる人に月額10,000円定額で払ってますという住宅手当はこの算定基礎から除ける住宅手当にならない。住宅手当という名称だけで除外すると算定基礎から間違って除外したということになる。なのでこういったミスも未払いを発生する要素としてあります。

未払い賃金発生パターン③

26ページは三つ目に固定残業代を入れてる企業様は意外と多いですが固定残業代は私は賛成派です。というのは効率良く働いている人が馬鹿を見るので一定の固定残業代は入れた方が良いと思います。ただそこに①~③まで要件を書いてありますがこの要件を満たしていないと否定されてそもそも払っている固定残業手当が全て単純に毎月払っている固定的な手当てとみられる可能性があります。①は給与のうち固定払いの手当に該当する部分、それから手当に含まれる時間外労働時間数を明示しましょう、賃金規程にも記入し且つ労働条件通知書にも明示する本人にもちゃんとわからせる。②は実際の時間外労働、要するに残業代を計算した場合に固定残業手当の額を超えていればちゃんと差額を払う。

3つ目はこれもわかりやすい意味で給与明細上も基本給と固定残業手当を分けて提示しましょうということです。良い記載例が左側になります。基本給が165,000円、役職手当5,000円に固定残業代が37,500円これが30時間相当の残業分ですよというものです。悪い例が右側で基本給が202,500円、基本給には時間外労働30時間相当を含むものとするとあるが訳が分かりません。金額がいくらかはっきりわからないからこういう書き方をしていると場合によっては固定残業自体が否定されて全て基本給ですねということで残業単価がはじかれてしまうリスクがあります。

27ページをご覧ください。これは先ほどの良い記載例、悪い記載例と分けていますが要するに時間単価が変わってきますという内容なのでここ自体はあとでお読みいただければと思います。要するに表示方法を間違えて3つの要件、これをきちんと満たしていないと固定残業自体が否定されてしまうことがあります。実際にはIPOの準備中にここで退職者から未払い賃金請求されるケースは意外と多いです。

未払い賃金発生パターン④

28ページをご覧ください。未払い賃金の発生パターンの4つ目ですけれどもこれは労働時間に該当するものとそうでないものを誤って扱ってしまうような形です。○をつけているのは労働時間に該当するもの、×は該当しないものと整理してありますが、これがすべて正しいというよりは自社でうちの会社の事例ではどうかなというので同じような整理をしてほしいというものです。整理をしたものによって時間管理をする、労働時間に扱う扱わないものを整理してほしいというものです。

これを間違ってしまうと本来業務時間外に業務に関連する必須の研修を会社がやりました、全員参加しろよと言ったけれどもそれは君たちの勉強のためなんだから残業代は請求出来ないとすると業務命令で時間外に研修を受けていたので実際には労働時間ですよね、とかそういうものが未払いにつながる可能性がありますので、整理するといってもきちんと法律上の考え方に基づいて整理するをして間違った取り扱いをしないことがここのポイントになります。29ページは労働時間になるかならないかの考え方について書いたものですけど時間の都合で省略します。

月60時間越えの割増賃金率

30ページを開いてください。今回の法改正の中にあったのでご参考までに入れていますが既に大企業は月60時間を超える残業をした場合には50%増しの割増賃金を払っています。中小企業の適用の猶予も廃止になりましたので2023年4月以降はこの50%増しが適用になります。少し先ですけども3,4年後はすぐ来ますので今から少しずつ長時間労働を減らしておかないと月60時間越えの残業があった場合5割増しですから大きなインパクトになってしまいます。

過去勤務債務の清算

31ページをご覧ください。過去勤務債務の清算とありますが先ほどの未払い残業が無いと断言出来ない場合にはおそらく証券様からきちんと検証してくださいと言われます。要するに未払いが過去2年の間にあるのかどうか、あったらきちんと支払って清算してくださいという話が出るので必須では無いがきちんと残業代が払われていると断言できる状況になかった場合には確認する必要が出てくると思います。

その時に退職者も当然対象になりますので過去2年間遡った間に勤務実績のある退職者は時効の2年で消えるまでは権利を持っているので確認する必要が出てきます。ということを考えるときちんと対応していないと退職者が多い企業様やもしくはあまり良い関係ではなく辞めた方にも未払い賃金があるかないか確認させてくださいということがあります。なのできちんと対応を早めにスタートするのはそういったところでも必要になるのかと思います。過去勤務債務の清算については必要か必要じゃないかでいうと個別事情で判断します。

その他法改正、年5日の年次有給休暇取得義務化

32ページからその他今回法改正がありましたのでページ設けています。直接的にIPO労務と関係するわけではありませんがこの4月から年次有給休暇の5日取得義務が始まっています。年次有給休暇の原則を書いているだけですのであとで読んでいただければと思います。

33ページをご覧ください。現在というのは3月までの話ですがまず年次有給休暇とは会社が該当者に必要な年休の日数を付与すればよかったのです。極端な話本人申し出がなければ1日も取得させなくても違法ではありませんでした。ただ改正後この4月以降については1年間の中で積極的に労働者の希望を聞いて年5日を取得させることになりました。5日取らせないと罰則の適用という話になります。実際は実務では労基署が入って確認されて是正勧告される順番になりますが罰則付きになっているのでここも当然法令違反という話になります。今までは無かった視点かもしれませんがIPOの審査の中でこの管理簿があるかどうかが確認ポイントになると思います。34ページは年次有給休暇の習得の義務化の内容を書いているが年休は基本1日単位で取得して5日間ですが半日単位でとって10回の換算5日でも義務を果たしたことになります。

ただ時間単位年休入れている会社様は1時間単位のものを8回取って1日とするカウントは年休取得には構わないが5日の取得義務にはカウント出来ません。あくまでも1日か0,5日かで取る必要があります。あと繰り返しになりますが34ページの一番下に年休管理簿といったものを必要とします。3年間保存義務があるのでもしまだ用意出来ていないければご準備頂きたいと思います。35ページは年休管理簿の記載例です。こんな感じのものを記載、ご用意くださいということです。36〜37ページまでは基準日の考え方です。年休取得5日間の基準日というのは考え方はいくつかあるがパターンを書いてありますが原則付与された日を基準にしてください。ですからこの4月1日以降に最初に付与された日を起点に1年間、4月1日一斉付与をとっている会社様でなければ個別に管理してますので一人一人何月何日と付与されていきますが、この4月1日以降最初に付与された日を起点として1年間管理していきます。その内容が36,37ページに例外と書かれているが考え方は一緒ですのでご参考にしてください。

38ページに書いているのはパートさんとか短時間で働く方は年休を比例付与しています。そうするとその人たちはいつから年休取得5日の義務を適用対象かというとこの4月1日以降に最初に10日以上付与された日から対象です。なので、2年6月か月目で働いている例でいうと週4日なので2年6か月目以降で9日付与されたという方は対象外です。あくまでも10日以上付与されたタイミングから1年間カウントするという考え方になります。パートさんのいる会社様はそういう管理になります。39ページは就業規則の記載例です。今回の年休5日取得義務を受けて就業規則の改定は一つこの条文を追加することが必要なのでまだ対応されてなければ、これを少し変える必要はありますが、就業規則に一文足すことが必要なのでご注意ください。

40ページは第三ステップとしていますが適切な人事労務管理体制の継続です。要するに気を付けなければいけないポイントは重要項目だけ取り上げてここまで触れてきました。実際には不備があった場合はそれを改善するわけですが改善した後に一番重要なのはそれを継続的に運用することです。41ページに継続的なモニタリングの重要性と書きましたが、管理監督者が幹部クラスにサービス残業を無くせともし経営者が言ったとしても三六協定順守をその管理職や現場の責任者は意識しますので残業月何十時間までと言ってそれを現場に徹底させることです。実際に効率化を図り徹底させるのはいいが場合によってはそこだけ悪く言えばそんたくして、越えてなければいいんでしょと、サービス残業となって隠れてしまうケースがあるのでその辺りは現場の責任者も含めて意識付けが非常に重要です。一番下の枠の中になぜ残業は長時間化するのか書きましたが、業務量の過剰、仕事の進め方が悪い、当然スキルや能力が仕事に合っていないというのもあります。最近減っているが上司がいるから帰りずらいやあとは生活残業になっていて残業して稼ぎたい、こんなケースも多いです。今まで時間管理していなかったがIPOを目指すので時間管理を入れたけどそもそも時間に対する意識が低くて徹底出来ないケースもあります。現場の責任者が一番現場を見れているので現場の責任者の意識と組織として様々な業務の見直しをやる必要があると思います。

最後になりますが42ページに最後と書きましたがそこに1,2,3と書いていますが重要ポイントの順守というのは先ほど見てきたように労働時間管理、割増賃金、三六協定といった項目ですがその順守はもちろん、将来に向かってどうやってそれを管理するかその管理体制が重要です。三六協定守るときに管理体制がないと守れない。チェックリストの活用も必要ですし2番目に運用ルールの明文化とありますが全てIPOにおいては人事労務だけではなく全て明文化がキーワードだと考えています。ルールがあれば明文化されていてその通りに運用されていることが重要です。3つ目現場の管理者が一番コントロールしているからこの方たちにルールをしっかり植え付けて理解しているかがポイントになります。ということで継続的なモニタリングが重要というところをお伝えして終了とさせていただきます。

どうもありがとうございました。