6月開催「ハマキョウレックス事件」「長澤運輸事件」最高裁判決解説セミナーのご紹介
今回は、働き方改革関連法成立前に実施しました“同一労働同一賃金”の最高裁判例“ハマキョウレックス事件”、“長澤運輸事件”解説セミナーをご紹介したいと思います。
同一労働同一賃金とは「有期・パートであることを理由として賃金その他に格差がある場合は、当該格差は不合理なものであってはならない」というものです。
まずは、各事件の1審、高裁判決をご覧ください。
ハマキョウレックス事件
一審判決は、正社員は出向等による異動の不利益を考慮しなければならず、社員として育てられるべき立場にありますが、契約社員は出向等の不利益はないため、地位の違いを理由に、本件原告の請求のほとんどを棄却されました。
高裁判決では、各手当に対し判断しています。
①無事故手当
無事故手当は、優良ドライバーの育成や安全な輸送による顧客の信頼獲得を目的としてお
有期・パートであることを理由として賃金その他に格差がある場合は、当該格差は不合理なものであってはならない
り、正社員・契約社員双方に共通する手当として、正社員に対してのみ支給することは、期間の定めがあることを理由とする相違であり、「不合理と認められるもの」と判断されました。
②作業手当
給与規程の中で特殊業務に携わる者に支給すると明示しているため、作業手当を基本給の一部と考えることは難しく正社員に対してのみ作業手当を支給し、契約社員には支給しないという相違は、期間の定めがあることを理由とする相違であり、「不合理と認められるもの」と判断されました。
③ 給食手当
給与規程の中で、あくまで給食の補助として支給されるものであり、正社員の職務の内容や当該職務の内容及び変更の範囲とは無関係に支給されます。これが契約社員に支給されないという相違は、期間の定めがあることを理由とする相違であり、「不合理と認められるもの」と判断されました。
④ 通勤手当
通勤手当は、通勤のために要した交通費の全額又は一部を補填する必要があり、本来職務の内容や当該職務の内容及び変更の範囲とは無関係に支給されます。
そのため正社員と契約社員との相違は、期間の定めがあることを理由とする相違であり、「不合理と認められるもの」と判断されました。
⑤ 住宅手当
正社員のみ転居を伴う転勤が予定されているため、予定されない契約社員と比べて、住宅コストが増えると考えられます。正社員へ住宅費用の補助及び福利厚生を手厚くすることによって有能な人材の獲得・定着を図るという目的から正社員に対してのみ住宅手当を支給することは「不合理と認められるもの」に該当しないと判断されました。
⑥ 皆勤手当
契約社員については勤務成績は契約更新時の時間給の見直しが行われる可能性があるため正社員にのみ精勤に対するインセンティブを付与する目的支給することは、「不合理と認められるもの」に該当しないと判断されました。
長澤運輸事件
1審判決では、賃金の相違について労働契約法20条の適用を認め、「職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲が同一であるにもかからず、有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件に相違を設けることは、正当と解すべき特段の事情がない限り不合理である」と判断されました。
また、労働契約法第20条違反の有無について、定年後再雇用者の賃金を定年前から引き下げること自体の合理性は認められましたが、差別を正当化する「特段の事情」は認められないとして、労働契約法第20条に違反するとされました。
高裁判決では、賃金の相違については、労働契約法20条が適用され認められました。労働契約法20条は労働条件の相違が期間の定めの有無に関連して生じたものであることを必要うで定年後再雇用者であることに着目した労働条件の相違であっても期間の定めの有無に関連しているといえます。
不合理性の判断要素となる労働契約法20条の「③その他の事情」として、①職務内容②当該職務の内容及び配置に関連する事情を幅広く総合的に考慮すべきといえます。
③「その他の事情」として、以下の事情を考慮すると、労働契約法20条にいう不合理と認めることはできないとされ、高年法が定める高年齢者雇用確保措置として選択された継続雇用たる有期労働契約は社会一般で広く行われていること、継続雇用に伴う賃金コストの無制限な増大を回避する必要性を考慮すると、従業員が定年後再雇用されるにあたり賃金が引き下げられること自体は不合理とはいえないと判断されました。
また、定年退職後の継続雇用において職務内容やその範囲の変更等がないまま相当程度賃金を引き下げることは広く行われており、正社員との賃金の差額を縮める努力をしたこと等からすれば、年収2割程度の減額は、当事者である会社の規模や業界に照らして、不合理とまではいえないと判断されました。