有給休暇の買取制度について

国内での有休の取得率は決して高くありません。有休をほとんど使わない人も多いです。職場が忙しくて有休を取りたいとは言い出しにくいという人もいるでしょう。企業側も有休を取得したいと言い出す社員があまりいなくて助かっているケースも多いです。

有休を取得させるのが難しいのであれば、買取できないのか考える人もいるでしょう。ここでは、有休の買取制度について解説していきます。

有休の買取は可能?

有休を取得したくても、なかなか上司に言い出せないのは、自分が休んでしまったら会社の仕事が回らなくなると考えるためでしょう。自分が休むことで、上司や他の同僚に負担がかかってしまうということで、有休を取得しない人も多いです。誰も取得しようとしない中で、自分だけ取得しようとすれば白い目で見られてしまうかもしれません。

たしかに企業によっては、1人に休まれてしまうだけで仕事が回らなくなることもあります。上司や経営者にとっては、有休を取得されると困るというのが本音でしょう。ただ、そのような会社であっても、社員のことを考えていないわけではありません。有休を取得するのではなく、買取という形で処理し、社員が損をしてしまわないようにしたいと考えている上司や経営者も多いです。

社員の中にも、有休の買取を希望する人もいるでしょう。休ませてもらうよりは、今まで通り働いて、もらえる給料が少しでも増えた方が良いと考える人も多いです。

しかし、有休の買取というのは原則として禁止されています。有休というのは本来、労働者をリフレッシュさせるための制度です。ただ仕事を休んでしまうと、その分の給料が減ってしまうため、心身が疲れ果てていても、多くの人は休みません。給料が減る心配をせず、しっかり休めるようにするために有給休暇という制度があります。

実際に休ませず有休の買取を行ってしまうと、有休の趣旨に反してしまうでしょう。

有休を取得しづらい職場で働く人から見れば、有休の買取を認めて欲しいと考えるかもしれません。有休は2年で時効にかかり消滅してしまいます。忙しい職場だと、付与された有休を2年間だけで使い切るのはかなり難しいです。それなら買取をしてもらった方が損をしなくて済むと考える人は多いでしょう。

しかし、有休の買取を認めることは、労働者にとって不利な状況を作り出してしまう可能性もあります。例えば有休の買取を前提として給与を低めに設定されてしまう可能性が考えられるでしょう。買取で消化していれば、本当に休む必要があるときに休むと、欠勤として扱われてしまいます。

有給休暇の買取が可能なパターン

例外的に有給休暇の買取が認められる場合もあります。有休は労働基準法に規定があるため、どの会社でも労働者に付与しなければなりません。日数も労働基準法に規定がありますが、就業規則で定めて、その日数を上回る日数の有休を付与することも可能です。

そして、労働基準法の規定を上回って付与した分の有休に関しては、買取を行っても問題ありません。労働者は労働基準法に規定された有休の日数分だけ有休を取得することができるため、制度の趣旨に反しないでしょう。

また、退職時に残っている有休の買取を行うことも可能です。退職するということであれば、有休の買取を行うことで実際に休めなくなることはありません。制度の趣旨に反しないため、買取が認められています。

同じ理由で、時効により消滅した分の買取も可能です。有給休暇は付与されてから2年を経過すると時効消滅してしまいます。時効消滅した分に関しては、行使することができません。その分を会社側が買取するというわけです。

いずれの場合も、労働者が不利益を被る可能性はないでしょう。ただし、有休の買取を行う際には、あらかじめ就業規則に規定を設けておく必要があります。

有給休暇の買取価格とその後の取扱いについて。

有給休暇の買取を行う際には、買取が可能かどうかだけでなく、可能な場合の買取価格についても考えなければなりません。有休の買取価格は、基本的に有休を取得した場合の賃金額と同じになります。そして、有休を取得した日の賃金の決め方は、平均賃金か通常の賃金、標準報酬月額の日割額の3種類のいずれかです。

どれを採用するかは就業規則で、あらかじめ定めておかなければなりません。

平均賃金は、過去3ヶ月間に支払った賃金をその期間の日数で割って計算できる金額です。

通常の賃金の計算方法は、時給制や月給制などによって異なります。時給制の場合は、時給額に所定労働時間数をかけた金額です。月給制の場合は、月給額を月の所定労働日数で割って計算します。日給制の場合には、日給額をそのまま使用しましょう。

他の期間を基準に決められている場合には、月給制の場合と同じようにして、期間の賃金額を所定労働日数で割って計算します。週給制なら週給額を1週間の所定労働日数で割るという具合です。

また、標準報酬月額というのは、健康保険や厚生年金の保険料額を決める際に用いる数字です。原則として1年間同じ数字を用いるもので、毎月変わるわけではありません。

これらのうちいずれかの方法で計算した金額が有給休暇1日分の買取価格です。10日分の買取を行うのであれば、その10倍の金額ということになります。

有給休暇を取得した日の賃金は、通常の給料と変わらない扱いです。また、有休を取得したことで、不利に扱うことは禁止されています。有給休暇が付与される条件として、全労働日の8割以上出勤しなければなりませんが、有休取得日はこの全労働日に含めないで計算されます。

他にも出勤率などを計算する上で不利にならないように、全労働日に含めないか出勤したものとみなして計算する場合が多いです。

法律上の制度だけでなく、皆勤手当や精勤手当などの制度に関しても、有休を取得したことに関して不利に扱うことは、制度の趣旨から望ましくありません。

ただし、通勤手当に関しては実費弁償としての意味合いが強いです。有休を取得した日はガソリン代などの交通費もかからないため、有休取得日の分の交通費は支給しなくても問題ありません。有休の買取を行った場合に関しても同様の理由から、交通費の分は支給しないことが多いです。

ただし、有休取得日の分に関して支給しない手当がある場合には、就業規則に規定しておきましょう。買取の場合に関しても同様です。

そして、有休の買取で支払った買取代金に関しては、給料と同じものとして扱うことはできません。賞与として扱います。そのため賞与支払届の提出を行わなければなりません。賞与支払届の提出期限は賞与を支払った日から5日以内と短いので注意が必要です。

健康保険や厚生年金の保険料天引きに関しても、通常の賞与と同じようにして処理します。保険料天引きの際に用いる賞与の上限額に関しても、注意して処理を行いましょう。また、給与明細書とは別に賞与明細書を作成して、労働者に渡さなければなりません。

まとめ

有給休暇は、疲労がたまっているときなどに労働者が給料のことを心配せず安心して休めるようにするための制度です。そのため、買取は原則として行うことができません。ただし、労働基準法で定める付与日数を超えて付与している分に関しては例外的に買取可能です。また、退職時に残っている分や時効で消滅する分に関しても、買取を行って問題ありません。

そして、買取を行った分の金額は賞与として扱う点に留意しておきましょう。その他、有給休暇関連のことをはじめとして労務管理で迷ったら、ミナジンの顧問サービスなどの利用を検討してみることをおすすめします。