給与計算の方法について!いまさら訊けない基礎知識


パソコンを利用すれば自動的にできる給与計算も、その方法を知っておけば細かなミスを防げますし、問題点もすぐ気づけるようになります。そんな給与計算の基礎をおさらいしましょう。

給与計算の流れと総支給額の算出方法

まずは給与計算の流れと、総支給額の算出方法です。

給与支給業務の5ステップ

給与の支給業務は、大きく分けて以下の5つのステップがあります。

1つ目は総支給額の計算です。給与の締め日が過ぎると、対象期間内の勤怠を元に勤務日数や残業時間を確認して、総支給額を算出します。

2つ目は控除額の計算です。社会保険料や税金を合計して控除額を決定します。

3つ目が実際に支払われる給与の計算です。総支給額から控除額を引きます。

4つ目は支給の手続きです。金融機関に振り込むのであればその準備も必要ですし、支給の根拠となる明細書も用意しなければいけません。

最後に控除した社会保険料や税金を関係機関に納付します。ここまでが給与支給業務の1つのサイクルです。

残業や深夜勤務が発生したときの計算方法

給与のベースとなる基本給は、昇給や減給が無い限り一定ですが、時間外労働による残業手当や深夜手当、休日手当は毎月変動します。

こうした時間外労働分の給与を計算する式は「時間外労働の時間数×1時間あたりの賃金×割増率」です。月給で支給している場合、1時間あたりの賃金は「月給÷1ヶ月あたりの平均労働時間で求められます。例えば月給が22万円で、1ヶ月あたりの平均労働時間が154時間であれば、1時間あたりの賃金は1,429円です(端数は四捨五入)。

なお、月給には役員手当や資格手当は含まれますが、通勤手当や住宅手当、家族手当、臨時の賃金、1ヶ月を超える間隔を空けて支給される賃金(賞与など)は含みません。

割増率は法定時間外労働が25%、法定休日労働が35%です。深夜に時間外労働や休日労働をした場合は、それぞれ深夜労働の25%が上乗せされます。時間外労働の時間数は1分単位で計算するのが原則です。

社会保険料の計算方法

続けて社会保険料です。全部で5種類あります。

健康保険料・介護保険料

健康保険料は「標準報酬月額×保険料率」で計算されます。標準報酬月額とは、基本給に残業手当や通勤手当といった諸手当を加算した額です。通常は4~6月の報酬の合計から1ヶ月の平均報酬を算出し、7月に基礎算定届を提出した上で標準報酬月額は決まります。

ただし、昇給や降給、給与形態の変更、手当の追加などで2等級以上標準報酬が変動した場合は、「被保険者報酬月額変更届」を日本年金機構に提出しなければいけません。残業の増減によって一時的に変動した場合は対象外です。

保険料率は全国健康保険協会(協会けんぽ)で定められており、年に1回見直され、都道府県ごとに異なります。

40歳から64歳までの被保険者は、さらに介護保険料を計算しなければいけません。計算方法は健康保険料と同じですが、保険料率は全国一律で1.73%です(平成31年度の場合)。

どちらも「労使折半」といって、従業員と企業が半分ずつ負担することになっているため、実際に控除するのは算出された金額の半分です(端数が出た場合は労働者分が切り上げ、企業分が切り捨て)。

全国健康保険協会では、保険料額の一覧表を公表しているので、それを見ると一目で控除すべき健康保険料が分かるでしょう。標準報酬の等級も記載されています。控除された健康保険料と介護保険料は、企業の負担分と合わせて、翌月の末日(休日であれば次の平日)まで日本年金機構に収めなければいけません。

厚生年金保険料

厚生年金保険料も、計算方法は健康保険料や介護保険料と同じですが、保険料率は日本年金機構が定めており、平成29年9月以降は18.3%で固定されています。こちらも労使折半で、実際に控除するのは算出された金額の半分です。全国健康保険協会の保険料額の一覧表には、厚生年金保険料も掲載されています。

控除された分は、健康保険料や介護保険料と共に日本年金機構へ収めます。

雇用保険料・労災保険料

雇用保険料と労災保険料は、「総支給額×保険料率」で計算されます。総支給額に通勤手当や住宅手当、賞与は含まれますが、役員報酬や退職金などは含まれません。

保険料率は厚生労働省が定めており、どちらも業種によって異なります。雇用保険料の保険料率は一般企業の場合9/1000で、このうち3/1000を従業員の給与から控除します。一方、労災保険料率は、卸売業や小売業で3/1000、金融業や保険業で2.5/1000ですが、全額企業が負担するので控除はありません。

こうした労働保険は、年に1回6月1日から7月10日までの間に1年分を概算で申告・納付することになっており、確定申告の際に差額を精算します。

税金の計算方法

最後に税金の計算です。所得税と住民税の2種類があります。

所得税

本来、所得税は1年分の収入から必要経費を差し引いた所得に税率を掛け合わせて計算されますが、会社員の場合はあらかじめ源泉徴収し、差額は年末に調整します。

源泉徴収する額は「課税所得×税率」です。課税所得とは支給額から社会保険料や労働保険料を控除したもので、通勤手当のような非課税の手当は支給額に含まれません。

税率は1年分の所得によって異なり、5~40%まであります。毎月徴収するたびに想定して計算するのは面倒です。そこで国税庁では「給与所得の源泉徴収税額表」を公表しており、課税所得や扶養家族の人数に応じてすぐに源泉徴収額を割り出せるようになっています。

甲と乙の2種類が掲載されており、甲はその企業を主の職場とする従業員、乙は副業として働いている従業員です。

控除された源泉徴収額は、給与を支払った翌月の10日までに企業が税務署に納付する義務があります。

住民税

住民税の計算は簡単です。毎年5~6月になると自治体から各従業員の「住民税課税決定通知書」が企業に送られてきます。そこで請求された住民税額を12で割って毎月控除するだけです。

中途で採用した従業員の分については、企業によって自由に取り決められます。従業員から「特別徴収にかかる給与所得者異動届」を提出された後で、控除を開始する月を決定し、市区町村で手続きするという流れです。

控除された住民税額は、給与を支払った翌月の10日までに企業が市区町村に納付します。

給与計算を効率的に行う方法

このように給与を計算して支給するまでには様々な手間が発生します。従業員の人数が多くなると、給与計算のために人手を増やさなければならず、コストもかかるでしょう。効率的に行う方法はあるのでしょうか。

代行業者へ依頼

給与計算を自社で行うのではなく、アウトソーシングする方法です。かつては税理士や社会保険労務士に委託するのが主流でしたが、最近では給与計算の代行を専門とする業者も増えています。

アウトソーシングすれば、給与計算に充てていた人材を他の業務に回せたり、人件費を削減できたりします。保険料率や税率の変更、法令改正があっても、専門業者であればすぐに対応できるでしょう。

一方、勤怠管理は自社でやらなければならず、従業員の情報に変更があったときは、その都度業者に連絡しなければいけません。また、給与計算のノウハウが蓄積されないため、万が一アウトソーシングを利用できなくなると、誰も対応できなくなるリスクがあります。個人情報の漏洩も心配です。

勤怠管理システムの導入

そこで検討したいのが勤怠管理システムの導入です。単に給与計算できるだけでなく、勤怠管理と連携すれば残業時間が自動的に反映されるので、確認する手間が省けます。従業員の情報に変更があったときも、勤怠管理システム上で申告できるようにすれば簡単です。

最近はクラウド型の勤怠管理システムも多く、法令改正も自動で更新されます。クラウドの特性を活かして、出張中でもスマートフォンから出退勤を登録できる勤怠管理システムもあるほどです。

また、勤怠管理システムでは有給休暇の管理もできます。2019年(平成31年)4月1日から、有給休暇の取得が義務付けられているため、導入しておくと対象となる従業員の見落としを防げるでしょう。

こうした事情から最近では勤怠管理システムを導入する企業が増えています。

まとめ

給与を支給するまでには支給額と控除額を計算しなければいけません。勤怠管理はもちろん、保険料額や税率徴収税額表を確認するなど、手間がかかります。勤怠管理システムを導入すれば、給与の算出根拠となる情報を連携できるため、給与計算の業務を簡略化できるでしょう。自社で対応できれば、ノウハウも蓄積されます。