給与計算はミスしやすい!ミスすることのリスクや回避するための対策


給与支払い前に給与計算にミスが発覚して、上司から叱責を受けた経験はないでしょうか。確定前なのでやり直しはききますが、上司から叱りを受けるのにはそれなりの理由があります。

ただし、給与計算のやり方しだいではミスが起きてもしかたないと思われるような環境に身を置いている担当者もいるものです。給与計算ミスの実態はどうなのか、なぜ問題視されるのか、ひとつずつ疑問を解消していきましょう。

給与計算はなぜミスしやすいといわれるのか

給与計算ではミスが発生しやすいといわれます。なぜミスにつながりやすいのでしょうか。給与計算で起こりやすい主なミスから、ミスが起こりやすい原因を考えてみましょう。

働き方の多様化に伴う勤怠管理の複雑さ

雇用形態が同じで労働時間も固定されているような時代は、勤怠部分の給与計算はそこまで複雑ではありませんでした。今や、パートタイムやアルバイトなどの働き方は、一般的となっています。

これに加え、2019年4月、働き方関連法案が順次施行されるようになりました。働き方関連法案の中には、フレックスタイム制やテレワークなど、多様な働き方を促進するような内容もあり、今後ますます働き方の多様化が進むものと考えられています。

すでに多様な働き方を受け入れられている企業では、これにより勤怠管理が複雑化。管理方法次第では、正しく把握するのが難しい状況です。勤怠管理が難しいこともあり、給与計算はさらに複雑になり、担当者の負担は増え、ミスが起きやすい状況となっています。



固定給を変更する機会が多い

昇給や降給を1年に1度のタイミングで実施する企業も多いですが、固定給が変わるタイミングはそれだけではありません。異動や扶養家族の変更など、何らかのタイミングで変更されるケースがあります。

この場合、変更しなければならないのは固定給だけではありません。固定給に合わせ、健康保険や厚生年金保険料などの社会保険料控除額も見直さなければならないことがあります。

毎年同じタイミングで改定が行われる社会保険料率などは認識しやすいですが、その都度発生する変更は見逃しやすく、漏れが発生しやすいです。

アナログ業務が多い

給与計算システム、アウトソーシングなど活用できるサービスは増えてきました。それでも社内で手動の給与計算を行うアナログ業務が続いている会社もみられます。

社内の人員だけで仕事が完了するというのが主なメリットと思われていますが、実際にそうでしょうか。手動による業務が多いと、工数がかかりますし、人為的なミスが起きやすくなります。

たとえば、勤怠管理で利用しているタイムカードを転記する作業などが手動の例です。会社によっては給与明細を手書きで出しているケースもあります。

社員数次第ではアナログ対応でも十分かもしれませんが、自動計算ではないためミスは完全には避けられません。

データ転記時のミス、計算時のミス、計算後の値入力後のミスなど、給与計算のアナログ対応は、さまざまな部分にミスする可能性が潜んでいます。

発生しやすいミスの事例

給与計算で発生しやすいミスを紹介してきましたが、ほかにも以下のようなミスが起きやすいです。

・扶養から外れたあとの給与反映漏れ
・役職手当反映漏れ
・40歳からの介護保険料控除漏れ
・雇用保険料の免除、反映漏れ
・月途中で退職した人から誤って社会保険料を控除した

あくまでも一例ですが、いずれにしても、これだけ多くの例をみれば、給与計算でミスが生じやすいことが分かったのではないでしょうか。できるだけミスを出さないことが重要ですが、完全に出さないことが難しいくらい、さまざまなミスが起きるポイントが給与計算にはあります。

給与計算のミスは多くのリスクを抱えている

社内のミスなのだから、ミスがあったら修正すれば良いと、悠長なことはいっていられません。給与計算のミスは、さまざまなリスクを持っています。主なリスクは、訴訟などの労務リスク、納税に関わる税務リスクです。

社員から訴訟される可能性がある

社員から訴訟を起こされるなど、労務管理の不正やミスで起こるリスクを労務リスクといいます。

会社と社員をつなげるもののひとつは、会社から社員に対する報酬です。その報酬に誤りがあると、会社に対する不信感につながります。つまり、信用が落ちるということです。

一度なくなってしまった信用を取り戻すには多大な時間がかかります。給与担当者が故意で行ったものでなくても、一度のミスは会社にとって大きな損失になる可能性があるのです。

また、残業代の計算が長期にわたって間違っていたなどのミスがあると、残業代未払いで、状況次第では訴訟に発展する場合もあります。訴訟にまでいくと、裁判などに関する業務が増えますし、会社の信用にも大きく影響してしまい、デメリットしかありません。

正しく納税されない

給与計算のミスが与える影響は、社員の報酬だけに限りません。計算が誤っているということは、社会保険料のほか、源泉徴収税のような税金控除にもミスが発生している可能性があります。源泉徴収税が誤っているということは、給与支払い翌月の納税額にもミスがあるということです。

納税は国民の義務ですから、納税額が誤っているということは、大きなリスクになります。労務リスク同様に会社の信頼に関わるような問題になる可能性もあるでしょう。

このように、給与計算のミスは、ミスによって損害を受けた社員に影響があるだけでなく、会社自体にも影響があります。給与担当者のミスが大きな問題に発展する可能性があるという点はしっかり頭に入れておくべきでしょう。

ミスを起こさないためにできること

給与計算でのミスは、担当者の責任だけで済まさせるようなものではなく、会社の信用にもかかわってくることをお話ししました。それほど重大なことなのです。ミスを起こさないために社内でできることには何があるでしょう。ふたつの対策を紹介します。

ヒューマンエラーに気づける体制づくり

給与計算のミスでは、ヒューマンエラー、つまり人為的ミスが圧倒的に多いです。ミスを起こさないようにするには、人為的ミスを限りなく無くすことを優先するべきです。

具体的にはどうやって防げば良いのか、ミスしやすい部分を補う対策がカギとなります。たとえば、多様な働き方は勤怠確認の時間を要しますので、早め早めに勤怠データをもらうなどの事前準備の徹底が挙げられます。

ほかにも、社員の異動や社会保険料の改定など、毎月発生する業務、毎年発生する業務、随時発生する業務など仕事内容を洗い出し、チェックリストを作っておくと良いでしょう。チェックリストで確認することによって、業務や作業の漏れを確認することができます。

また、ヒューマンエラー防止のためには、担当者ひとりですべてを負担せずに、ふたり以上のダブルチェックに通してから最終的な確定をすることが大切です。このように幾重にも対策を立てることによって、人為的なミスを大きく軽減することができます。

システムやアウトソーシングを利用する

ミスが起こりやすい給与計算をシステム導入によってできるだけ自動化に持っていく方法。あるいは、アウトソーシングの利用で給与計算の一切を社内で行わない方法も考えられます。いずれも手入力によるリスクを軽減、あるいは無くすことができるのがポイントです。

ミスが起こりやすい勤務データの転記は、勤怠システムと連携させることによって、自動で給与計算システムに反映することもできます。

さらに、給与計算システムやアウトソーシングは、法改正や人事異動などの変更に対してもスムーズな対応が可能です。さまざまな変更に担当者が悩まされることが少なくなります。

ミスは起こるものという前提で、できるだけミスの少ない手段を選択することが重要です。

もしミスをしてしまったら…

ここまで給与計算のミスを防ぐ対策を説明してきましたが、どの対策を取るにしても人が関わってくる業務になるため、ミスを完全になくすことは難しいでしょう。ミスが起きたことが分かったら、早急に該当者へ連絡を入れ、謝罪とミスが起きた経緯を説明することが大切です。

その上で、ミスが起きた分をどのように精算するか対処法を提案し、本人から了解を得て精算に対応します。

翌月精算

支払いデータとして残すため、翌月の給与支給時に過不足分を精算する方法があります。法令違反とまではなりませんが、賃金支払いには全額支給の原則があるため、会社都合で勝手に翌月精算することは認められません。翌月精算で対処したい場合は、本人の合意があることが条件です。

当月現金精算

給与支給日の当月に現金精算する方法です。注意しなければならないのは、すでに支払った分の源泉所得税や雇用保険料を考慮して対応しなければならないこと。給与計算のやり直しはどうするか、払いすぎた場合はどのようにして従業員から回収するかなども確認しておきます。

まとめ

給与計算は、働き方が多様であるほど、会社の規模が大きいほど、複雑になり、ミスも発生しやすくなります。給与計算の業務自体、ミスが起こりやすいポイントは多いですが、当たり前と思わずに、リスクを常に意識して、ミスの少ない対策を取ることが大切です。