残業代の計算ミスが発覚!ミスを起こさないために今やるべきこと

残業代は、時間外労働や休日出勤などの割増賃金のほか、月給制ならベースとなる賃金にどの手当を含めるかなど個別に考えていく必要があるため、複雑な計算になります。そのため、計算でミスが起こることは少なくありません。

しかし、給与支給にミスがあるということはその分、従業員の信頼も失うということ。できるだけミスのない体制を築くことが重要です。ここでは、残業代でミスが起きたときの対処法と、今すぐできる対策を紹介します。

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残業代の基本と計算方法

残業代のミスはなぜ起こるのでしょうか。ここでは、残業代の計算方法のおさらいと、ミスが起きたときの対処法について解説します。

残業代の計算方法のおさらい

残業代はどのように出すのか、日給制、月給制別に計算方法を確認してみましょう。

・日給制の場合
(計算式)日給÷1日の所定労働時間=1時間当たりの賃金
     1時間当たりの賃金×残業時間×割増賃金率=残業代

(例)日給1万円、1日の所定労働時間8時間で残業時間2時間だった場合
 1万円÷8時間=1,250円
 1,250円×2時間×1.25※=3,125円(残業代)
※割増賃金率は、時間外労働にのみ該当するものとする

・月給制の場合
(計算式)月給÷1ヶ月の年平均所定労働時間=1時間当たりの賃金
     1時間当たりの賃金×残業時間×割増賃金率=残業代

(例)月給30万円、1ヶ月の年平均所定労働時間160時間で残業時間2時間だった場合
 30万円÷160時間=1,875円
 1,875円×2時間×1.25※=4,688円(残業代)
※割増賃金率は、時間外労働にのみ該当するものとする

日給制の場合、日給を基準にすれば良いですが、月給制では月給が基準となります。この“月給”がややこしく、残業代計算のミスの原因になることも少なくありません。月給の範囲が、基礎賃金のみに限られる訳ではないためです。

・割増賃金もミスのもと
残業代の計算ミスのもとといえば、割増賃金もその対象に入るでしょう。割増賃金は、時間外労働に当たるか、深夜残業に当たるか、休日出勤に当たるかなどで判断されますが、いずれも会社規定の労働時間や休日が基準になる訳ではありません。

法で定められた時間外労働や休日、深夜労働が基準となるため、会社規定の基準との相違で、ミスを招くことがあります。

計算ミスをしたら?

残業代の計算にミスがあった場合、ミスはなかったものとして見て見ぬふりをし、正当な額を支給しないのは、労働基準法に違反することになります。労働基準法第24条で、全額払いの原則が規定されているためです。

特に残業代に不足がある場合は、早急に不足額を計算し、支払いを実行しなければなりません。

・残業代の差額支給だけでは済まない
残業代の計算ミスは、差額分だけを支給すれば良いと思われるかもしれませんが、差額分のみ支給するのは適切といえません。残業代は、給与額以外に社会保険料や所得税の計算にも絡んでくるためです。

健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料の社会保険のほか、所得税の差額分も計算した上で、残業代を精算する必要があります。

ほかにも、対象社員への連絡と謝罪、清算方法の確認などの雑務もともなうため、給与計算ミスが発覚して対処が必要になったら、実際にはかなりの負担が担当者にかかることは想像に難くないでしょう。

・計算ミスは2年前までさかのぼる
賃金の請求権は、労働基準法第115条によって支給日より2年と規定されています。計算ミスが発生した場合、過去にさかのぼって最大2年、確認や修正、精算が必要になるということです。

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残業代の計算でミスをしないためにチェックすること

残業代に計算ミスが発覚したら、通常の給与計算の負担にプラスして、修正や精算で大きな負担がかかることが分かったのではないでしょうか。こうしたミスを減らして、負担を削減するにはミスをしないことです。

しかし、人が携わる業務であるために、ヒューマンエラーは完全に避けられるものではありません。対策としては、ミスにつながりやすい部分を徹底的にチェックしていくことです。残業代の計算ミスにつながりやすい3つのチェックポイントをみていきましょう。

残業手当の支給対象時間を確認

・対象となる時間の考え方
労働時間を求めるのに重要なのが、始業時刻、終業時刻、休憩時間です。休憩時間1時間で始業時刻9時、終業時刻17時の会社の場合、休憩時間は労働時間なら除かれるため、会社規定の所定労働時間は7時間となります。

労働時間は始業時間を起点にするため、早出で7時から出勤した場合、7時間から計算する点に注意が必要です。7時から起算して実働時間、残業時間を求めることになります。

・法定内残業と法定時間外労働
会社規定の労働時間を超えて働くことを残業といいますが、この残業には、法定内残業と法定時間外労働の2種類があります。法定内残業は、法律を超過しない部分の残業です。

労働基準法で定められている労働時間は、1日8時間、週40時間以内。この時間の範囲であれば、各企業で労働時間を自由に決めても問題ありません。そのため、企業によっては所定労働時間が法定よりも短く、7時間などに設定されていることがあります。

仮に1日の所定労働時間が7時間だった場合、法定労働時間8時間との差は1時間。この1時間が法定内残業に当たります。法律により規定された労働時間を超えた残業は、法定時間外労働となり割増賃金が発生しますが、法定内残業には割増賃金支払いの義務はありません。

法定時間外労働の割増率は25%以上(1ヶ月の残業が60時間を超える場合は50%)です。(
※2023年まで中小企業に60時間超の規定はありません。)

・深夜労働
会社の定める労働時間内であっても、22時から翌5時の深夜労働時間に当たる場合は、深夜労働分の割増賃金25%以上を上乗せして支払わなければなりません。時間外労働とかぶる場合は、両方の割増率を加算して、50%(1ヶ月の残業60時間以上なら75%)。休日出勤とかぶる場合も両方の割増率を加算して計算します。

・休日出勤
休日出勤の割増率は、週1日または4週4日の法定休日に当たるか、それ以外の社内規定の休暇になるかで異なります。法定休暇の場合の割増率は35%、このほかの休暇は時間外労働となるため25%(1ヶ月の残業60時間以上なら50%)です。

手当はどうする?

基本給に上乗せされて支払われる、家族手当、住宅手当、通勤手当、資格手当などの各種手当、賞与などの臨時支給の賃金は、月給の計算から除外して計算します。基本給20万円、手当10万円、賞与50万円の場合、基本給の20万円のみを月給としてカウントするということです。

しかし、諸手当に関してはすべてが月給計算で除外される訳ではありません。住宅手当、家族手当、通勤手当に関しては、除外できる範囲が明示されており、それに該当しなければ月給に含めて計算します。

先ほどの計算で、手当10万円のうち、一律で支給されている手当が5万円なら、基本給20万円との合計、25万円を月給として扱うということです。

対象者について

役職や雇用形態などによっては、残業代支払いの対象にならないこともあります。

・管理職の残業代
管理職には、時間外手当や休日出勤手当を支払わなくても良いとされています。ここで注意したいのは、名ばかり管理職は管理職に当たらない点です。

よく誤って解釈されますが、経営に参画しているような人、管理監督責任や権限を持つ人、十分な役職手当がある人などに該当しないと、残業代の支払いが免除される管理職にはなりません。課長などの役職がついているからといって、実際の業務がともなわないと残業代カットはできないので注意しましょう。

・勤務形態による残業代
勤務形態のうち、変形労働時間制やフレックスタイム制は、月や年単位で労働時間を設定して、労働者が柔軟に働けるようにした勤務形態です。この場合、1日の労働時間が平均を満たしているかどうかではなく、年間あるいは月間とおして所定の労働時間を超えていないかで残業を判断します。

変形労働時間制やフレックスタイム制で残業手当を支給するのは、所定の労働時間を超えている場合、法定休日の休日出勤が発生した場合、深夜労働があった場合です。

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まとめ

残業代を正確に計算するためには、残業時間が深夜や休日労働に当たらないか、手当はどうか、対象者はどうかまで細かくチェックする必要があります。社員数が多ければ多いほど手続きは複雑になりますので、チェックを徹底するだけでなく、外注やシステム導入などほかの方法も検討するべきでしょう。

ただし、勤怠管理システムの導入については、導入のメリットやどのシステムが自社に合うのかわからない場合も多いと思います。選ぶときの参考になるように、こちらの記事では22種の勤怠管理システムを一気に比較検討できるようにまとめてご紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

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