INTERVIEW

語る

潜在的課題をヒアリングでいかに見つけるか

まずは、今までのキャリアについて教えてください。

以前は社労士事務所で2年間勤めていて、一般的な社労士業務である、手続き業務や助成金申請、勤怠システム導入などを担当していました。その中で、より付加価値の高い仕事がしたかったので、当社に転職しました。今はコンサルティングがメインで、一部評価システムの開発もしています。

具体的にはどんな相談が多いですか?

人事制度の基準がないお客様や、人事制度を変える必要を感じているお客様からのご相談が多いですね。社員規模が大きくなり、一元的に行っていた制度を営業部門、事務系部門、現場作業でキャリアや評価を分けたい。10年くらい同じ人事制度を使っていて時代の流れに合わなくなったので変えたい。こういった内容が多いです。

相談を受けてから提案までの流れを教えてください。

お客様の悩みや現状をお聞きして、課題点を挙げていきます。それから社内の各部署の方にヒアリングをして、制度の見直しや作成を行います。まずは、キャリアパス、等級制度をいかに設定するかですね。それが確定したあとに賃金制度や評価制度が決まっていきます。制度の内容が固まれば、制度運用のサポート(従業員説明会・評価者研修等)を行っていくのが大きな流れです。制度の導入で1年、運用支援で1年くらいお付き合いをします。

制度を変える際、気を付けていることは何ですか?

たとえば、キャリアを職種ごとに分けるとキャリアや処遇の差から従業員に不公平感が出たりします。実際の運用は適切に分かれていますが、従業員からすると全員がキャリアアップを目指せるチャンスがある。こういう運用を目指す会社が増えている気がしますね。

人事制度の運用面で、他に大変なところはありますか?

人事制度の設計も難しいですが、実際に制度導入後はお客様が運用しないといけないのでどうしても疑問が出てくる。すると、我々が手取り足取り教えないといけない。評価シートの運用ができても、そのあと昇給・賞与にどうやってつなげていくか。また、イレギュラーな場合はどう対応するのか。人事制度的に許容していいかどうかの判断が難しい。その場合は、御社の考え方はこうで、当社の考え方(人事制度の考え方)はこうですとまず伝え、その上でここまでならイレギュラーなことも認められますと提案する。がちがちに人事制度はこうだからこうやりなさいとは言わないようにしています。

法令遵守の意識が高い企業に最適

「MINAGINE就業管理」のどの機能を活用されていますか?

乖離確認ができるところが、ほかのシステムにはない最大のメリットだと思います。勤怠管理システムはいろいろ調べていますが、実際の打刻と所定時間に乖離がある場合の確認ができるのはミナジンが一番やりやすいです。また、休日出勤の際に、かならず振休の申請を入れないといけないとか、法令遵守がしっかりしているなと思います。こういう機能がないと、担当者が本人に直接連絡をして確認を取ったり、データを抜き出していちいちチェックしたりしないといけない。時間や人件費に無駄が生じます。

導入後の状況はいかがでしょうか。

ある企業様に、わずか二か月でシステムを導入してもらったことがあります。短期間でもスムーズにやってもらえて良かったという声をいただきました。ミナジンはサポートがしっかりしていますね。その企業様は、もともと別のシステムを考えておられたのですが、労働時間の管理が出来ていないのが一番の課題だったので、乖離確認なら「MINAGINE就業管理」がいいですよと勧めました。法令遵守の意識が高い企業なら、ミナジンがいいと思います。企業として必ず求められるところなので、やっておいて損はないと思いますね。

IPOを目出す場合、やっておくべきことは何だと思われますか?

労働時間の管理と管理監督者の見直し、その二つが一番大事です。早めに着手しておけば課題の解決がゆっくりできます。IPO直前に慌てて対応すると、給与体系がいびつになることが多い。制度として非常にバランスが悪くなり従業員の不満やモチベーションダウンにもつながります。

やはり、勤怠システムは導入するべきだと思いますか?

労働基準監督署が調査に来た場合、いまだに勤怠システムが入ってないと、なかなか労働時間の管理が出来ているとは説明がしにくいと思います。客観的な時間管理が必要なので、入れていない企業様には入れた方がいいですよと提案します。

導入しなかった場合、どんなリスクが考えられるのでしょう。

企業側が把握していない労働時間が出てきて、未払い残業代が発生すると思います。未払い賃金の時効も2020年4月から2年から当面は3年(いずれは5年)になっています。すると、弁護士もそこに目を付けてビジネスとして参入してくるので、潜在的な問題が浮かび上がり、想像していなかった請求がくるかもしれない。その場合、未払いの期間や人数によっては、企業にとって非常にリスクが高いと思います。

コロナショック以降、企業から増えた相談はありますか?

Zoomでの打ち合わせが多くなり、在宅勤務の社員評価について、質問されることが増えてきました。ただ、評価制度を急には変えられないので、当面は今まで通りに進める企業が多いと思います。アメリカならば業務の範囲がきちんと分かれているけれど、日本は業務範囲が広く、職務が曖昧になっている場合が多い。ただし、在宅勤務が進むことで、業務の洗い出しが進み、職務や結果に応じた評価制度の土壌が整うかもしれませんね。

評価制度は時代の大きなキーワードですね。

今後は出来る人と出来ない人の格差が大きく表れてくると思います。当社が在宅勤務をする場合、朝に今日何をするかを管理者に提出し、終わったら結果報告をする。そこで管理者が職務の進捗を図っています。こういったやり方も一つあると思います。

ほかにも、これから出てくる問題点はありますか?

出社が減ると、従業員と管理者が会えないので、紙に署名や押印ではなく電子署名が普及していく。面接もWEB面談にしたり内定通知や雇用契約書もメールでやりとりをしたりする。雇用契約書の電子化やペーパレス化が進むと思います。そういう流れに乗り遅れると、人材が流出していく危険があると思います。

これからの社労士に求められることは何だと思いますか?

ずっとコンサルティングをメインでやってきた人たちは、ファシリテーション能力やプレゼンテーション能力が高い。社労士も資格の範囲にとどまらない能力を身に付けていく必要があると思います。データの電子化、手続き業務のシステム化はもう進んでいるので、第1号業務、第2号業務だけでは生き残れない。より課題解決能力が求められると思います。

今後の目標を聞かせてください。

やはり、ヒアリングが大事だと思うので、相手をしっかり理解することを今後も心がけていきたい。また、企業の社長様や実際の部門長とのやり取りの中で、いかに相手の潜在的な課題を把握してすぐ解決できるか。そういう付加価値を出せるよう、もっとスキルアップしていきたいですね。

みらいコンサルティング株式会社
竹内雅史 先生(みらいコンサルティング株式会社)

金融機関にて新規事業の立ち上げを経験。新規事業の管理者として事業部をまとめているうちに人事に興味を持ち、社労士の資格を目指す。取得後社労士事務所を経て、みらいコンサルティングへ。人事制度だけでなく、社労士の知見を生かした労務管理や、システムによる効率化を得意とする。自社開発の評価システム「MIRAIC」の開発メンバーの中核として携わり、実行・運用支援に強みを持つ。

TOP