同一労働同一賃金への対応は助成金を賢く活用しよう!助成金の種類や条件とは

働き方改革のひとつの柱として、2020年4月(中小企業は2021年4月)より、同一労働同一賃金がはじまります。簡単に説明すると、同じ職務内容で同じ責任を要する仕事であれば、正規や非正規など雇用形態にかかわらず、同一の賃金を支払わなければならないという制度。

正規と非正規の格差をなくすためにはじまりますが、企業にとって心配なのが制度実施による賃金上昇です。そこで、利用できる制度として挙げられるのがキャリアアップ助成金。今回は、キャリアアップ助成金の概要と種類を解説していきます。

同一労働同一賃金のキャリアアップ助成金とは

同一労働同一賃金の実施によって、企業ではさまざまな取り組みが考えられますが、このうち労働環境の見直しの一環として利用できるのがキャリアアップ助成金です。助成金を活用すれば、制度実施による企業の負担を軽減できます。

キャリアアップ助成金の概要

キャリアアップ助成金は、企業内でのキャリアアップを目的としたもの。契約労働者や派遣労働者など、いわゆる非正規雇用労働者の職能向上を推進するために設けられています。

具体的には、非正規社員の労働環境見直しや待遇の改善など、所定の取り組みを実施した事業主に対する助成で、7つのコースがあります。

中小企業主の定義

キャリアアップ助成金は、企業の大小問わず受けられる制度ではありますが、中小企業のほうが7つのコースいずれも、大企業より助成額が優遇されます。

ここでの中小企業とは、基本的に資本金や出資総額が3億円以下、あるいは常時雇用の労働者が300人以下の企業のことです。小売業やサービス業は資本金などが5,000万円以下、または常時雇用者が50人以下(サービス業は100人以下)。卸売業は資本金などが1億円以下、また常時雇用者が100人以下の企業を指します。

キャリアアップ助成金の各種コース

同一労働同一賃金の実施で利用できるキャリアアップ助成金は、7つのコースがあることを先に説明しました。具体的にどのようなコースがあるのか、各コースの内容と支給額をみていきましょう。

正社員化コース

有期契約を無期契約にする場合を含め、非正規社員を正規雇用するなど、雇用形態を改善した場合の助成金です。転換によって賃金が一定の割合で増額していることなどの要件があります。また、正規雇用には、勤務地限定や職務限定などの制約がある社員も含みます。

このコースでの支給額は、ひとりにつき213,750~1,195,000円で申請上限は20人です。派遣労働者を正規雇用したとき、母子や父子家庭の親を正規に転換したとき、35歳未満の若年者を正規に転換したとき、勤務地・職務限定正規雇用の規定をして直接雇用した場合に加算があります。

賃金規定等改定コース

すべての有期契約労働者(非正規社員)の賃金、あるいは一部を改定し、2%以上賃金を増額したときに受けられるコースです。

対象の労働者10人までは1事業所ごとに、11人以上は1人あたりで計算され、33,250~5,400,000円(職務評価の手法を用いた場合は1事業所あたり142,500~240,000円の加算)の助成が受けられます。申請は1年度1回のみ可能です。

健康診断制度コース

法律により健康診断の実施が義務付けられているのは、常時雇用の社員、あるいは1年以上の雇用でかつ週の労働時間が正規の4分の3以上の社員です。健康診断制度コースは、こうした法律によって規定されていない有期契約労働者(非正規労働者)を対象としたもの。

対象の労働者4名以上の健康診断を実施したときに助成金が受けられ、支給額は1事業所あたり285,000~480,000円です。1回のみ利用可能です。

賃金規定等共通化コース

有期契約労働者の賃金規定について、正規労働者と共通した職務の賃金規定を設け、適用したときに受けられる助成です。具体的には、非正規社員と正規社員それぞれ賃金規定を3区分に以上つくり、同一の重なり合う区分が2つ以上該当する必要があります。

助成額は1事業所につき427,500~720,000円(1回のみ)。2人目以降、賃金を共通化した労働者ひとりにつき15,000~24,000円(最大20人で480,000円まで)の加算があります。

諸手当制度共通化コース

有期契約労働者(非正規労働者)について、正規労働者と共通する諸手当制度を設けて適用した場合に受けられる助成です。

1事業所あたり285,000~480,000円(1回のみ)が助成され、2名以降の共通化した労働者ひとりあたり12,000~18,000円(最大20人で360,000円)、同時に共通化した諸手当のうち2個目以降は諸手当ひとつにつき120,000~192,000円(最大10で1,920,000円)が助成されます。

選択的適用拡大導入時処遇改善コース

週の労働時間が正規雇用の4分の3に満たない非正規労働者については、法的に社会保険に加入する義務はありません。しかし、選択的適用拡大によって、週の所定労働20時間以上、雇用期間1年以上(見込み含む)、賃金が月88,000以上、学生でないことの条件すべてを満たす場合、労使合意に基づき社会保険が適用できます。

本コースは、選択適用拡大で、有期契約労働者(非正規労働者)を新たに社会保険に加入させたうえで、基本給を増額したときに受けられる助成です。助成金は、基本増額割合、3%以上、5%以上、7%以上、10%以上、14%以上の5段階あり、1事業所1回のみ、45人まで申請可能です。

ひとりあたり22,000~166,000円の計算で、最大7,470,000円の助成金を受けられます。(2020年3月31日までの暫定措置)なお、対象の労働者で増額割合が異なる場合、一番低い割合が適用されるため注意が必要です。

短時間労働者労働時間延長コース

選択的適用拡大導入時処遇改善コースが法定外の社員を対象にしたコースであるのに対し、本コースは有期契約労働者(非正規労働者)を法定内の労働時間にまで延ばすことで、社会保険を適用させることを目的としたもの。

単体の利用だと週の所定労働時間5時間以上延長した場合に適用され、ひとりあたり169,000~284,000の助成が受けられます。(1年度1事業所の上限は45人で、最大12,780,000円)

また、週の所定労働時間の延長で社会保険に加入させ、賃金規定等改定コース、あるいは選択的適用拡大導入時処遇改善コースの実施の場合も助成金の申請が可能です。この場合、ひとりあたり34,000~247,000円(最大11,115,000円)の助成が受けられます。所定労働時間の延長は1時間以上5時間未満の4段階です。(いずれも2020年3月31日までの暫定措置で上限人数を緩和)

同一労働同一賃金の助成金を受給する前の主なフロー

ここまで同一労働同一賃金の実施で使える助成金の種類と概要を紹介してきました。それでは受給するにはどうすれば良いのでしょうか。受給までの流れを確認していきましょう。

コースを選択し計画書を作成

助成金受給の要件に沿った措置が可能かどうか検討し、実施するキャリアアップ助成金のコースを選択。3年以上5年以内のキャリアアップ計画書を作成します。

キャリアアップ計画を提出し認定してもらう

事業所ごとに管理者を立て、労働局長より計画書の認定を受けます。

対象コースの取り組みを実施

実施するコースに合わせて就業規則などの見直しを図り、取り組みを実施します。

助成金の申請

各コースで必要な添付書類を用意したうえで、助成金の申請を行います。たとえば正社員化コースなら、転換から6ヶ月分の賃金を支給した翌日から2ヶ月以内の申請となり、各コースで異なるので注意が必要です。

支給の確定

労働局あるいはハローワークでの審査を経て、支給が確定します。

助成金をスムーズに受給するために事前にできること

同一労働同一賃金の実施で使える、助成金と受給の流れを簡単に説明してきましたが、各助成金のコースにはそれぞれ細かな要件が定められています。

助成金を申請しても要件をクリアしないと支給されないため、助成金の申請にあたっては、これまで以上に社員の勤務状況や労働内容、あるいは給与の把握が急務です。助成金は非正規労働者を対象に行われるため、今後は勤務形態や雇用形態にかかわらず管理が必要だといえるでしょう。

現在の管理方法に不安や疑問がある場合は、やはり専門家に一度確認をしてもらったり、今後の運用方法などの提案などをもらったりできると安心ですよね。

社労士法人ミナジンでは、企業の勤怠管理や給与管理、今後の管理体制の変更などのお悩みを、社労士がヒアリングし、改善点があれば改訂のご提案などもさせていただきます。

会社の状況に合わせてサービスの利用範囲を選択できるので、必要に合わせて利用を検討してみてください。

まとめ

働き方改革によって実施が予定されている同一労働同一賃金ですが、キャリアアップ助成金を活用すれば、一定の範囲で負担をカバーできます。しかし、そのためには要件を満たすために労働や給与の管理が重要です。ミナジンの勤怠管理システム、給与計算のアウトソーシングを活用して、同一労働同一賃金に備えましょう。