働き方改革法案による非正規雇用への待遇改善・企業が行うこと
非正規雇用者と正規雇用者との格差を是正するべき、働き方改革法が成立しました。働く人たちの立場で進められる働き方改革として、大きな注目を集めています。
とくに注力されているのは、同一労働・同一賃金を目指すことです。2019年4月の嗜好に向けて、具体的にどのような対応をすべきか、考えなければなりません。
ここでは働き方改革法案における非正規雇用者の待遇改善(同一労働・同一賃金)への対策や、導入することへのメリットとデメリットについて解説をします。
目次
最初に確認したい非正規雇用の現状
2004年に解禁された製造派遣を皮切りに、非正規雇用を拡大することで、これまでの「日本の労働力を押し上げてきた」といっても過言ではないでしょう。
しかし、非正規社員の待遇面など、雇用における問題については、リーマンショックが起きた2008年頃から急速に取り上げられるようになりました。
2019年、現在における非正規雇用の現状を見ていきましょう。
非正規雇用の定義
非正規雇用の定義から見ていきましょう。
非正規雇用は、正規雇用以外の有期雇用を結ぶ従業員のことです。パートタイマーやアルバイト、契約社員(期間社員)、派遣社員(登録型派遣)、契約職員、嘱託社員などが該当します。
統計上の定義や事業所での呼称などによってさまざまな類型・呼び方があります。形態も多様となるため、正規雇用よりも、幅広い定義づけが可能です。
厚生労働省職業安定局が、2012年3月に開催した「非正規雇用のビジョンに関する懇談会」(2012年3月)で定義された非正規雇用についても、目を通しておきましょう。同懇親会の報告では、以下の条件を満たす場合、正規雇用として、それ以外を非正規雇用としています。
(1)労働契約の期間の定めがない
(2)所定労働時間がフルタイムである
(3)直接雇用である(労働者派遣のような契約上の使用者ではない者の指揮命令に服して就労する雇用関係(間接雇用)ではない)
非正規雇用と正規雇用の割合と違い
厚生労働省の調査(平成29年時点)で、正規雇用労働者の3,423万人に対して、非正規雇用は2,036万人いることが発表されています。雇用者全体(役員を除く)の37.3%を占めており、1994年から緩やかに増えています。
非正規雇用の各雇用形態が占める割合は、以下の通りです。
・パート:997万人(49.0%)
・アルバイト:417万人(20.5%)
・契約社員:291万人(14.3%)
・派遣社員:134万人(6.6%)
年齢における傾向としては、65歳以上の割合が高くなっていることがあげられます。
非正規雇用で問題となっている賃金については、一般労働者(正社員・正職員)の 平均賃金が1,937円に対して、短時間労働者(正社員・正職員以外)の平均賃金は1,081円となっています。
年代別では、10代~20代まで大きな差はありません。しかし50~54歳になると一般労働者(正社員・正職員)が2,403円、短時間労働者(正社員・正職員以外)が1,091円となり、非正規雇用労働者の賃金の低さが目立ちます。
時給だけではなく、各種手当や退職金など待遇面において、正規雇用労働者に比べると低い水準です。不利な立場となるのは、待遇だけではありません。福利厚生や教育訓練、雇用の安定性、休暇制度、社会的な信頼性の高さなどが問題視されています。
厚生労働省では、対策すべき課題について、以下の点を掲げています。
(1)雇用が不安定
(2)経済的自立が困難
(3)職業キャリアの形成が不十分
(4)セーフティネットが不十分
(5)ワークルールの適用が不十分 労働者の声が届きにくい
働き方改革による非正規社員の待遇改善
働き方改革による非正規社員の待遇改善として、「正社員転換への取り組み」「同一労働・同一賃金への実現」について解説します。
正社員転換への取り組み
非正規社員の不安定な雇用を巡る問題に対処するため、厚生労働省では「正社員転換・待遇改善実現本部」や「正社員転換・待遇改善実現チーム」が設置されました。
非正規社員については、正社員と比べて雇用期間などが決まっていることから、能力開発の機会に恵まれないことが多くあります。そのため、スキルアップの面においても処遇改善案が度々取り上げられてきました。
このような背景をもとに、非正規雇用労働者の就労に関する安定化を図るため、「正社員への転換」「待遇改善を強力に推進することを目的」に、厚生労働大臣を本部長とした組織が形成されたのです。
少子高齢化が進む中、働き手の人口減少が見込まれることから、非正規社員の意欲や能力に応じた待遇改善は、早急に行わなければなりません。
このことから、取り組みを加速させるための計画である「正社員転換・待遇改善実現プラン」が2016年に策定。「働き方改革実行計画」が打ち出され、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律も盛り込まれました。
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同一労働・同一賃金への実現
同一労働・同一賃金への実現に向けて、厚生労働省によるガイドラインを手がかりに説明します。
本ガイドラインは「正規か非正規かという雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保し、同一労働同一賃金の実現に向けて策定するもの」です。
非正規雇のうち、特記すべきは派遣社員の場合です。派遣契約を結ぶ労働者は、キャリアアップや賃金、職務内容において問題視されています。
派遣先が変わるごとに、雇用条件・契約内容賃も変わるためです。給与水準が変われば、派遣社員の収入も不安定になる可能性があります。
所得は大企業では高い水準となり、中小・零細企業では低い傾向になります。しかし派遣労働者が任される仕事の難易度・熟練度は、会社の規模に関わらず高いレベルが求められ、かつ正規雇労働者と同レベルです。
2020年4月1日から施行される改正労働派遣法では、派遣元事業主に対して、以下のいずれかを、派遣労働者の待遇で確保することが義務化されました。
【派遣先均等・均衡方式】派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇
【労使協定方式】一定の要件を満たす労使協定による待遇
「同一労働・同一賃金」導入を考えてみよう
「同一労働・同一賃金」導入にあたっての対応方法と「メリット・デメリット」について解説します。
「同一労働・同一賃金」導入にあたっての対応方法
「同一労働・同一賃金」では、能力や経験、勤続年数において、同一であれば同一の支給を、違いがあれば違いに応じた支給をする必要があります。
同一か違いがあるかを知るために行うべきは、実態の把握です。非正規社員と正規社員の職務内容を、作業内容や責任の観点で事実確認を行います。
業務内容が明らかになれば、人件費におけるコストを計上。費用に応じて人員調整を行います。各種手当などで、正社員の賃金を引き下げる可能性も生じるでしょう。
商品やサービスの販売価格を、値上げすることで、生産性を向上させる対応方法も考えられます。
「同一労働・同一賃金」を行うメリット
「同一労働・同一賃金」を導入するメリットは、非正規雇用の従業員による働く意欲・モチベーションアップが向上することです。
努力をしても収入に反映されないのであれば、能力や知識、技術があっても、仕事で活かされない可能性が高くなります。
非正規雇用・正規雇用関係なく、どの社員であっても活躍できるチャンスがあることで、従業員だけではなく企業も躍進して行くことでしょう。
「同一労働・同一賃金」を行うデメリット
「同一労働・同一賃金」によって考えられるデメリットは、人件費が上がる可能性があることです。非正規雇労働者の比率が多い企業は、とくに考慮をしておかなければなりません。
人件費削減のために非正規雇の人材を雇ってきたとしても、今後コスト面では有利にならない可能性もあります。雇用者だけではなく、労働者側にとっても不利な待遇処置となりうるケースも想定されます。
まとめ
非正規雇用の現状を紹介しながら、働き方改革法案における非正規雇用者の待遇改善(同一労働・同一賃金)への対策や導入することへのメリットとデメリットを解説しました。
「同一労働・同一賃金」を上手く導入できるか否かは、企業の手腕にかかっています。対策を講じた上で、非正規雇人材の労働力を、企業経営に活かして行きましょう。
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