マイナンバー制度による企業側の負担とは?工数削減のために考えたい委託と内製化について
2015年10月よりマイナンバー制度がはじまり、企業は行政手続きのため社員のマイナンバーが必要となりました。マイナンバーの管理が加わったことで、業務に負担が増したと実感する担当者も少なくないでしょう。
それでは、マイナンバー管理の負担を軽減するには、どういった方法が考えられるのでしょうか。また、マイナンバーの管理を委託すると実際どうなのか、メリットとデメリットを説明します。
目次
マイナンバーの管理は委託と内製化どちらが良いのか
日々の業務が増える中、マイナンバーの処理まで加わるとなると、管理のための作業を効率化させるために考えられる方法は、委託、あるいは内製化があげられます。
それぞれどういった特徴があるのでしょうか。
委託するメリット
マイナンバーの管理業務は外部に委託することも可能です。
委託することで、主に3つのメリットがあります。
収集が容易になる
企業で社員のマイナンバーを扱うには、社員分のマイナンバーを集める作業が発生します。
すでに既存社員のマイナンバーを収集している場合でも、これから入社する社員などマイナンバーを収集する作業は度々必要です。
管理を委託すると、対象の社員に連絡してくれたり、写真をアップロードできたりなど、簡単に委託先へ社員がマイナンバーを送れるサービスを利用できるため、収集の手間を削減できます。
データ紛失や漏洩のリスクが低い
マイナンバーの管理で課題となるのは、社員から預かった情報をどのようにして適切に保管するかです。マイナンバーは現在の行政手続きに加え、今後も利用の拡大が予想される情報だけに、取り扱いには細心の注意が必要です。
マイナンバーの管理を専門にしている業者への委託であれば、すでにセキュリティが構築されているため、外部からのアクセスを制限するなどの措置が可能です。
また、専用のシステム内でのみの操作となるため、外部に情報が漏れるリスクは低くなります。
管理しやすい
マイナンバーの管理を委託する場合、専用のシステムで管理します。
そのため、必要時のデータ抽出が容易です。
仮に不備があった場合でも、そのことに気づきやすいメリットがあります。
また、マイナンバーについては法改正により、今後さまざまな変更が起きる可能性があります。しかし、委託であればシステム整備まで委託先が対処してくれるため、社内システムの変更のために教育や整備の必要がありません。
委託するデメリット
続いて、マイナンバー管理を委託するデメリットをみていきましょう。
事前準備が必要
マイナンバー制度がはじまったことで、企業では、マイナンバー取扱いのための社内研修の実施、社員への利用目的の通知、必要書類の取得などの事前準備が必要になりました。
加えて、個人情報の保全やアクセスの管理など定期的な監査も求められます。
こうした一連の作業についても、委託が可能です。
しかし、委託にあたって、会社の監督責任がなくなる訳ではありません。
また、委託の範囲によっては、会社でも相応の準備が必要です。
マイナンバー管理を委託するには、管理にあたってどういった業務が発生するのか、どこまで委託するのかなど、業務の洗い出しが必要でしょう。
業務を洗い出したうえで、さらにどこに負担がかかるのか、何を委託するのか、会社側の監督責任が果たせるのか精査し、必要な準備をしなくてはなりません。
管理のしやすさは委託先に影響されやすい
マイナンバー管理の多くを委託先に任せるにしても、委託先とは状況に合わせて連絡を取ることが必要です。しかし、こうしたときに、連絡がうまく取れない、フォローアップが遅いなどの問題があると、適切にマイナンバーを取り扱うことは困難です。
いくら魅力的で扱いやすい管理システムがあったとしても、必要な業務がおざなりになってしまっては意味がありません。
マイナンバー管理のしやすさは、このように委託先に影響されやすいので注意が必要です。
内製化のメリット
内製化とは、委託していた業務を社内で処理することです。マイナンバー管理を内製化した場合のメリット3つを説明します。
社内での知見が蓄積される
マイナンバーの管理では、社員からの収集方法、情報の伝達をどうするか、情報の保管や安全措置をどう講じるか、情報の破棄はどうするかなど、さまざまな課題があります。
内製化する場合、こうした課題を社内で解決しなければならないため、時間が経つほどに社内での経験や知識が育ちやすいです。
マイナンバーの管理に強い社員を育てる、教育する意味ではメリットがあります。
コストが抑えられる
マイナンバー関連の法改正により、システムをバージョンアップする必要性はありますが、一度システムを構築してしまえば大幅な変更はほとんどないと考えられます。
しかし、外部に委託する場合、定期的にコストが発生し、長期的にみると負担になります。
単純にシステムの導入、委託の利用料で見たとき、内製化の方がコスト抑制の効果が高いです。
迅速な対応が可能になる
管理業務の対応は委託先によると先に説明しましたが、フォローアップなどのサポートが遅い委託先だと、処理するのに時間がかかってしまいます。
内製化すれば外部からのレスポンスの時間をカットできるため、迅速な対応も可能です。
内製化のデメリット
続いて、内製化のデメリットをみていきましょう。
マイナンバー収集が発生する
社会保険の手続きなど、マイナンバーを記載しなければならない手続きは多くあります。
そのため、企業は社員のマイナンバーを収集する必要があるのですが、対象は正規社員だけではありません。パートタイマーやアルバイトも含まれます。
こうした従業員全体に対して、郵送で収集するのか、あるいはメールなどを使うのか。
いずれにしても収集方法を統一する必要がありますし、従業員すべてが実行できるものでなければなりません。
収集手段を考えるところから、収集の工数が発生し、担当の負荷も大きくなります。
情報漏洩のリスクがある
内製化する場合、必要な対処を怠ると情報漏洩のリスクが高まります。
回収する際に置き忘れなどで情報が漏れる可能性もありますし、マイナンバーを持ち出す際に、情報の載った紙を落としてしまう可能性もあるからです。
また、社内で保管している場合でも、誰でも閲覧できるキャビネットに保管すると情報が漏れることがあります。その他、システムやネット上の保管でもセキュリティが甘いと、外部からアクセスされる可能性もあります。
あらゆる可能性を考え、セキュリティ強化と取り扱う担当者への教育が必要ですし、定期的なメンテナンスが必要です。
社員への説明が必要
マイナンバーは行政手続きで利用される特別な個人情報になることから、回収時に使用の目的と保管の方法を説明する必要があります。
うまく説明できないと、マイナンバー収集を拒否される可能性もあるため、十分な対策が必要です。
このように、内製化か委託か、いずれもメリットだけではないため、社内で検討して会社に合った方法を選択することが大切です。しかし、ここまで説明してきたように、社内で完結する場合はさまざまな課題に対処する必要があります。
担当者の工数も増えますし、負担もかかるため、注意が必要です。
人事業務は徐々にアウトソーシングされていく傾向にある
ここまで、マイナンバー管理の委託と内製化について説明してきましたが、マイナンバーに限らず給与計算や就業管理など、アナログな対応をしている企業も少なくありません。
これにマイナンバーの管理が加わる訳ですから、担当者の業務負担はさらに大きくなってしまいます。
また、マイナンバーは一部の例ですが、マイナンバーに限らず法改正は実施されているため、その度に変更を行うとなると、本来の業務に支障をきたします。
このことから、アウトソーシングを利用する企業は増えてきているのが現状です。
担当者の負担軽減を考えるなら、マイナンバー管理に限らず、雇用形態や給与体系の違いで運用が難しい給与計算、各種保険の手続きなど、アウトソーシングを利用できないか見直しが必要でしょう。
まとめ
マイナンバーの管理など、現在自社で管理業務を行っている担当者の負担問題は、アウトソーシングを利用することでいくつか解決を見込むことができるでしょう。
そのためには、利用しやすく、負担の軽減が明確なサービスを用いることが大切です。