有給休暇が義務化された!法改正によって会社側はどう動くべきか

有給休暇(年次有給休暇)は、賃金の支払いがある休暇のことで、雇用から一定期間経過した労働者に認められた権利です。これまで、「有給休暇をどのくらい取得するように」という法的規制はありませんでしたが、働き方改革関連法の成立によって取得が義務化されました。

法改正で会社はどういった対策を取らなければならないのでしょうか。はじめに、法改正後の有給休暇の内容からみていきましょう。

有給休暇の法改正がされた背景

2018年、企業が付与した有給休暇の平均日数18.0日に対し、労働者の取得日数は9.4日、取得率はわずか52.4%でした。

出典:「平成31年 就労条件総合調査」(厚生労働省)[PDF]

規模の大きい企業では半数を超える取得率ですが、従業員数に比例して、従業員が少なければ少ないほど取得率は下がります。有給休暇の取得率が半数を超えない企業も少なくありません。

国際的に見たときの日本の有給休暇取得率はかなり低い部類に位置し、これも問題視されてきました。

それでは、なぜ有給休暇取得率は上がらないのか。日本では空気を読んで取得しない人が多いことが原因です。特に会社が忙しい時期は、会社への配慮、あるいはほかの人への配慮もあって取得しない人が多い傾向にあります。

しかし本来、有給休暇は労働者の権利です。心身を休めるために設けられた有給休暇が適切に取得されないのでは、労働環境はいつまで経っても改善されません。こういった課題を解消するために義務化しようということで有給休暇の法改正が行われました。

有給休暇の法改正の内容

まず、これまでの有給休暇の基本的な内容をおさらいしてみましょう。

有給休暇は、6ヶ月以上継続して雇用されており、かつ全労働日の8割出勤している労働者に付与されるものです。正社員や一部有期雇用労働者などは、勤続年数6ヶ月経過後に有給休暇10日が付与されます。

繰越は2年で、取得のタイミングは労働者の請求する時季とされていました。会社は、労働者の請求があれば付与する形で問題なかったのです。

しかし、労働者の請求のタイミングに取得を委ねては、確実な有給休暇の取得は実行されません。そこで、法改正により2019年4月1日より、使用者側の取得義務が発生するようになりました。年5日は、労働者に有給休暇を取得させることが義務になったのです。

義務化の対象となる労働者は、年次有給休暇10日以上付与されるものです。つまり、正社員など常時雇用の労働者のほとんどが有給休暇取得義務化の対象となった訳です。

会社側の対応はどうすべきか

使用者、つまり会社側に対して有給休暇の取得が法律上義務化されたいま、会社側は何らかの対応を取らなければなりません。具体的に、どういった対応を行えば良いのでしょう。

時季指定義務がある

法改正によって有給休暇取得が義務化されたことにともない、対象者の一部有給休暇は「時季指定義務」が発生することになりました。具体的には、有給休暇付与日を基準にして、1年以内に5日、取得時季指定で有給休暇を取得させなければなりません。

有給休暇付与日は、それぞれの社員が入社した日などから起算されますから、社員にまとめて付与して管理はできませんので注意しましょう。個別に有給休暇を付与して、個別に管理する必要があります。

また、時季指定義務があると説明しましたが、これは会社側が時季を指定できるという意味ではありません。労働者の意見を聞いて、できるだけ希望に沿った形で時季指定するよう、使用者側には努力義務があります。

ただし、こうした時期指定義務があるのは1年間に5日以内の有給休暇についてのみです。すでに5日以上取得、あるいは請求のある労働者の有給休暇に関しては、時季指定義務はありません。

個別指定方式

有給休暇の時季指定義務を確実に実行する方法として、会社側にはふたつの選択肢が設けられています。ひとつが「個別指定方式」です。

この個別指定方式では、基本的に有給休暇の取得時季は、労働者本人の意思に任せます。会社側が介入するのは、有給休暇の取得が5日に未満で、過去の取得日と比較して1年以内に取得が難しそうな労働者がいた場合です。

この場合、労働者が計画的に有給休暇を取れるよう、使用者が個別に残りの取得日数を指定します。

ここで注意したいのが、取得ができなさそうという判断をどの時期で行うかです。あまりに判断を急ぐと、会社側が無理に有給休暇取得日を指定したようになってしまいます。期限の3ヶ月前、1ヶ月前などと会社が介入する期限を決め、就業規則に追加しておくと良いでしょう。

この個別指定方式のメリットは、取得が難しい社員がいた場合、会社側で柔軟に取得日を指定できることです。ただし、社員を個別に管理する必要があるため、担当者の負担は重くなります。

計画年休制度

労使協定があれば、原則的な方法ではなく、「計画年休制度」を選択できます。会社が前もって年間の有給休暇取得日を割り振る制度です。

方法としては、連休の橋渡し日を新たに有給休暇日に指定してブリッジホリデーなどで社員全体に取得させる「一斉付与方式」、グループや班ごとに取得させる「交替制付与方式」があります。ほかにも、「個人別付与方式」といって子どもの誕生日などをアニバーサリー休暇として割り振ることも可能です。

計画年休化制度のメリットは、あらかじめ指定することで従業員が有給休暇を取得しやすくなること。そして、有給休暇を先に計画しておくことで、会社側としてもスケジュールの見通しが立ちやすいことです。

一斉付与方式や交替制付与方式を選択する場合は、まとめて付与することで事務的な負担も軽減できます。

しかし、注意しなければならないことがあります。計画年休制度は、すでに会社側で設けている夏季休暇などにすり替えることができないということ。労働者にとって不利益となってしまいますので、会社側はすでにある休暇とは別に、確実に5日は従業員に有給休暇を割り振らなければなりません。

違反した場合はどうなるのか

法改正によって、有給休暇の取得規制が厳しくなったのは前述のとおりです。対象者で、かつ1年以内の有給旧取得日が5日に満たない労働者がいた場合、会社は法律違反扱いです。

どのような状況であっても原則は法律違反です。たとえば、労働者が指定のある有給休暇取得日を無視して出勤し、有給休暇にならなかった場合、労働者が有給休暇の取得を拒否した場合であっても法律違反です。

法律違反と認められると、以下の罰則が適用される可能性がありますので注意しましょう。

・労働基準法 第39条
第39条は2から10まであり、それぞれ有給休暇に関する規定が明記されています。「第39条の7」は、法改正によって追加された5日以上の有給休暇取得義務について触れた項目です。ほかにも時季指定義務や時間単位での有給休暇の扱いについて記載されています。労働基準法 第39条を違反した場合の罰則は、6ヶ月以下の懲役、また30万円以下の罰金です。

・労働基準法 第89条
常時雇用の労働者が10人以上いる使用者の就業規則提出を定めたもの。1~10のいずれかについての事項に規則を設ける場合、あるいは変更する場合は行政官庁に就業規則を提出しなければならないと決められています。

今回の法改正による有給休暇の項目について就業規則を設ける場合も、就業規則の提出が必要ですので、注意しましょう。違反した場合は、30万円以下の罰金になる可能性があります。

まとめ

法改正によって、2019年4月より使用者には有給休暇の取得義務が生じることになりました。対象となる労働者がいる場合は、労使協定をもとに計画的に取得させるか、あるいは原則に従って個人の意思を尊重し、取得場難しい場合は指定して、取得を促進するかのいずれかの対応が必要です。

会社の状況に合わせて、労働者が有給休暇を確実に取得できるような体制を整えましょう。

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「働き方改革関連法案」の成立により、2019年4月1日より有給休暇が義務化されました。企業は有給休暇権利者に対し、1年以内に少なくとも5日は有給休暇を取得させなければなりません。さらに、義務化に合わせ「年次有給休暇管理簿」の作成と3年間の管理も必要になりました。

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