アウトソーシングできる労務の業務とは?外注先の選び方と注意点も解説

人事労務管理は、頻繁に改正される法令への対応や複雑さを増す労務問題、効率的な人材管理など、企業のリソースを大きく消費します。このような状況の中、多くの企業が労務業務のアウトソーシングを選択し、そのメリットを享受しています。

しかし、アウトソーシングを選ぶ際に、適切な外注先を見極めることが重要です。

本記事では、アウトソーシングが可能な労務の業務範囲と、外注先の選び方、そして成功に向けた注意点について解説します。ぜひ参考にしてください。

■監修者:
社会保険労務士法人南大阪総合労務事務所(株式会社AXIAパートナー代表)
竹内 雅史

金融機関で新規事業に携わり、在籍中に社労士を取得。社労士事務所を経て、コンサルティング会社にて、人事・労務コンサルティングを経験。評価システム(ミライク)の開発実績有。現在は、南大阪総合労務事務所に所属しながら、株式会社AXIAパートナーを設立し、人事・労務コンサルティングをメインに、「人」に関する総合サービスを展開中。人事制度× 社労士× システムの専門性を掛け合わせ、全体最適を目指します。IPOや労務監査(DD)、人事制度の実績も多数あり、親身な対応が評価されています。

人事労務アウトソーシングとは?

人事労務アウトソーシングとは、企業が人事や労務管理の業務を外部の専門企業に委託することです。

社会保険の手続き、給与計算、雇用契約の管理などの複雑かつ時間を要するタスクを外部に委託することにより、社内の工数を削減し効率的に業務を処理することができます。また、外部に委託した場合法令を順守するための対応や最新の法律改正への対応もスムーズに行えるため、法的リスクの軽減が期待できます。

中小企業では人事部門を持たない場合も多く、アウトソーシングはコスト削減や経営資源の有効活用にも寄与するでしょう。

人事労務アウトソーシングを利用することで、企業は核となるビジネス活動に集中することが可能となり、全体の競争力強化を図ることができます。

人事労務アウトソーシングの重要性

人事労務アウトソーシングは、企業のコンプライアンス維持と適切な労務管理を実現するために重要な選択肢の一つです。

労務に関する法律・法令は頻繁に更新され、その都度、要件を満たすことが求められます。さまざまな変更に対応するには専門知識を要するため、多くの企業にとって大きな負担となるでしょう。

このような場合、外部の専門企業にこれらの業務を外注することで確実に法令に対応した変更ができるため、経営上のリスクを大幅に軽減することが可能です。

また、労務トラブルの予防や迅速な対応が可能になり、従業員の満足度向上にも寄与します。

人事労務アウトソーシングで依頼できる業務

ここでは、人事労務アウトソーシングで依頼できる業務について解説します。人事と労務の場合に分けて解説するので、それぞれ参考にしてみてください。

人事の場合

人事労務アウトソーシングで依頼できる人事業務には、具体的に以下のようなものが挙げられます。

  • 面接
  • 採用
  • 人材育成
  • 面接から採用、入社後の人材育成に至るまで幅広い業務を依頼できます。ただし、業者により対応できる業務範囲が異なるため、事前に確認しておくことが大切です。

    労務の場合

    人事労務アウトソーシングで依頼できる労務業務には、具体的に以下のようなものが挙げられます。

    • 給与計算
    • 社会保険(雇用保険を含む)手続き業務
    • 住民税年度更新
    • 年末調整業務

    住民税年度更新や年末調整業務は、一年のうち限られた期間でのみ対応が必要な業務ですが、給与計算は毎月行う必要のある業務です。そのため給与計算は、人事労務アウトソーシングの中でもメジャーな業務であると言えるでしょう。

    もし給与計算をアウトソーシングしたいと考えているのなら、人事労務領域の幅広い課題解決ソリューションを提供する株式会社ミナジンの「ミナジン給与計算アウトソーシングサービス」を検討してみてください。

    ミナジン給与計算アウトソーシングサービスに依頼すると、法令順守はもちろん、コスト削減や属人化からの脱却、コア業務に集中できるなど、さまざまメリットが享受できます。

    人事労務をアウトソーシングするメリット

    人事労務をアウトソーシングするメリットとして、主に次の5つが挙げられます。

    • 業務効率化
    • コスト削減
    • 法令改正への対応
    • 属人化を防ぐ
    • 専門性の確保

    それぞれについて、以下で見ていきましょう。

    業務効率化

    人事労務アウトソーシングは、人事・労務に関連する煩雑な業務を外部に委託することで、企業の業務効率を向上させることができます。具体的には、給与計算、社会保険手続き、勤怠管理などの定型業務を専門業者が一手に引き受けることで、内部リソースをより採用など戦略的な活動に集中させることが可能です。

    また、人事データのデジタル化やクラウドシステムの活用により、データアクセスの効率や正確性が向上します。

    人事部門の業務負担が減少し、従業員の満足度向上や人材管理の質の向上に直接的に貢献するでしょう。

    コスト削減

    人事労務アウトソーシングは、人事部門の人員削減やインフラ整備費用などのコスト削減にもつながります。

    専門業者に業務を委託すれば、固定費用を変動費用に転換し、必要なサービスに応じた費用のみを支払うことが可能です。この結果、効率的な予算配分が実現し、経済的負担が軽減されます。

    法令改正への対応

    労働関係法令の頻繁な改正に対応するためにも、人事労務アウトソーシングは極めて有効です。

    専門業者は最新の法令情報をリアルタイムで把握し、変更が必要な手続きや文書を速やかに、かつ正確に更新します。確実に法令順守できるようになり、法的リスクから企業を守る重要な役割を果たすでしょう。

    属人化を防ぐ

    人事労務アウトソーシングは、属人化を防ぐことにもつながります。

    知識や経験が個人に集中すると、人材が入れ替わるごとに人事労務の業務の効率性や正確性が変わってしまいます。しかし、専門業者に依頼することで、共有されたマニュアルをもとに人事労務の業務を遂行してくれるため、業務の属人化を防ぐことができます。

    専門性の確保

    外部の専門業者は、人事労務に関する深い専門知識と豊富な経験を有している場合がほとんどです。それゆえ企業内部では対応が難しいような人事労務の業務も難なく対応できるため、最新のトレンドや複雑な法律に対応した高品質なサービスを受けることができます。

    専門業者の支援を受けることで、企業内部ではカバーしにくい専門的な問題にも効果的に対応することが可能です。

    人事労務をアウトソーシングする際の注意点

    人事労務をアウトソーシングする際の注意点は、次の3つです。

    • ノウハウを社内に蓄積できない
    • 認識のずれが起きる可能性がある
    • 情報漏えいのリスクがある

    それぞれについて、以下で見ていきましょう。

    ノウハウを社内に蓄積できない

    人事労務をアウトソーシングする主なリスクの一つに、専門的なノウハウが社内に蓄積されにくい点があります。

    業務を外部の専門企業に委託すると、業務プロセスや改善点、特有のスキルを社内の知識として蓄積できません。外部への委託が長時間続くことで、社内での人事労務の業務を行う技術や能力が低下し、企業が人事労務で自律することが難しくなるでしょう。

    定期的なレビューをしたり、部分的に業務を内製化したりするなどして、社内でも人事労務の専門的なノウハウを蓄積することが必要です。業務フローのマニュアル等を外部の専門企業から共有を受けるなどが可能であれば社内にノウハウの蓄積を行うことができます。

    認識のずれが起きる可能性がある

    アウトソーシング先との認識のずれにも注意が必要です。

    外部の業者が企業文化や組織の特性を完全に理解せずにサービスを提供すると、社内の期待と実際のサービスの間にギャップが生じることがあります。例えば、労務管理の方針が業者に正確に伝わっていない場合、場合によって作業に誤りが発生するリスクが生じます。

    業務委託契約を結ぶ際には、十分なコミュニケーションと定期的なミーティングを設け、お互いの認識を一致させる努力が必須です。

    情報漏えいのリスクがある

    情報漏えいは、人事労務アウトソーシングにおける最も重大なリスクの一つです。

    人事労務の業務では、従業員の個人情報や給与情報、社内の機密情報などを取り扱います。そのような重要な情報が外部業者に渡ることで、企業側が直接管理を行うことができないため、情報漏えいの危険性が増します。

    アウトソーシング先を選定する際には、その業者の情報セキュリティ管理体制を徹底的に調査し、安全対策が適切に実施されていることを確認する必要があるでしょう。

    また、定期的なセキュリティ監査や、契約における厳密な機密保持条項の設定も欠かせません。

    人事労務のアウトソーシングを選ぶ際のポイント

    人事労務のアウトソーシングを選ぶ際のポイントは、次の4つです。

    • 任せたい業務を依頼できるか
    • 実績があるか
    • 丁寧なコミュニケーションが取れるか
    • サポートは充実しているか

    それぞれについて、以下で見ていきましょう。

    任せたい業務を依頼できるか

    人事労務アウトソーシングを検討する際、最初に確認すべきは、自社が外部に委託したい具体的な業務をアウトソーシング先がカバーしているかどうかです。

    具体的には、給与計算や採用活動、労務相談、従業員の研修などの業務が含まれているかをチェックしておいてください。特に、社会保険手続きについては社労士法人でなくては受けることができない業務のため注意が必要です。業者を選ぶ前に、自社の要求を明確にリストアップし、業者の提供サービスを照らし合わせることが重要です。

    また、将来的に業務範囲を拡大する可能性も考慮して、業者が柔軟に対応可能かどうかも確認するとよいでしょう。

    実績があるか

    アウトソーシング業者の選定に当たっては、その業者が持つ実績を確認することが重要です。特に人事労務は企業運営の根幹に関わるため、業者がこれまでに扱ったクライアントの規模や業種、提供してきたサービスの質と範囲を検討する必要があります。

    成功事例やクライアントからの推薦文、ケーススタディなどを参考にし、業者の専門性と信頼性を評価した上で選定をするべきでしょう。

    丁寧なコミュニケーションがとれるか

    人事労務のアウトソーシングでは、丁寧かつ効果的なコミュニケーションが極めて重要です。

    アウトソーシング先との間で情報の誤解が生じないよう定期的なミーティングを設定するほか、連絡手段の明確化や緊急時の対応フローが整っているかなども確認しておきましょう。

    また、業者がクライアントのニーズを正確に理解し、それに応じたカスタマイズが可能かどうかも重要なポイントです。

    サポートは充実しているか

    アウトソーシング業者の提供するサポート体制も、重要なポイントの一つです。特に人事労務の業務は、法改正などによる急な変更が頻繁にあるため、業者がそれに対応した迅速かつ的確な情報提供を行うことができるかが鍵になります。

    サポートの範囲には、法令順守のアドバイスや緊急時の問い合わせ対応、定期的な業務レビューやフィードバックの機会が含まれているとよいでしょう。これらが充実しているかどうかをチェックすることで、業者が自社の信頼できるパートナーとなり得るかを評価できます。

    まとめ

    労務業務のアウトソーシングは、定型業務を外部に委託することで注力したい業務に社内のリソースをさくことができますが、その成功は適切なパートナー選びにかかっています。

    外注先の選定に当たっては、提供サービスの範囲、実績と専門性、コミュニケーションの質、そしてサポート体制の充実度を重視するべきです。また、サービス提供業者との関係構築には、依頼する業務を明確化し、こまめなコミュニケーションをとることが不可欠です。

    適切なアウトソーシングの活用により、企業は労務管理の質を向上させつつ、経営資源をより重要な事業活動に集中させることが可能となります。

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    記事監修コメント

    アウトソーシング可能な業務を社内で継続することは、人事制度においてデメリットとなることがあります。これらの業務は個人に依存しやすく、新しい付加価値を生み出す機会が限られているため、会社の全体的な方針と矛盾することがあります。アウトソーシングすることで、スケールメリットを享受し、自社のみでの効率化の限界を超えることができます。さらに、アウトソーシングは全社的な一体感を醸成する上で役立ちます。ただし、アウトソーシングを行う際には、従事していた人材に新たな役割を与えることが重要です。アウトソーシング先の選定は、金額だけでなく、アウトソーシング先の体制や、実績、サービス範囲等を丁寧に確認する必要があります。

    社会保険労務士法人南大阪総合労務事務所(株式会社AXIAパートナー代表)
    竹内 雅史

    金融機関で新規事業に携わり、在籍中に社労士を取得。社労士事務所を経て、コンサルティング会社にて、人事・労務コンサルティングを経験。評価システム(ミライク)の開発実績有。現在は、南大阪総合労務事務所に所属しながら、株式会社AXIAパートナーを設立し、人事・労務コンサルティングをメインに、「人」に関する総合サービスを展開中。人事制度× 社労士× システムの専門性を掛け合わせ、全体最適を目指します。IPOや労務監査(DD)、人事制度の実績も多数あり、親身な対応が評価されています。