時差出勤制度とは?メリットデメリットと5つの実践例を紹介
ITを活用して遠隔地、つまり従業員が在宅や客先のように会社にいなくても仕事ができるテレワークを、従業員の負担軽減、会社の生産性向上など、さまざまな理由で導入を考えている、あるいは少しずつ導入しはじめている企業も少なくないことでしょう。
しかし、これまでと違う勤務形態であり、なかなか導入が進まないという壁にぶつかることがあります。そこで一緒に考えたいのが時差出勤制度。制度の内容とテレワークを意識した取り入れ方について解説していきます。
目次
時差出勤制度とその目的
テレワークなど、ワークスタイルの見直しを進める企業の中でも、導入事例が多い制度に「時差出勤制度」があります。制度の内容や目的について詳しくみていきましょう。
時差出勤制度って何?
時差出勤とは、始業時間をずらした出勤方法のことで、従業員は会社であらかじめ定められた範囲の時間で自由に出社時間を決められる制度です。出社時間が変更されるだけであるため、従業員の勤務時間には影響しません。
例えば時差出勤制度を取り入れている会社で、8~10時の間に出社という規定があり、休憩を含む8時間勤務だった場合で考えてみましょう。8時から出社の場合は16時に退社、10時から出社の場合は18時に退社という形になります。主に通勤ラッシュの緩和、ラッシュ時の従業員のストレスの軽減を目的とした取り組みです。
フレックスタイム制度との違いは?
時差出勤制度のように時間をずらして勤務する方法として、フレックスタイム制度をイメージした方も少なくないでしょう。しかし、時差出勤制度はフレックスタイム制度とは全く異なるものです。
なぜならば、時差出勤制度はあくまでも勤務時間をいくつかあるパターンから選べるものであり、働く時間の長さは従来の会社の規則と変わらないためです。
フレックスタイム制度は、月間の総労働時間から算出した労働時間分働く必要はありますが、一日の実働時間までは決まっていません。始業時間だけでなく、総勤務時間そのものも変更できるフレックスタイム制度は、時差出勤制度とは似ているようでまったくの別物なのです。
時差出勤導入のメリットとデメリット
ここまで時差出勤制度について紹介してきましたが、導入によってどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。時差出勤制度利用の前に考えるべき利点と問題点について考えてみましょう。
時差出勤制度導入のメリット
時差出勤制度による大きなメリットは、通勤ラッシュの緩和を期待できることです。学生や会社員などが多く出勤する時間帯は、人が多くストレスを抱える人も少なくありません。満員電車のような寿司詰め状態なら尚更でしょう。
時差出勤制度を利用すれば、そうした通勤ラッシュを避けることもでき、従業員は朝からストレスに悩む必要もなくなります。朝の深刻なストレスが軽減される分、仕事にも力が入りやすいというものです。会社全体で見れば、社員ひとり一人のストレス軽減によって、多少の生産性アップも期待できるでしょう。
さらに、時差出勤制度は従業員の生活スタイルにも寄り添えるメリットがあります。子育て中の社員なら、保育園の送迎などで働く時間を変更したいという声も少なくありません。フレックスタイム制度ほどではないにせよ、社員の家事と育児の両立に取り組んでいる企業として会社はイメージアップを図ることができます。
デメリット
一方で、時差出勤制度にはいくつかの問題点もあります。まず、会社側は全面的に時差出勤を認め改革していく必要があることです。机上の空論を行っただけで、現場の状況を考えずに導入してしまえば、ただ制度があるだけで活用されない可能性もあります。
顧客対応が絡むような仕事の場合は、取り入れるために社内での共有を徹底する、あるいは社内で行う必要がある打ち合わせにパソコンなどを活用し、外部でもできるようにするなどの環境の改善が必要です。
また、時差出勤制度には出社時間が変更できても残業が多く、退社時間が活かせないのではという懸念もあります。いかに従業員の勤務時間を会社側の改革で調整していけるかも課題でしょう。
ほかにも、そもそも時差出勤制度の目的でもある、通勤ラッシュでのストレス軽減にはならないのではという声も少なくありません。混雑時間がずれるだけという社員からの不満を解消するためには、設定する時間についても現状を鑑みて決定していく必要があります。
このように、時差出勤制度はメリットも大きい反面、会社側で解決していくべき課題も多い制度ですので、会社側で改革するべきことをいかに見出し、実行していけるかが時差出勤制度成功のカギとなるでしょう。
時差出勤導入の企業例
時差出勤制度には、メリットもある反面、課題も多いと紹介しました。課題を取り除くには、すでに時差出勤制度を導入している企業が良い例です。時差出勤制度をうまく取り入れている企業の例をいくつか見ていきましょう。
テレワークなどバリエーションを増やす例
テレワーク導入を推進する企業では、日にちを決めて、テレワーク、時差出勤、休暇取得のいずれかを選択できるようにしている例があります。個々の状況に合わせて選択できるのが大きなポイント。テレワークを導入したいと思っていてもなかなか活用されない状況での、ひとつの解決策です。
事前申告制で取り入れた例
時差出勤制度の課題のひとつに、打ち合わせの時間を設けられない、顧客との調整があるという問題があります。そうした問題の解決方法のひとつに考えられるのが事前申告制です。業種によっては事前申告なしでも成功している企業はありますが、あえて事前申告の形をとることで、勤務時間を仲間に周知させるという方法です。
期間限定で取り入れる例
業種などによっては、ある時期に集中して仕事が忙しくなる場合もあります。そうした仕事が忙しい時期では残業も考えられ、時差出勤がうまく活用されない可能性もあるでしょう。企業によっては、1年のうち2カ月など期間を決めて時差出勤を取り入れているケースもあります。
終業時間を固定する例
時差出勤には、残業によって終業時間にバリエーションを持たせても意味がないのではという懸念があります。そうした懸念を払拭するために、5つほど時差出勤の時間を設け、1番早い時間での出勤のみ終業時間を固定して残業させないのも取り組みのひとつです。
制度以外の企業側の努力
ここまで紹介してきたように企業によって、時差出勤制度の導入にはさまざまなスタイルがあることが分かります。こうした制度の取り入れ方も参考になりますが、制度導入以外の部分で推進努力を図る企業も少なくありません。
例えば、早朝に出勤した者にはカフェテリアで朝食を提供したり、朝に数量限定でコーヒーを提供したり、制度以外の部分で工夫をするのも成功の秘訣です。
また、テレワーク研修や働き方改革研修などを実施するなどして、管理職の方を始め社内の一人ひとりが時差出勤制度の意義や課題などを認識しておくことも重要です。
時差出勤以外の企業の実例
ここまで、時差出勤制度の実例を紹介してきましたが、在宅やサテライトオフィス、カフェを利用した勤務など、働き方のバリエーションは増えてきています。その中でも、東急リバブルは、不動産業界では珍しく柔軟な働き方を積極的に採用している企業で、2016年6月からテレワークの導入を開始しており、サテライトオフィスの整備も検討しているようです。新しい働き方の改革となるかもしれません。
まとめ
時差出勤制度は、単体で考えるだけでなく、テレワーク導入の足掛かりにもなる制度です。テレワークをうまく導入してみたいと考えるなら、時差出勤制度との併用も考えて展開するのも方法のひとつでしょう。ただし、時差出勤制度には課題も多いので、会社の状況とも照らし合わせ、事例を参考に導入することをおすすめします。
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