1on1の目的は?部下への伝え方や準備のポイントも解説

社内のコミュニケーションの一環として1on1を導入する企業が増えています。1on1は部下が主体となる点で従来の「面談」とは大きく異なり、人材の育成や組織のパフォーマンス向上などを目的に実施されます。

本記事では、1on1の目的や導入のメリット、具体的な進め方を解説します。ぜひ参考にしてみてください。

1on1とは


1on1とはマネジメント手法の1つで、上司と部下が1対1でミーティングすることです。「1on1ミーティング」と呼ばれることもあり、主に以下のようなテーマで話し合います。

  • 組織目標や個人目標の達成度合いや課題
  • 仕事上の悩み事
  • 健康面について
  • キャリア形成についての希望や悩み
  • プライベートで抱えている困りごと

所要時間は20分前後の短時間で行われるのが一般的です。実施頻度は週1回や月2回など、サイクルを決めて定期的に実施します。

1on1を行う目的は?なぜ行う必要がある?

1on1を行う目的は、以下の2点があげられます。

  • 部下の悩みを解消し成長を促進する
  • 組織全体のパフォーマンスを向上させる

1on1には明確な目的があり、従来の「面談」とは目指すべきゴールが異なります。

①部下の悩みを解消し成長を促進する

従来職場で行われてきた面談は、部下の業績評価や仕事の進行管理が主な目的でした。面談は上司主導で行われ、コミュニケーションが一方的なものになりがちでした。

1on1は双方向のコミュニケーションを基本とし、部下が主役です。部下が悩んでいることや今後のキャリアの希望を上司へ伝え、それに対し上司はフィードバックします。上司が部下の考えを整理し適切にフィードバックすることで、部下が今後の方向性を見出したり、モチベーションを高めたりすることを支援します。

こうした取り組みを継続的に行うことで、上司と部下の関係性ができあがるとともに、部下は自分自身の悩みを解消し、ステップアップしていけます。

②組織全体のパフォーマンスを向上させる

1on1の実施によって上司と部下の間に信頼関係が生まれると、結果として組織全体の生産性向上につながります。さらに、上司と部下の信頼関係は、部下のエンゲージメントの向上に寄与します。

エンゲージメントの高い社員が多い組織は、たとえ組織にとって危機的状況が発生しても、チームワークによって適切に問題を解決していくことができます。チームワークの良い職場は雰囲気も明るく、社員の離職率も低い傾向があります。

将来的には、部下が上司となって組織をマネジメントしていくことになりますが、部下として1on1を受けた経験が引き継がれていくことになります。結果として人材育成に良い循環が生まれ、組織力の向上が期待できます。

1on1のメリット|心理的安全性を作れるって本当?

1on1を行うメリットは、主に以下の4つがあります。

  • 上司と部下の信頼関係が構築できる
  • 部下のモチベーションを上げられる
  • 仕事の進捗を確認できる
  • 離職率の低下につながる

信頼関係の構築のみならず、離職率低下にもつながります。

①上司と部下の信頼関係が構築できる

メリットの1つとして、信頼関係の構築があげられます。近年、若年層の社員が急に退職するケースが増えていますが、退職の背景にあるのが職場におけるコミュニケーション不足です。仕事の悩みや困りごとを気軽に相談できないまま1人で抱え続け、退職に至ってしまうというケースです。

継続的に1on1を実施することで、上司と部下の信頼関係が築かれ、仕事やプライベートの悩みをいつでも相談できる環境が整います。悩み事がある場合には対話を重ねて一緒に問題解決にあたることで、さらに信頼関係を深めていけるでしょう。

②部下のモチベーションを上げられる

1on1によって上司と部下のコミュニケーションが円滑になると、上司は部下のちょっとした努力や成長にも目を向けられるようになります。自分の頑張りや成長が上司の目に留まり適切に評価されれば、部下のモチベーションは向上していきます。

また、1on1を通して上司は部下の特性や今後のキャリアプランについて深く知ることができます。その結果、部下の関心や要望に合った業務やプロジェクトへのアサインが可能になり、部下は高いモチベーションで仕事に取り組めます。部下一人ひとりに合った業務の割り振りが組織全体のモチベーションや生産性向上につながります。

③仕事の進捗を確認できる

仕事の進み具合を具体的に把握できることもメリットの1つです。1on1の実施によって時間が奪われると感じる上司もいるかもしれません。しかし、部下との対話を通じて仕事の進捗を正確に把握することでトラブルを未然に防いだり、遅れが生じている業務について迅速にサポートしたりということができるようになります。

その結果、1on1を実施しない場合よりもスムーズな業務の遂行が可能になります。仕事の進捗を把握する方法は他にもありますが、あえて1対1の場を設けることで、トラブルの発生などネガティブな情報もいち早くキャッチできる可能性が高まります。

④離職率の低下につながる

1on1の実施は上司と部下の関係性を強固なものにし、エンゲージメント向上や離職率低下につながります。継続的な実施により、上司は部下の悩みや特性を詳細に把握でき、面談しなければ気付けなかったポイントまで深く知ることができます。

その結果、上司のフォローが必要な場面で迅速に手を差し伸べることが可能になり、部下が問題を1人で抱え込んで退職を考える前に引き留められます。また、部下は上司が必要なときに適切にフォローしてくれることで安心感を抱き、信頼関係がより強固なものになっていきます。

「やめてほしい」と思われないために意識したい1on1のポイント

さまざまなメリットがある1on1ですが、以下の点に注意して実施する必要があります。

  • 1on1のテーマは部下が決める
  • 雑談だけで終わらないようにする
  • ツールを活用して効率化する
  • 効果が出るまで時間がかかることを理解しておく

①1on1のテーマは部下が決める

テーマを上司が決めてしまうと部下は受け身の態勢になってしまい、コミュニケーションが一方通行になりがちです。1on1の良さは、部下が主体となるところにあります。そのため、テーマは部下主導で決めるようにしましょう。

テーマは仕事に関することだけでなく、プライベートの悩みなど何でも構いません。ただし、部下がテーマを提案する前に実施目的を伝えておくことがポイントです。「何でも話したいことを話して」と伝えると漠然とし過ぎて悩んでしまう部下も多いでしょう。ある程度上司が方向性を示すことで1on1がより効果的なものになります。

②雑談だけで終わらないようにする

1on1は部下がテーマを決め部下が主体となることから、ともすると雑談だけに終始してしまう場合があります。しかし、業務の時間を削って実施するからには、部下の学びや成長につながる建設的な対話を目指さなければなりません。

上司のマネジメント経験不足な場合や、部下が目的を理解していない場合に雑談で終わってしまうケースが多くみられます。回避する方法としては、上司と部下が1on1の目的を共有し、テーマを絞って実施することが効果的です。また、上司は提案されたテーマについて何を話すかシミュレーションしておくと良いでしょう。

③ツールを活用して効率化する

「1on1を導入したものの、上司の業務負荷が高く継続できなかった」というケースが多くあります。1on1を効果的なものにするためには、継続的な実施が不可欠です。

ツールを導入すれば、スケジュール管理やテーマの設定、議事録の作成などに要する手間を大幅に削減できます。さまざまな企業から1on1ツールが提供されており、人事業務全体をサポートできるものから、1on1の実施のみに特化したものまで多様なサービスが用意されています。

ツールを導入する際は導入目的を明確にし、目的を達成するために最適なツールを選ぶようにしましょう。

④効果が出るまで時間がかかることを理解しておく

効果的に1on1を実施するには、上司と部下の間に信頼関係が必要です。しかし、信頼関係は一朝一夕に築けるものではなく、一定の時間を要します。1対1のスタイルに慣れていないと、お互いに緊張して思うように進行しないこともあるでしょう。

また、1on1は実施の都度テーマが変わるため、効果測定しにくい側面がありますが、だからといって上司がテーマを設定してしまうと部下主体ではなくなってしまいます。導入したばかりの時期には実施効果を得ることよりも部下との関係構築に主眼をおいて焦らずに進めましょう。

失敗しない1on1の進め方4ステップ

1on1は、以下の4つのステップで進めると効果的です。

  • 導入する目的を部下に共有する
  • 上司・部下ともに準備を行う
  • 1on1を行う
  • 振り返りをして次につなげる

上司と部下が方向性を共有することが大切です。

①導入する目的を部下に共有する

1on1を効果的なものにするには、部下が主体的に取り組むことが大切です。そのためには、部下に目的を理解してもらう必要があります。なかには、上司との1対1の面談に身構えてしまったり、抵抗感を抱いたりする部下もいるでしょう。部下を評価する目的で行う面談ではないことがきちんと伝わるように丁寧な説明が求められます。

1on1の目的を社内で浸透させるには、経営陣から社員に対して説明の場を設けるのも効果的です。会社の方向性と1on1がどのように関連するのか、具体的にどのような効果が期待されるのか経営陣が自ら発言することがポイントです。

②上司・部下ともに準備を行う

一般的に1on1は20分前後の短い時間で実施します。実施するタイミングも業務の合間を縫って行われることが多いため、事前準備が大切になります。

部下はテーマを決めて上司へ提案します。テーマは仕事のことやプライベートに関することなど幅広く設定可能ですが、1回のミーティングで取り扱うテーマは1つあるいは2つまでに絞ると良いでしょう。

上司は部下から提案されたテーマについてどのような話をするか方向性を決めておきます。たとえ同じテーマであっても、部下の特性に合わせて話し方を工夫するとより効果的です。

③1on1を行う

基本的には、上司が部下の話を聞くスタイルで進行します。部下が話したくなるように傾聴の姿勢で臨むことが大切です。傾聴とは、相手の話に耳だけではなく目や心も集中させてしっかり「聴く」ことです。上司が自分の話にしっかり耳を傾けていることが分かれば、なかなか言い出せなかった本音を引き出すことにもつながるでしょう。

また、1on1は継続して実施するため、次回につながるように部下の話は適宜メモに残すようにしましょう。実施後にメモを記録として整理し、できれば上司と部下が確認できる状態にしておくことがおすすめです。

④振り返りをして次につなげる

1on1の最後に今後の方向性の話し合いや振り返りをしましょう。ミーティングのなかで部下から仕事に関する具体的な悩みの相談が合った場合は、解決に向けた具体的な行動プランを話し合うことも効果的です。

行動プランは長期的なものではなく、次回の1on1までに実行に移せる内容にするのがポイントです。また、行動プランはできるだけ部下が主体となって決めるようにしましょう。

そして、ミーティングの最後に次回までに実行することを確認して1on1を終了します。もし時間に余裕がある場合は、次回のテーマも設定できると効率的でしょう。

1on1で話すことがないときに参考にしたいテーマ例

1on1に関する悩みで多いのが「毎回話すことがない」「何を話したら良いのか分からない」というものです。おすすめのテーマは以下の4つです。

  • 仕事の進捗状況や悩み
  • プライベートの悩みや困りごと
  • 心身の健康について
  • キャリアプランについて

まずは仕事の進捗状況や悩みについて何でも話し合える関係性を築くことが大切です。ときにはプライベートな話題にも触れ、相互理解を深めるようにしましょう。

また、部下の心身の状態を把握することも上司の仕事の1つです。部下から具体的な話がなくても、態度や仕草などから変化に気付けるようになるのが理想です。キャリアプランについては上司の体験を交えたアドバイスができると1on1がより充実したものになるでしょう。

実際に1on1を導入した企業の成功事例

ヤフージャパンを運営するヤフー株式会社(現・LINEヤフー株式会社)では、2012年に人材戦略の一環として1on1を導入しました。上司と部下が週に1度、30分間対話する形式で、主なテーマは仕事を通した経験学習、さらに将来のキャリアプランやキャリアプランを実現するために必要な行動についてです。

導入当初は社内で強い反対があったものの、1on1の導入によって個々の特性を活かしたチーム設計が可能になったり、社内のコミュニケーションが活性化したりと、大きな効果をもたらしました。

まとめ

1on1は部下の成長促進や組織のパフォーマンス向上に大きな効果をもたらします。一方で、実行する際の業務負荷がネックになるケースが多くあります。
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