360度評価の評価項目とは?項目例や目的・メリット・デメリットを解説

近年、職場の社員評価として注目されている360度評価をご存知でしょうか。上司が行う人事評価とは異なり、社内のさまざまな立場の人に評価を依頼するのが特徴の評価手法です。しかし初めて導入する場合は、評価基準などを構築する段階で迷うことも多いですよね。この記事では360度評価を導入する際の流れや、評価項目作成のポイントについてお伝えします。トヨタ自動車など大手企業の導入事例もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

360度評価とは

360度評価とは、社員と仕事上で関わるさまざまな立場の人が評価を行う評価制度です。上司が行う人事評価よりも客観性と公平性があるのが特徴。あらゆる角度から対象者を評価するため、多面評価と呼ばれることもあります。360度評価は同僚や部下のほか、社外の取引先の声を参考にするケースも。国内では企業全体の31.4%が360度評価を導入しているというデータがあります。「今後も継続して実施していきたい」「今後、実施してみたい」という企業を合わせると、50.4%と半数以上の企業が導入を検討している注目の評価方法です。

参照:「360度評価活用における実態調査」株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

360度評価の目的

360度評価の導入が増えつつある背景には、昨今の働き方改革があります。年功序列制度から成果主義へ移行しつつある現代、360度評価を行う目的は主に2つです。まず1つ目は管理職の負担軽減。人員削減や人材不足によって、管理職の業務の過剰負担が問題になっています。360度評価は社員同士で評価しあうシステムですので、人事評価を行う管理職の負担軽減につながります。

導入目的の2つ目は、社員の人材育成やモチベーションアップが図れることです。360度評価はあらゆる方面の人から評価されるため、公平かつ客観性が保たれます。評価される側にとっても納得しやすい内容となる傾向があります。

【役職別】360度評価の評価項目例

では具体的に、360度評価とはどのような評価項目を作成すれば良いのでしょうか? ここで重要なのが、評価は「一般職」と「管理職」でそれぞれ作成するという点。なぜ別々にするのかというと、役職や職位によって仕事における役割や課題が異なるためです。具体的にどういった評価項目を作成すればいいのかを、一般職・管理職とそれぞれ詳しく解説します。

管理職の評価項目例

管理職における評価項目は、マネジメント能力を中心に組み立てましょう。評価すべきポイントは大きく分類して3つあります。1つ目は「業務遂行・目標課題達成能力」です。部署の目標に向かって業務を遂行しているか、トラブルが起きたときの対処を速やかに行っているかなどを評価項目とします。

2つ目は「リーダーシップ能力」。自分の部署をまとめ率いる能力はあるか、部署の目標をチームとして共有できているかといった点に重点を置きます。そして3つ目が「人材育成能力」です。部署のメンバーの個別指導ができているか、定期的にメンバーの良いところや改善点を共有しているかといった点を評価項目として作成します。管理職の評価項目と設問サンプルは以下のようになります。

評価基準評価内容
業務遂行部署の目標達成に関する情報収集・提供を怠っていないか
リーダーシップ先頭に立って部署を率い、周囲のやる気も起こしているか
人材育成仕事が成功したときだけでなく普段から良いところを褒めているか

一般職の評価項目例

続いて一般職の評価項目例ですが、重点を置くのは「仕事への責任感」と「仕事に対する思考能力」の主に2つです。「仕事への責任感」とは、トラブルがあった場合に最後まで業務を遂行できるか、人のせいにして責任逃れをしていないかなどの項目となります。「仕事に対する思考能力」とは新しいアイデアを積極的に提案しているか、周囲のアドバイスを素直に受け入れているかなどの項目が該当します。

評価基準評価内容
仕事への責任感部署の目標達成に関する情報収集・提供を怠っていないか
思考能力仕事に対して常に創意工夫を施しているか
思考能力トラブルや課題を解決する道筋を組み立てられるか

360度評価実施の流れ

実際に360度評価を導入する場合、どのような流れになるのかを解説します。

1.360度評価の実施目的を明確にする
2.評価基準と評価項目を設定・作成し、評価者を選定する
3.360度評価を実施した後にフィードバックを行う

360度評価の実施目的は、「人事評価を公平に行うため」と「社員の育成とモチベーションアップ」の2つがあります。どちらを重視するかはその会社によって異なります。目的が曖昧になると評価者の主観が入りがちになりますので、明確にすることが大切です。どちらの場合も人材育成の視点は忘れないよう心がけてください。

目的を明確にしたら、「一般職用」と「管理職用」それぞれの評価基準と評価項目を作成します。評価項目や回答基準を設定する際には、回答内容を見て誰が評価したものかバレることのないよう注意してください。作成が終わったら評価者へ配布して記入してもらいます。初めて評価を記入する社員へは、できれば研修を行うのが望ましいでしょう。360度評価を実施する目的や意義などを学んでもらうことで、評価者の主観を排除しやすくなります。

360度評価は「評価してからが始まり」といえるほど、集計後の展開が重要。評価結果をフィードバックとして対象者へ伝えましょう。繰り返しになりますが、360度評価の根本は人材育成です。自身の長所や改善点を客観的に見ることで社員の意識も変わるでしょう。各部署のリーダーとも評価内容を共有して、社員一人一人の育成に役立ててください。

360度評価の評価項目設定のポイント

360度評価は、評価する側にとっても手間のかかる作業です。なるべく短い時間で効率的に回答できるよう作成しなければなりません。評価項目設定時のポイントについてご説明します。

設問数を調整する

評価項目の設問数の目安は20~30問、回答時間は15分以内が目安です。なるべくたくさんのデータを集めたいところですが、あまりに設問が多すぎると評価者の負担となります。

回答基準は5段階評価にする

評価項目の回答基準は5段階評価がわかりやすいでしょう。「非常に当てはまる」・「当てはまる」・「どちらともいえない」・「あまりあてはまらない」・「全く当てはまらない」の5つです。しかし、「どちらともいえない」を設定すると、中央値(どちらともいえない)に回答が集中してしまう「中心化傾向」が強くなる可能性も考えられます。

「どちらともいえない」を排除した4段階評価もありますが、実際に仕事上の関わりがないと評価するのが難しい場合も。5段階評価にしておいて、「どちらともいえない(評価不可)」や「わからない」のように表記を変える方法もあります。

選択式と自由記述式どちらも設問に加える

評価の回答は5段階評価の選択式に加えて、自由記述式も何問か用意しておくのがおすすめです。選択式の回答欄の下にコメント欄を設置して記入してもらいましょう。自由記述式はすべての評価項目に入れるのではなく、コメントを入れて補足するのが望ましい項目にだけ設置します。30問中、2~3問くらいの割合にすると評価者の負担になりません。

360度評価の導入事例


実際に360度評価を導入している企業の例を見てみましょう。今回はトヨタ自動車とテルモの導入事例と、その成果についてご紹介します。

・トヨタ自動車
トヨタ自動車が360度評価を実施したのは、上司からのパワハラで自殺した社員の事件が背景にあります。二度と同じことを繰り返さないようにと、社長自らが考えて実施したのが360度評価の導入です。

トヨタ自動車には関連企業を含めると、課長級以上の管理職が1万人ほどいます。2020年、この1万人を対象に360度評価を実践しました。1人の管理職に対して、上司や部下・他部署の社員のほか社外の取引先など十数人から評価の聞き取りを実施。評価基準は業務能力以外の「人間力」に重点を置いた設問に改めています。適性のない人物は昇格の見送りや管理職から外されることになりましたが、実際に該当するケースが出たということです。

・テルモ
2011年から360度評価を実施している大手医療機器メーカー・テルモ。直接の人事評価に結び付けるのではなく、社内の業務やコミュニケーションの潤滑化に重きを置いたものになっています。評価内容は社内で公表されており、誰でも閲覧可能です。半年以上、一緒に仕事をした人を対象者が指名して評価してもらうシステムとなっています。

「やってほしいこと」と「やってほしくないこと」というコメントが記入できる設問を2つ設置。「上司に意見できる場は貴重」「職場全体の雰囲気が明るくなった」といった社員の意見が聞かれるようになりました。

360度評価のメリット

360度評価を導入するメリットとして、主に以下のような点があげられます。

【360度評価のメリット】
・上司の主観を排除した客観的な評価が期待できる
上司が行う人事評価の場合は主観的評価が入りがちで、一人ひとりに目が行き届いていないケースが否めません。360度評価はさまざまな部署や職位の人から評価してもらうことで、評価される側も納得しやすい内容となるでしょう。また、社員が自分では気づかなかった長所や改善点に気付くことで、モチベーションアップも期待できます。

・評価者となることで会社の方針が浸透しやすい
ほかの社員を評価する側になると、自然と判断基準が会社視点になります。自身の業務を客観的に見られるようになり、評価する側もされる側も「気付き」が多くなるでしょう。

・評価される側が責任感を持つようになる
上司にさえ気に入ってもらえれば良い、という考えは通用しなくなります。誰のどんな業務に対しても、責任を持ち続ける必要があるため社員の意識改革につながります。

360度評価のデメリット

360度評価を導入した場合のデメリットとして考えられるのは、主に以下のような点です。

【360度評価のデメリット】
・業務以外の感情(好き嫌い)で評価される恐れがある
業務についての評価を、好き嫌いという主観的な判断で行われる可能性があります。

・部下からの評価を良くするため、上司が部下に指導しなくなる
360度評価の結果が報酬決定に影響する場合、部下からの評価が良くなるよう上司が指導を怠るかもしれません。

・社員同士が口裏を合わせて本来の評価ができなくなる
お互いの評価が悪くならないよう社員同士が話し合って評価しあい、適切な評価結果が出ない場合があります。

・評価制度の構築や運用・評価後の集計など工程が多く手間がかかる
360度評価を実施するのに工数がかかる点もデメリットです。アンケートシート、もしくはExcelで管理・集計する流れが一般的ですが、工程が多く手間がかかります。

360度評価は正しく運用すればメリットがありますが、上記のようなリスクがあることは注意しておきたいところです。特に初めて人事評価制度を導入する企業の場合、360度評価は運用上のハードルが高いかもしれません。

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まとめ

360度評価は、社内のさまざまな職位の人から評価してもらうという画期的な制度ですが、安易に導入するのは危険です。メリットとデメリットを踏まえ、自社が抱えている課題や目的と合致しているかを考えた上で導入を検討しましょう。