人事評価制度に対する不満の原因と対処法|不満を放置するリスクも解説

「評価方法に不満がある」「人事評価に納得がいかない」など、人事評価制度に対して社員の不満は尽きないもの…。しかし少しでもその不満を軽減し、企業側も、評価される従業員側も納得できるような評価制度を作りたいですよね。そこで今回は、人事評価制度に対する代表的な不満や適切な改善方法について詳しく説明していきます。

人事評価制度に対する不満の原因

日経BPコンサルティングによる「人事評価制度」に関する意識調査によると、社員の約6割が制度に対して不満を持っていることがわかりました。つまり大多数の社員が、人事評価制度に満足していないということです。特に「評価基準が不明確である」「評価者によって評価にばらつきがあり、不公平に感じる」という社員が多く、不満の原因は「人事評価制度そのもの」に対する不満と「評価者に対するもの」に分かれているようです。

評価基準が明確でない

人事評価制度に不満を感じる理由として、約6割が「評価基準が明確でない」と回答しています。成績で評価されるのか、あるいは貢献度合いで評価されるのかなど、評価基準が不明確だと従業員はどこに力を注げばよいのかわからなくなってしまいます。

また企業によってはそもそもの評価基準があいまいで、方法がしっかりと定まっていないケースも。こういった場合だと評価する側も困惑してしまい、目につく部分でしか判断ができないため、裏で努力している社員の評価がおろそかになってしまいます。

評価に偏りがある

「定量的な成果だけが評価され、努力の過程は考慮してもらえない」「どれだけ成果を出しても、年功序列が優先されてしまう」など、評価の指標が一部に偏ってしまうと社員から不満の声が上がりやすくなります。たとえ明確な評価基準があったとしても、指標のバランスが悪いと社員の納得度は下がってしまいます。

日本でもバブル崩壊とともに、能力やスキルを評価する成果主義が多くの企業で導入されるようになりました。成果主義は目に見える形を評価できる点で評価のしやすさはありますが、問題は目に見える成果でなければ評価されないことです。

つまり会社の重視するスキルがないとみなされた場合や短期的に成果が上がらない場合は、いくら頑張っても評価にはつながらないという印象を与えてしまうことになります。実際の頑張りと評価が連動しないと感じると、社員は不満をつのらせてしまうでしょう。

評価が昇給・昇格につながらない

人事評価制度と等級制度・報酬制度がうまく連携できていない場合も、社員の不満につながる原因の1つ。人事評価制度で「このような能力・行動が高く評価される」という指標が明確でないと、社員の処遇に対する納得度は下がってしまいます。「どうして昇給・昇格につながらないのか」「評価されているのに、なぜ給与・役職が上がらないのか」と不満がつのると、結果的に社員のモチベーションが下がってしまいます。

評価者に対して不満がある

人事評価は人が人を評価するので、評価される側が評価する側に不満を抱いてしまうこともありえます。特に評価者は客観的な視点で判断することが難しく、どうしても主観が入ってしまって評価にばらつきが出てしまうことも。評価者によって結果に違いが出てしまう「評価エラー(評定誤差)」がおきると、社員は評価が公平に行われていないと感じてしまいます。

人事評価制度そのものの見直しや評価者に対する訓練がおろそかになると、「ハロー効果(一部の項目に引っ張られてほかの項目も高く評価してしまう)」や「寛大化傾向(嫌われたくないあまり、どの社員にも高評価をつけてしまう)」などの評価者によるエラーが生じてしまいます。評価エラーは上司と部下、同僚や部署内の人間関係にも深く関わってくるため注意が必要です。

また評価者自身も、自信をもって自分の評価が適切であると言いきれない人が多いそう。部下やメンバーを評価する立場にある人を対象に「自分が適切に評価を行えていると思いますか」と質問したところ、8割近くの人が適切だと回答はしているものの、はっきりと「そう思う」と答えることができたのは2割未満でした。評価する側も、毎回どう評価するべきなのか悩んでいるようです。

フィードバックが十分でない

フィードバックが十分でないことも社員の不満につながります。会社によっては評価をして終わるところもありますが、フィードバックがないとなぜこのような評価になったのか社員に伝わりません。

たとえ評価基準が明確であったとしても、仕事内容によって評価に差は生まれます。評価後に何もフォローがないと社員は自分自身の評価がはっきりと見えないため、努力の方向性が分からなくなる可能性があります。評価に対するフィードバックがあれば、社員は次にどういった点を改善すれば良いのか明確になります。

また上司と部下の間で目標のすり合わせができずに不本意な評価がつくと、お互いの信頼関係にヒビが入る可能性も…。フィードバックなしで提出された評価が自分の想定していた評価よりもずっと低ければ、「なぜそんな評価をつける前に伝えてくれないんだ」と部下が憤ることもありえます。丁寧なフィードバックは、社員のモチベーション向上につながるのです。

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人事評価制度に対する不満を放置するリスク

人事評価制度に対する不満は常々あるものですが、見直しもせずに従来どおりの制度で運用し続けるのは危険です。制度に不満をもつ社員の離職や不服申し立てなどの事態が発生する可能性があるからです。

特に人事評価制度の不満から社員のモチベーションが低下すると、コア人材の離職希望が増える傾向にあります。採用から育成段階まで多くの時間・コストを投入してきた社員の退職は、企業にとって大きな痛手です。コア人材であれば、ダメージはより大きなものになるでしょう。

また不当に低い評価を受けている社員などから、人事評価に対する不服申し立てがなされた例もあります。特に人事評価によって降格がなされるようなケースは、トラブルに発展することが多々あるようです。過去の判例では、不当な人事評価に対して不法行為が認められたケースも存在します。

人事評価制度の目的

社員の不満を減らすためにも、人事評価制度はどのような目的に沿って運用していけば良いのでしょか? 人事評価は本来、各社員の業績・能力などを客観的な指標によって評価して昇給・昇格に反映させるもの。また企業が期待する人材像や、企業の目指す未来を明らかにする役割もあります。組織の期待を明示することで人事評価制度が指針となり、従業員の能力発揮を促します。

また人事評価制度を組織目標と連鎖させると、各々の業務が組織にどのように&どの部分で貢献できるのかが明確になります。従業員が自身の業務の意味を理解することで、目的意識を持って業務に取り組むことができるようになるのです。結果的に従業員自らが目標達成に向けて意欲的に励むようになり、企業成長や業績の向上につながります。

さらに人事評価制度における目標と従業員の現状(スキルや能力)の差を明らかにすることは、人材育成にもプラスに。評価後に適切なフィードバックをすることで、従業員の意欲形成やキャリアプラン形成に役に立つ場合もあります。

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人事評価制度に対する不満の対処法

では人事評価制度に対する不満を解消するためには、何をすれば良いのでしょうか? 評価項目の見直し方や社員とのコミュニケーションの取り方など、詳しく説明します。

企業の体制に評価制度が合っているか確認する

まずは、企業の体制に評価制度が合っているか確認することから始めましょう。「評価制度自体が古くなっていないか」「業務と評価制度の相性は悪くないか」など、会社の企業理念や目標に基づいて細部まで確認しておく必要があります。

その際、運用面でも問題はないのかも併せて確認しておく必要があります。特に評価に対して丁寧なフィードバックが行われているかどうか、注意してチェックしておいてください。良し悪しだけを示すような評価では、これから先どのように動いて良いか明確でないのでフラストレーションだけが溜まることになります。

また評価が低くなってしまった社員に対しては、意欲を取り戻せるような具体的かつ丁寧なアドバイスができているか確認しましょう。フィードバックを十分に行うことは「今後どうすれば目標を達成できるのか」「どうすれば効率の良い仕事ができるのか」など、社員に気づきを与えることができます。

評価基準を明確にする

社員が人事評価で最も不満を感じているのは「評価が明確でない」ことです。曖昧さを拭うためには、人事評価の基準や評価ポイント・会社の方針・評価項目の妥当性などを説明会などで社員に対して公開するのが良いでしょう。

またその場で実際の評価と自己評価との間で生まれる差に対して、原因なども合わせて周知することができれば不満が出ることも減っていきます。社員が評価基準と自己評価との乖離を理解することで、目標や向かっていくべき方向性が明確に。結果、社員のモチベーションアップや生産性向上につながります。

評価項目をアップデートする

続いて評価項目を最適な形にアップデートしましょう。基本的には「能力評価」「業績評価」「情意評価」の3項目を軸に評価項目を設けますが、職種や業務内容・勤務年数・スキルレベルに合わせて適宜項目を調整する工夫も必要です。

例えば新入社員などスキルがあまり身についていない人に対しては、業績評価よりも情意評価の項目を増やすのがおすすめ。反対に管理職は情意評価よりも業績評価の項目を増やすといった方法をとりましょう。社員一人ひとりに合わせた評価項目を設定することによって、評価に対するある程度の公平感や納得感が生まれます。

評価者の教育を行う

評価に対する不満やフィードバックに対する不満は評価者によるところが大きいため、評価する側の教育が重要となってきます。できるかぎり客観的で公平な評価を行うために、評価者訓練を実施しましょう。評価者訓練とは評価者自身が人事評価制度や評価方法、評価基準などに対する理解を深めるもの。評価スキルを向上させるために行うトレーニング・演習で、効果的に評価者訓練を実施することができれば評価エラーや誤差を少なくできるだけでなく、評価に対する社員の納得性を高めることにもつながります。

社員とコミュニケーションを取る

社員とのコミュニケーションの場を定期的に設けることも大切です。評価の際にフィードバックの場を設けた上で、次の目標に向かうために短いスパンで1on1ミーティングの時間を作りましょう。定期的にコミュニケーションの場を設けることは、社員の頑張りが間違った方向に向かってしまうことを防ぐ効果があります。その際に人事評価に対する調査も行えば、人事評価制度の改善に利用することもできるでしょう。

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まとめ

社員が人事評価に不満を抱く背景には、人事評価制度自体が抱えている課題も密接に関係しています。今ある人事評価制度が会社に合っているものなのかを今一度再確認し、制度運用のポイントなどを細かく見直して構築する必要があります。加えて評価者訓練を実施したり、社員とのコミュニケーションの場を増やしたりするなど、運用中のケアも大切です。自社に合った人事評価制度を取り入れ、評価の対象者と評価者の双方にとって納得のいく評価を行いたいですね。