人事評価制度へ不満がある社員が退職してしまう要因と防ぐ方法を徹底解説

業績向上や人材育成、社員のモチベーションアップなどを目的に運用されている人事評価制度。しかし、人事評価制度に不満があることを理由に退職を考えてしまう社員もいます。では、なぜ人事評価制度へ不満があるだけで辞めてしまう社員がいるのでしょうか。その原因を探っていくと、人事評価制度が抱えがちな問題点についても見えてきます。社員の意識や人事評価制度の課題を知り、企業にとっても社員にとっても望ましい人事評価制度を実現しましょう。

人事評価制度に不満がある社員が辞めてしまう原因

人事評価に納得いかない

人事評価制度に不満がある社員が辞めてしまう原因の1つとして、まず人事評価の結果に社員が納得していないことが考えられます。もちろん社員の自己評価と評価者の評価が一致することはほとんどないでしょう。とはいえ、納得のいかない評価が下されると、社員は上司や会社への不満や不信感を募らせてしまいます。

「基準となる目標や評価項目の設定が自分に合っていない」、「同僚と自分の評価結果を不公平に感じる」、「評価者を信頼できない」など、社員が人事評価制度に納得できない理由は多種多様。納得できない評価が続くと、「自分は認められていない」、「自分はこの会社とは合わない」と社員が考えてしまい、辞めてしまうことにつながります。

給与が上がらずモチベーションが低下する

人事評価の結果が低いと、当然給与は上がりにくくなります。一生懸命頑張って働いても給与に反映されなければ、社員のモチベーションは低下していくもの。仕事にやりがいを感じられなくなり、社員の離職へとつながってしまいます。

適切なフィードバックがもらえない

人事評価が低くても適切なフィードバックがもらえれば、社員は納得するかもしれません。今後自身がどう改善していけば良いかがわかるため、人事評価の結果も良くなっていくのではないかと期待することができます。

一方で、適切なフィードバックが与えられないと社員はただ低い評価を受けただけです。自力で改善を図っても、実際の人事評価の基準に合っていなければ、評価結果は変わらないでしょう。努力が報われないと、人事評価制度や評価者への不満につながりかねません。

人事評価に対する社員の意識

Adecco Groupが実施した「人事評価制度」に関する意識調査によると、6割以上が勤務先の人事評価制度に対して不満を持っています。不満を感じる理由の第1位として、6割以上の人が「評価基準が不明確」と回答。第2位の理由は「評価者の価値観や業務経験によって評価にばらつきが出て、不公平だと感じる」で、こちらは半数近くが回答しています。2~3割の人は「評価結果のフィードバック、説明が不十分、もしくはそれらの仕組みがない」、「自己評価よりも低く評価され、その理由がわからない」とも。総じて、評価結果に納得できていない人が多いことが読み取れます。

社員の多くが結果に納得していない以上、人事評価が低い社員は「自分が過小評価されている」と感じてしまうでしょう。納得できない低い評価と、それに伴って上がらない給与、不透明ゆえに評価の上げ方も不明確。人事評価の低い社員が退職を検討するには、十分な理由になりえます。

一方、同調査によると、評価者側の不満や不安も浮き彫りに。勤務先の人事評価制度に満足していないと回答した評価者も約6割に上ります。また、「適切に評価できている」と自信を持って回答していたのは2割未満。大半の評価者が多少なりとも不安を感じながら評価をしていることがわかります。

また、評価者及び被評価者の8割近くが人事評価制度の見直しが必要だと回答。評価者が自信を持って評価でき、被評価者は納得して結果を受け入れられる制度が求められています。さらにフィードバックなどの実施により、その後の評価改善に向けたサイクルを動かしていくことも必要でしょう。

参照:Adecco Group AG".「人事評価制度」に関する意識調査"

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人事評価制度に不満がある社員が辞めるのを防ぐ方法

人事評価制度に不満がある社員は、単に評価が低いから辞めてしまうわけではありません。評価結果に納得できていなかったり、その結果給与が上がらないなどの不利益を被っていたりするために、退職を選択してしまうのです。

では、人事評価制度に不満がある社員が辞めるのを防ぐにはどうすれば良いのでしょうか。ここでは辞めてしまう原因をもとに、対応する方法を解説します。

評価エラーが起こっていないか確認する

適切な人事評価を行うためには、評価エラーを起こさないことが大切です。評価エラーとは、評価者の主観や心理などが影響して評価結果に偏りが生じてしまうこと。評価エラーにより合理的でない不適切な評価が下されてしまうと、不当に低い人事評価を受けた社員は辞めてしまうかもしれません。次に、いくつかエラー効果の例を列挙します。

  • ハロー効果
    被評価者の目立った特徴の印象に引っ張られて、他の項目についてもその特徴と同様の評価をしてしまうこと。「Aさんは営業成績が良いから、他の仕事もできるはずだ」、「Bさんは先日のプレゼンで失敗したから、仕事のミスが多い人だろう」といったように、良い面でも悪い面でも起こります。
  • 中心化傾向と極大化傾向
    中心化傾向は評価者が自身の評価に自信が持てないなどの理由で、極端な評価を避け無難な評価をしてしまうこと。例えば5段階評価の場合、「1」や「5」をつけずほとんど「3」という評価をつける場合が当てはまります。一方で、極大傾向は被評価者間の優劣を明確につけようとするあまりにオール「1」の最低評価など、極端な評価をしてしまうことです。
  • 寛大化傾向と厳格化傾向
    寛大化傾向とは全体的に評価が甘くなること。被評価者からの反発を恐れたりする心理から起こりやすいです。厳格化傾向は逆に、評価が必要以上に厳しくなること。評価者が完璧主義者などの場合に陥りやすい傾向があります。
  • 論理誤差
    客観的な事実を確認することなく、評価者の中での論理に基づいて評価をしてしまうこと。「学歴が高いから、仕事ができるだろう」「机の上が整理されているから、細かい作業も得意だろう」といったように、評価者の推論による解釈が混ざってしまいます。

    評価者も人間であるため全くの無感情で評価することは困難です。しかし、偏りをなくすことができないことについて自覚する必要はあるでしょう。多くの評価エラーは、先入観や主観に惑わされず複数の客観的な情報をもとに判断すること、評価項目や評価基準についての理解を深めることなどにより避けられます。

    不正確な評価の悪影響は、社員が辞めてしまうことにとどまりません。適切な人事異動の妨げになってしまい、職場に適応できない社員や職責に見合わない社員などを生み出してしまう可能性もあります。

人事評価制度に不満がある社員へのフォロー体制を強化する

低い評価を受けた社員は、結果に納得していてもモチベーションが低下する可能性が高いです。モチベーションが低いままだと、仕事に対する意欲が失われて仕事を辞めてしまうかもしれません。人事評価の低い社員をフォローし、改めて仕事に対するモチベーションを取り戻してもらう必要があります。

フォローの方法として、人事評価の内容についてきちんと説明すると良いでしょう。なぜ低い評価になったのか、どの点が低かったのか、良かった点はどこか、など根拠を持って伝えると、社員の不満の軽減につながります。今後はどうしてほしいかを伝えると、仕事へのモチベーションが復活するかもしれません。また、「評価が低い=人間性が評価されていない」と捉えてしまっていると、辞めてしまう可能性も高くなってしまいます。「人事評価はあくまで制度に基づいた評価で、人格の否定などではない」「あなたが嫌いだったり、嫌がらせをしたりしているわけではない」ときちんと伝えておくことも必要でしょう。

退職リスクが高い社員を早期発見する

「退職します」と伝えてくる段階では、翻意をしてもらうのは難しいかもしれません。退職や転職リスクが高い社員を早期発見することが、人事評価の低い社員が辞めるのを防ぐ対策にもつながります。離職兆候の例としては、「職場での挨拶や日常会話が減った」「職場や仕事への愚痴や不満が増えた」「遅刻や早退、欠席が増えた」など。職場でのモチベーションが下がっているだけでなく、資格試験の勉強や転職活動など次を見据えた行動が始まってしまうと手遅れになりかねません。

離職兆候を感じ取った場合は、まずその社員とのコミュニケーションを試みてください。もちろんいきなり核心を突く話題はNGです。また、自分の経験や価値観を押しつけないように注意しましょう。相手がなぜ退職を考えてしまっているか、相手の立場に立って耳を傾けることが必要です。人事評価など職場の問題であれば、話を聞くことで解決できるかもしれません。

評価者を育成する

人事評価制度は、適切な評価が行われなければ機能しません。それには評価制度を熟知し、適切な評価を行うことができる評価者が必要です。評価者の評価に納得できないと、被評価者の不満が溜まってしまいます。評価者との人間関係がこじれたり人事評価への信頼が損なわれたりすれば、人事評価の低い社員は辞めてしまうかもしれません。

納得度の高い人事評価を実施するためには、人事評価制度への理解が不可欠です。上司としては仕事もできて部下からの信頼も厚いからといって、人事評価の評価者としても優秀とは限りません。評価者研修を定期的に実施し、評価者のスキルアップを目指しましょう。

評価者のスキルアップには、外部サービスの活用もおすすめです:一人ひとりの「働きがい」を作る人材データプラットフォーム「CYDAS」

人事評価のフィードバックを充実させる

人事評価制度に不満がある社員は、どうすれば良い評価を得られるか悩んでいることが多いです。なぜ自分の評価が悪かったのか、どうすれば改善できるのか、などは社員だけでは解決できません。どこが良くてどこが良くなかったのか、これからどうしてほしいのか、きちんとフィードバックをする必要があります。また、評価者側の意見を伝えるだけでなく、被評価者側の意見も聞くようにしましょう。フィードバックは複数回行い、お互いの意見交換を繰り返すとより効果的です。信頼関係が築けたり、評価のズレが解消されたりといった結果につながるでしょう。

低い評価で一時的にモチベーションがダウンしたとしても、フィードバックが充実していればもう一度頑張ってみようと思うきっかけを作ることができるはずです。逆にフィードバックが不十分であれば、低い人事評価で下がってしまったモチベーションのままフェードアウトして辞めてしまうかもしれません。

人事評価制度を見直す

そもそもの評価基準や評価項目などが社員に納得されていないというケースも考えられます。納得できていない制度で低い評価を受けてしまえば、モチベーションが下がってしまうのは避けられません。制度に不満を持って辞めてしまう社員が出ないよう、人事評価制度が適切かどうか常に確認する必要があります。社員にとって納得度が高いものを目指すため、アンケートなどで意見を募るのも良いでしょう。評価対象は明確か、評価項目は十分か、評価基準は適切かなど、さまざまな角度から検証が必要です。

どんな時代にも対応する完璧な人事評価制度というものは存在しません。制度内容は適切か、運用は適切かなど、定期的にチェックや見直しが不可欠です。

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人事評価制度を見直す際の注意点

人事評価制度を見直す際には、現状の人事評価制度についても再評価しておくことが必要です。現在の制度にどのような課題があるのかを把握せずに見直しをしても、また同じ問題が生じてしまうかもしれません。例えば一概に評価といっても、絶対評価なのか相対評価なのかによって評価項目や基準は変わります。思いつきやイメージではなく、客観的な根拠に基づいた制度を設計しなければなりません。

人事評価制度の本来の大きな目的は社員の育成です。評価結果が低いからといって社員に辞められてしまっては、本末転倒と言わざるを得ません。制度を見直す際は、評価の違いは社員の優劣をつけるためではなく、今後の成長につなげるためのものであることを念頭に置いておきましょう。

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まとめ

本来は、将来的に会社で活躍してもらうための社員育成手段の1つである人事評価制度。制度がうまく機能していないせいで、人事評価が低い社員が途中で辞めていってしまうのは会社にとって損失です。適切な評価をもとに適切な配置を行えば、活躍してくれた人材だったかもしれません。

だからこそ、納得度の高い人事評価制度を設計し、適切に運用しながら定期的に見直す必要があります。人事評価制度が問題を抱えていると気付いたら、早めに対策を取りましょう。社内だけで解決するのが困難な場合は、ノウハウを持ったサービスの導入を検討するのもおすすめです。

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