人事評価のフィードバックってどうするの?手順とポイントの紹介
前回、人事評価基準についてご説明しましたが、今回は、確定した評価結果を被評価者へ「フィードバック」する際のポイントについて解説していきます。
1.最終評価決定について
当然のことですが、フィードバックする前に1次評価者、2次評価者が評価した結果を「会社として最終決定」する必要があります。
評価の最終決定は、社長をはじめとした役員で構成される会議体(評価調整会議・評価決定会議等)で検討されることが一般的で、下記の観点で議論されます。
- 評価者が評価した評価ランクを「全社的視点」により甘辛調整する
- 評価ランクにより決定された全体給与・賞与合計額が「当初予算と照らして適正か」を検証する
人事評価制度を導入して間もない会社の場合、評価者の判断基準にバラツキがあることが多く、最終評価決定まで多くの時間・労力を要しますが、回数を重ねるごとに評価基準は統一され、スムーズに最終評価ランクが決定される傾向にあります。
人事部門においては最終評価の調整に苦労することもありますが、評価者が人事評価制度・評価基準に対する理解を深めるために必要なプロセスですので、粘り強く取り組んでください。
2.フィードバックについて
フィードバックとは、最終的な評価ランクを被評価者へ説明することをいいます。
人事評価制度においては、被評価者の人事評価結果に対する納得度が重要ですので、フィードバックは最も重要な仕組みの一つであるといえます。
納得度を高めるフィードバックには丁寧な対応が欠かせませんが、適切なフィードバックができていない結果、被評価者の納得度が低下してしまうケースもあることから、納得度を高めるフィードバックのポイントについて、プロセス順に解説します。
(1)フィードバック前の準備
①評価ランクの共有
フィードバックは、1次評価者が担当することが多いのですが、当然、フィードバックする方は、最終的な評価ランクを把握しておくべきです。
たとえば、1次評価者・2次評価者がともにA評価とした場合でも最終評価がC評価となってしまうようなケースがあったとします。もし、1次評価者がその理由を知らずに被評価者へフィードバックを実施するとどうなるでしょうか。「なぜC評価となったかわからない」、「私はA評価にしたんだけど・・・」など、言い訳めいた発言をしてしまい、被評価者の不満や不信感がより高まる、という好ましくない結果を招くことにもなりかねません。
ここでは、C評価へ変更された理由を、フィードバックする方(1次評価者や2次評価者)が最終評価者に確認し、自身も納得したうえでフィードバックを実施する、という進め方であるべきです。
②フィードバック面談のイメージ
被評価者のタイプでフィードバックへの期待やこだわる点も様々ですから、フィードバックを開始する前にその内容や想定される質問などをイメージしておくことをお勧めしています。
具体的には、評価シートに記載された自己評価や本人コメントなどを事前に確認しておくことです。実際の評価結果とのギャップがあれば、そこから想定される質問をイメージすることができます。フィードバック面談中に慌てることがないよう準備することが大切です。
(2)フィードバック面談時のポイント
①時間・場所
フィードバックは20~30分程度を確保することが望ましく、個室など会話が外に漏れない環境が必須です。
②フィードバックの流れ
よりスムーズなフィードバックを実施するため、下記の手順・ポイントをご参照ください。
No | 項目 | ポイント |
1 | アイスブレイク | 上司である評価者からフィードバックされるというに対して緊張する被評価者もいることから、まずはリラックスしてもらうことを心掛けましょう (例:いつも〇〇してくれてありがとう) |
2 | 評価ランクの通知とその内容の説明 | 評価ランクとその理由を丁寧に説明しましょう (例:今期のあなたの評価はB評価でした。今期の目標である〇〇については期待とおり達成しれくれましたし、■■な点はよく頑張ってくれたので高く評価しました。一方で、△△な点は期待に届かなかったと判断しています) |
3 | 本人からの質問・回答 | 今回の評価結果に対する被評価者の率直な感想や質問を引き出してください。すぐに質問が浮かばずに「特に質問はありません」というケースがありますが、できるだけ被評価者に寄り添って質問を引き出してください (例:評価結果に対する質問があれば何でも聞いてください。B評価という結果については、どのように感じてますか?例えば、△△な点については評価できない結果となりましたが、〇〇さんとしてはどのように感じてますか?) |
4 | 次期評価期間に向けた取り組み | フィードバック内容を来期へつなげるためにも、来期に向けた取り組み内容を確認しましょう。また、被評価者に対して期待している役割や課題克服に向けた取組みの確認などを行う機会としてみましょう (例:今期の評価結果については以上となりますが、来期に向けて、どのように取り組んでいこうか?〇〇さんがより成長して高い評価が得られるよう私もできる限りのサポートをしますよ。私は〇〇さんには、より中核的なメンバーとなって若手社員を引っ張ってもらうことを期待してますよ) |
③その他の注意点
フィードバックにおいて、被評価者から聞かれる不満内容には以下のようなものがあります。
A)説明が一方的
B)フィードバック時間が短い
C)被評価者の質問に対する回答がない(納得できない)
D)高圧的で質問しづらい
フィードバックは日常業務における部下指導とは異なり、被評価者が評価結果、仮にそれが被評価者にとってネガティブなものであったとしても、その内容に納得し、そして、翌期の意欲を高める機会にすることを目的としていますので、態度・発言などは普段以上に気を付けて対応してください。
(3)フィードバック後のフォロー
フィードバックは評価者・被評価者で完結するものですが、被評価者が納得できるフィードバックがされたか、そもそもフィードバックがおこなわれたかについて、人事部門が中心となってチェックすることをお勧めします。具体的には、対象者を絞って直接ヒアリングする方法や、一斉にアンケートを実施する方法もあります。
もし、フィードバックがうまく機能していない、または、実施されていないという結果となった場合は、人事部門としてフィードバックの徹底・見直し策を検討する必要があります。その際、評価者は現場の責任者として予算達成や組織マネジメントなどで多忙であることも想定されますので、現場に任せきりとせず、評価者の悩みにも寄り添いながら対応策を検討する姿勢が大切です。
今回は人事評価制度において重要なフィードバックについて解説しましたが、フィードバックが定着するまでにはそれなりの経験が必要ですので、特に新任管理職に対しては、研修などフォロー体制が必要です。フィードバック研修はもちろんのこと、部下との対話を円滑にするためのコーチング研修なども有効ですので、人事部門で必要なフォローをしながら粘り強く継続してください。
社会保険労務士/株式会社ミライコネクト代表取締役
藤崎 和彦 氏
中小企業を中心に給与・評価制度など人事制度の設計から、労働時間管理・人事諸規程の整備などの労務制度の構築まで、人事労務全般のコンサルティングに従事。人事労務をテーマにしたセミナーでの講演、執筆多数。
長年の人事コンサルティングで蓄積したノウハウを詰め込んだ人事システム「MIRAIC」はこちら