人事評価制度の作り方 | 抑えておきたい5つのポイント

前回、人事評価は「定量評価」「定性評価」より構成されること、人事評価項目の設計についてご説明しましたが、今回は、設定した評価項目をどのように人事評価制度へ反映するかを解説していきます。

1.評価期間によるメリット・注意点

まず、評価期間を検討する必要がありますが、主に6ヵ月、または、1年の2パターンがあり、それぞれの特徴を下記のとおり整理しました。

 

6ヵ月1年
メリット・短期間で貢献度を評価し年2回賞与へ反映できる

・成長著しい若手社員を短いサイクルで評価できる

・低評価に対して早期の改善を促すことができる

・会社業績(年度)との連動性が高い評価ができる

・中長期的な取り組みや業績も評価しやすい

・人事評価業務の負担が少ない

注意点・社員の中長期的な視野が狭くなる

・収益など、定量評価が難しい業種もある(定量で測定する期間が長い業種、例えば建設業など)

・人事評価に要する業務の負担が大きい(評価調整、面談など)

・半期ごとの賞与には反映しづらい

・評価期間の途中でも進捗状況の確認や修正が必要

 

 

上記のとおり、それぞれにメリットや注意点がありますので、業種・ビジネスモデルや風土などをもとに検討し、選択されることをお勧めします。

なお、まれに、評価期間を3ヶ月とするケースもあります。短期間で評価できる定量評価(収益など)を評価項目とする場合は一理あるかもしれませんが、能力や姿勢といった定性評価には向いていないことに留意が必要です。

 

2.評価点数の設定について

実際に評価をする際、定量評価(目標管理制度)と定性評価それぞれの評価項目ごとの点数は、たとえば、下記のように設定します。

 

①定量評価(目標管理制度)

評価点数達成度
数値目標の場合数値目標以外の場合
5点115%以上目標を大きく上回った
4点105%以上115%未満目標を上回った
3点95%以上105%未満目標を達成した
2点85%以上95%未満目標を下回った
1点85%未満目標を大きく下回った

上記例の場合、評価点数は5段階で、3点を標準点数、“達成度95%以上”としていますが、段階や点数は、それぞれの会社の事情に応じて設定していただくことになります。営業職は売上目標100%達成が当然、という考え方の場合にはその考え方に応じた設定をしてください。

 

②定性評価

評価点数内容
5点期待を大きく上回った
4点期待を上回った
3点期待通り
2点期待を下回った
1点期待を大きく下回った

評価項目ごとの「期待」を標準として、評価することになります。この場合、どこに“期待値”があるかがポイントとなり、評価者の判断が分かれるところです。

そこで、“期待値”をすり合わせるために、評価者研修や評価調整会議などを実施することになります。

 

3.評価ウェイトの設定について

上記2のとおり、定量評価(目標管理制度)と定性評価の評価点数を合計し、最終的な評価ランクを算定することになりますが、その際、定量評価と定性評価のウェイトをどう設定するか、を検討する必要があります。

定量評価は個人や組織の業績を評価対象とすることから、業績に対する責任度合いの高い管理職はウェイトが高くなる傾向があります。一方で、一般社員、特に若手社員については、個人能力の向上を意識させるために定性評価のウェイトを高くすることもあります。

また、給与・賞与へ反映させるときに、会社業績の影響を受けやすい賞与について定量評価のウェイトを高くするケースもありますが、やや複雑な仕組みとなるため、シンプルな仕組みを重視する場合、給与・賞与ごとにウェイトを分ける必要はありません。

 

A)定量評価(目標管理制度)

目標の内容ウェイト①評価②評価点数③(①×②)
売上50%42.0
業務改善30%30.9
人材育成20%20.4
100%合計3.3

 

B)定性評価

評価項目ウェイト①評価②評価点数③(①×②)
専門知識30%41.2
企画・提案30%30.9
スピード20%20.4
チャレンジ10%50.5
チームワーク10%10.1
100%合計3.1

4.中間面談について

中間面談とは評価期間の途中で評価者と被評価者が目標の進捗状況や日頃の働きぶりについて話し合う面談をいい、主に被評価者から目標の進捗状況の報告、仕事に関する相談を受けることを中心におこなわれます。

また、期初に設定した個人目標が外部環境の変化などにより変更する必要があれば、中間面談で話し合ったうえで変更するケースもあります。評価期間が6ヵ月、1年のいずれの場合でも3ヶ月に1回程度の頻度で中間面談をおこなうことをお勧めしていますが、通常業務を抱えている評価者が中間面談の実施を失念してしまうケースも見られます。

結果として被評価者との必要なコミュニケーションが損なわれ、人事評価に対する信頼性・納得感が低下する可能性もあることから、中間面談を継続・定着させるためにも、人事部門の役割として、前広なアナウンスやチェックをお勧めします。

 

5.評価ランクについて

(1)評価ランクとは

定量評価(目標管理制度)・定性評価の評価項目を評価し、最終的にはS・A・B・C・Dなどの「評価ランク」を決定することになります。初めて人事評価制度を設計する場合は、一般的に5ランクに分けるケースが多いのですが、そうすると中間のBランクに集中する傾向もあり、あえてE評価まで追加して6ランクにし、真ん中をなくすこともあります。

さらに細かく設定したい会社は7ランクまで展開するなど、それぞれの会社の人事方針によって様々です。

 

(2)評価ランク決定方法(絶対評価・相対評価)

評価ランクの決定方法には評価点数に応じて評価ランクを決定する絶対評価と、人事評価の点数を上位から並べて評価ランクを決定する相対評価の2パターンがあります。

 

絶対評価

評価ランク評価点数(10点満点)
S90点以上
A75点以上90点未満
B55点以上75点未満
C40点以上55点未満
D40点未満

 

相対評価

評価ランク評価分布
S上位10%
A上位10%~25%
B中位25%~75%
C下位10%~25%
D下位10%

 

相対評価は、メリハリのある評価になる一方で、必ずD評価も発生することから運用の難しさが課題です。特に社員数も多くない中堅中小企業の場合は絶対評価を原則とし、評価ランクが上振れしている、B評価に集中しすぎているなどの傾向があれば、相対評価の視点で一部の社員の人事評価ランクを見直すことをお勧めしています。

 

今回は前回に続き人事評価制度の設計について解説しましたが、様々な選択肢がある中、自社にあった人事評価を検討してみてください。また、人事評価の内容も柔軟に変更することもできますので、まずは自社にあわせて運用することを意識することが重要と考えます。

 

記事監修

社会保険労務士/株式会社ミライコネクト代表取締役
藤崎 和彦

中小企業を中心に給与・評価制度など人事制度の設計から、労働時間管理・人事諸規程の整備などの労務制度の構築まで、人事労務全般のコンサルティングに従事。人事労務をテーマにしたセミナーでの講演、執筆多数。

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