想像の翼を広げよう!働かない働きアリがいる理由から考える他人のマナー。

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働きアリの法則という研究発表をご存じですか?

働きアリの集団をよく観察していると、
2割程度働くふりをしている働かないアリがいる。
その2割の働かないアリを除いて働くアリだけの集団にしても、
また2割の働かないアリが生まれる。
逆に、除いた2割の働かないアリの集団にも、
また一部働かないアリの集団が出てくる。

アリは『アリとキリギリス』の寓話や、最古では*旧約聖書にすら
「アリは働き者」として描かれていたぐらい働きものな存在です。

* 『旧約聖書(口語訳)』箴言(第6章)
Go to the ant, you sluggard. consider her ways, and be wise:(なまけ者よ、蟻のところへ行き、そのすることを見て、知恵を得よ。)

そんな働きアリの中に、なぜこのように
ある一定数の働かないアリが存在するのでしょうか?

 

働きアリの法則とは?

これは、長谷川英祐準教授(北海道大学大学院農学研究院)が2012年に明らかにしたものです。

<働きアリ>2割程度は「働かず」集団維持の仕組みか

働きアリの集団の中には常に2割程度の働かないアリがいて、
働くアリだけのグループを作っても必ず働かないアリが出ることを、
長谷川英祐(えいすけ)・北海道大大学院准教授(進化生物学)らが証明した。
「働かないアリがいれば、別の仕事が生じた時にすぐに対応できる。
仕事の効率は下がるが、集団を維持する巧妙な仕組みではないか」と推測している。
日本動物行動学会の「ジャーナル・オブ・エソロジー」1月号に発表した。
長谷川准教授らは、体が大きいなどの理由で観察しやすいシワクシケアリを
北大の苫小牧研究林(北海道苫小牧市)で採取し、
働きアリ150匹と女王アリ1匹のコロニー(一族)を八つ作り、
人工の巣で飼育。
色を付けて識別した各個体の動きを観察した。
その結果、卵の世話をするなどの仕事量にばらつきがあり、
どのコロニーにもほとんど働かないアリが約2割いた。
働かないアリだけ30匹集めると、うち約2割が働かないままだが、残りはよく働くようになった。
よく働くアリだけを集めて新たなグループを作っても一部は働かなくなった。
仕事の熱心さに年齢などは関係なかった。
人間社会のように集団に指示するボスはいないが、自然と働くものと働かないものが出る。
長谷川准教授は「働かない『働きアリ』が集団維持にどのように貢献しているのか今後明らかにしたい」と話している。

– 毎日新聞(2012/12/29)

その後、長谷川英祐準教授は、働かない働きアリが生まれる訳を、以下のように語っています。

働かない働きアリが生まれるワケとは?

全員が働くシステムだと、コロニーの処理する仕事効率は高い。
働いている個体が多いから当たり前です。
アリは筋肉を使って動くので、働き続けるとかならず疲れます。
この疲労の存在が問題を解く鍵でした。
モデルによる思考実験では、今まで働いていたアリが疲れて休みだすと、
反応が鈍かったアリが動き出して仕事をするようになる。
長い時間にわたってしらべると、
働かないアリがいる方が時間単位辺りの仕事の処理量のばらつきが小さくなるのです。
アリが一斉に働くシステム(働かないアリがいないシステム)を調べると、
一つの時間区切りの中で、全く仕事処理されない、
つまり全員が疲れて働けなくなる状況が生じてしまう。
ところが働かないアリがいて、
働くアリが疲れて動けない時に働かないアリが穴埋めするシステムだと、
仕事処理量がゼロになる時間が少なくなるのです。
コロニーには途切れるとまずいクリティカルな仕事があります。
例えば、卵はいつも世話をしていないとカビが生えてすぐ死ぬので、
いっぺん仕事が途切れるとコロニーが絶滅してしまう。
このようなときには、平均的な効率を上げるよりも、
長期的に見て絶滅しないシステムが採用されていると思います。

長谷川英祐さん | 「わたし」の研究者図鑑

つまり、仕事が途切れることがないように、
働かないアリは存在していた、のです。

働かない理由と働けない事情があった。

これは、人間社会にもとてもあてはまるのではないでしょうか?

 

都合よく働く先入観

道路を猛スピードで走っている車があったとします。
その車を見て、「乱暴な運転だなぁ」と思っても、
「奥さんが妊娠中で子どもが生まれそうだから、
急いでいたのかもしれない」とは思わないのではないでしょうか?

電車待ちで並んでいるときに後ろの人から押されたら、
「何するんだ!マナーがなってない!」とは思っても、
「他の人がぶつかっているのかも」とは思わないのでは?

このように、
他人の行動には性格など重視し、
状況を考慮しない思い込みで説明してしまうことを
「根本的な帰属の誤り(対応バイアス)」といいます。

心理学の用語なので、とっつきにくいかもしれませんが、
逆の視点で考えてみると、また納得いくのではないでしょうか。

家を出たのに忘れものをしてしまったとき、
「ついてない」と自分では思っても、
他人から見れば「いいかげんだな」と思う。
抽選や宝くじに当たっていたのに、

気付かずいつのまにか期限が切れていた。
「自分はなんて不運なんだ」と自分では思うけれど、
他人からは「不注意だ」という認識になる。

つまり、

自分に起こることはみな不運からきたもので、
他人に起こることは性格が原因だと思ってしまう

のです。

他にも、こんな調査結果があります。

フェイスブックから離れろ!「SNSをやればやるほど人は不幸を感じる」―米研究報告

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)にかける時間が
長い人ほど「自分は人より不幸だ」と思う傾向が明らかになった。

米ユタバレー州立大学の社会学者ニコラス・エッジ氏は
425人の大学生を対象に幸福感と友人関係について調査した。
対象の大学生に対し、SNS上の友人数、
その中で現実世界で知りあっている友人数などSNSのフェイスブックの使用状況についても聞き取りをした。
結果、大学生の95%がフェイスブックに登録しており、平均2.5年間、登録を継続している。
SNS上の近況や写真の更新、友人の動向を確認するなどに平均週5時間を費やしていた。

調査結果から性別、宗教、婚姻状態など影響のある要素を排除してわかったのは、
「フェイスブックに費やす時間が長ければ長いほど、
自分は他人よりもよい生活ができていないと思う傾向が顕著」だということ。
フェイスブック上に現実世界では知り合いではない友人が大勢いる学生ほどこの意識は強烈だ。
また、フェイスブックを長年利用しているユーザーほど不公平感が強かった。
オンライン上の交際を好む人に比べ、
現実世界で多くの時間を友人との交流に割いている人は生活の不公平さを感じにくいという。

英紙デイリー・メールは18日、研究者の話として、
この種のSNSによりもたらされる生活に対する不満は心理学で「対応バイアス」と呼ばれる結果だと伝えた。
「対応バイアス」は心理学の用語で、「根本的な帰属の誤り」ともいう。
すなわち、人は限られた知識の中で他人の行動を誤って説明することがある。
フェイスブックでにっこり笑っている他人の写真を見ると、「他人はいつも楽しく暮らしている」と思ってしまう。
現実世界で知らない人ほどその傾向が強いという。(翻訳・編集/渡邊英子)

– 英紙デイリー・メール(2012年1月18日)

人は限られた知識の中で他人の行動を誤って説明することがある。

つまり、「自分のものさし」で見てしまう。
それが「自分のものさし」であることを知らずに。
この経験は、現在進行形できっと誰にでもあるのではないでしょうか?

想像の翼を広げて

働かないアリを見て「サボるとかなんて奴だ」と思っても、
「生存のためにあえて動かないでいるのかもしれない」と
想像することは難しく、

古着を発展途上国へ送るボランティアをして、
「いいことをした」と思っても、
現地でいらないと思われているかもしれないと、
思案するのはとても難しい。

でも、その想像力を働かせて他人に寛容になることが、
今、必要なことではないでしょうか。
他人への寛容はそのまま自分への寛大さにもつながります。

批判にも善意にも、
想像力は必要です。

世界はそう簡単にはかわらないけれど、
想像力でひとつ動かすことはできる。

私はそう信じています。