給与計算アウトソーシング|代行の内容とおすすめの依頼先3選

総務部や人事部、場合によっては経営者自身が担当している「給与計算」。毎月必ず発生する業務でありながら、従業員の給与振込にかかわる重大要素のため、締め日前後は担当者の負担が大きいという問題を抱えています。

そこで、給与計算によって「本来行うべき業務に時間を割けなくなっている」「担当者の負担を減らしたい」と考えている企業は、給与計算をアウトソーシングするのがおすすめです。
アウトソーシングサービスを利用することで、担当者が本来行うべきコア業務に集中できるなどのメリットを得られます。

本記事では、以下の内容について解説します。

  • 給与計算をアウトソーシングするメリット
  • 主な依頼先や費用の相場
  • おすすめの給与計算アウトソーシングサービス3選

これから給与計算をアウトソーシングしていきたいと考えている企業の疑問解決の参考になると思いますので、ぜひご一読ください。

給与計算アウトソーシングを導入するメリット

はじめに、給与計算のアウトソーシングサービスを導入するメリットについて整理していきます。
従業員の給与に関わることを外注するのは、セキュリティや信頼性といった観点から、少なからず抵抗を感じる企業担当者の方も少なくないかもしれません。

しかし、株式会社アソウ・アカウンティングサービスが給与計算のアウトソーシングについて250社に対しアンケートを実施したところ、全体の約2割がクラウド型の給与計算などを用いていること回答しました。

引用:「250社に聞いた、給与計算アウトソーシング代行の実状(株式会社アソウ・アカウンティングサービス)

このことから、多くの企業が、給与計算の外注化を進めていることがわかります。

アウトソーシングを導入することで得られるメリットは、以下の3つです。

  • 属人化の防止ができる
  • 法改正への対応がスムーズになる
  • コストの削減につながる
  • 給与計算の不正やミスを減らせる

それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

1. 属人化の防止ができる

今この記事をご覧いただいている企業の中には、1人の担当者が継続的に給与計算を担当しているというケースもあると思います。

しかし、特定の従業員が給与計算を担当し続けることには、以下の危険性があります。

  • チェック体制が整っておらずミスが発生する原因になり得る
  • 担当者が急に休職・退職した際に対応できる人がおらず、業務が滞るおそれがある

複数人で給与計算業務を担当している場合でも、立て続けに担当者の休職・退職が続くと業務を継続できる人がいない、引き継ぎができないといった状況になるかもしれません。

このようなリスクを回避するためにも、給与計算業務担当者の属人化を防ぎ、システムにログインすれば誰もが同じ情報にアクセス・管理できる状態を社内で構築することをおすすめします。

2. 法改正への対応がスムーズになる

給与計算のアウトソーシングを行っている企業の多くでは、労務士などの専門家が監修しているケースが多く、従業員の給与に関わる法改正への対応をスムーズに行ってくれます。

給与計算に関わる法改正の変更例は、主に以下の通りです。

  • 雇用保険料率の変更
  • 社会保険料率の変更
  • 最低賃金の変更

ただし、企業が行った設定変更に誤りがあると、従業員の給与に過不足が発生してしまいます。このようなミスは、企業と従業員の信頼関係に悪影響を与えるので注意が必要です。

一方で給与計算業務を外注しておけば、法改正に伴う変更設定を企業側で行う必要がなく、且つ適切に対応してくれるので安心といったメリットがあります。

3. コストの削減につながる

給与計算をアウトソーシング化すると、さまざまな企業コストを削減できます。削減できるコストの例は、次の通りです。

  • 給与計算ソフトの利用料
  • 給与計算担当者の給与・残業代
  • 給与計算担当者の採用費用・教育コスト

現在、給与ソフトを利用している企業もあると思いますが、これまで掛かっていた給与ソフトの利用料と担当者の人件費を削減できます。また、給与計算をアウトソーシングすると、新たに給与計算担当者を採用する必要がなくなります。

そのため、削減したコストを他の部署・業務・外注費にコストを当てることが可能です。

4. 給与計算の不正やミスを減らせる

給与計算は深夜残業代や社会保険料・税金など細かく規定されていて、担当者の負担が大きくなってしまうのが現状です。

給与は従業員の生活や企業信頼に関わる重要事項のため、一度のミスが訴訟などの労務リスク、納税に関わる税務リスクなどに繋がりかねません。

・労務リスク

社員の労務管理の不正やミスによって発生するリスクを「労務リスク」といいます。重大な過失は故意であったか否かに関わらず、ともすると訴訟沙汰という最悪なケースに発展してしまいます。

給与は、会社と社員を契約上で結びつけているものです。給与に誤りがあると当然、社員は不信感を募らせます。訴訟沙汰になると裁判に関連する業務が発生する上に、給与面で訴訟されたという事実が会社全体の信用を大きく損ねてしまうのです。

・税務リスク

納税に関する「税務リスク」も大きなリスクです。給与計算のミスは社員への報酬額だけに止まらず、社会保険料や源泉徴収税のような税金控除にも影響を与えてしまうケースがあるのです。特に源泉徴収税の誤りは、給与支払い翌月の納税額にも必然的に誤りが生まれてしまうことになります。

納税は国民の義務です。税務上のミスは労務のリスク同様、会社の信用を担保する上で何としても避けたい事態です。

関連記事:給与計算でミスしてしまったら?原因とリスク、対策方法を徹底解説

給与計算のアウトソーシングに向いている企業

ここまで紹介した給与計算をアウトソーシングするメリットを踏まえたうえで、どのような企業がアウトソーシング導入に向いているかを紹介していきます。

1. 担当者がコア業務に注力できていない企業

まず、給与計算業務を社内で行っていることで、担当者がコア業務に注力ができていないと感じている企業です。

よくあるのは、人事部や総務部の従業員がコア業務と兼任、または経営者自身が給与計算を行っているケースです。

給与計算をアウトソーシングすることで、現在人事部が給与計算を行っている場合はコア業務である採用評価教育、総務部であれば社内環境の整備改善などの業務に注力できるようになります。

また、現在経営者自身が行っている場合も同様に、経営者が本来注力すべき事業の促進などに時間を当てられるようになります。

2. 給与計算の担当者が1名しかいない企業

給与計算の担当者が1名しかいない場合には、給与計算担当が休職・退職した際に、業務が滞るおそれがあります。

もし、現在このような状況である場合は、アウトソーシングを利用することを推奨します。
給与計算をアウトソーシングしていれば、担当者の休職や退職などで業務が滞る不安がありません。

何より給与計算は毎月必ず行う業務で、従業員の給与支給に関わります。常に安定して、業務を回せる状態にしておきましょう。

3. 専門的な知識を持った担当者がいない会社

給与計算業務は、常に法律に則ったうえで正確に行わなければなりません。社内で行う場合、専門知識を持った従業員を確保する必要があります。

その理由は、以下の2つです。

  • 雇用保険料率・社会保険料率・最低賃金の変更などに対応する必要がある
  • 誤った知識で、残業代の計算ミス、給与未払いが発生するおそれがある

法改正は随時あるため、常に情報を確かめ正しい知識を身につけなければなりません。

しかし、内容が複雑なケースが多いので、人事・労務に関する知識を兼ね備えた人材でなければ業務の荷が重たくなってしまいます。

給与計算アウトソーシングの相場

ここで、給与計算をアウトソーシングする際の相場をお伝えします。
今回は、給与計算業務のみをアウトソーシングする場合と、給与計算以外の業務もアウトソーシングする場合に分けて確認してみましょう。

1. 給与計算のみをアウトソーシングする場合の相場

給与計算のみをアウトソーシングする場合の相場(従業員数50名程度)は、
1カ月:4万円~6万円
1年間:46万円~72万円

が相場となっています。

給与計算のみをアウトソーシングする場合は、勤怠データの集計や給与明細の作成は自社で行う必要があるので注意が必要です。

もし、給与計算にまつわる勤怠管理や給与明細の作成業務を依頼したい場合は、オプションで対応してもらえるか確認をしましょう。

2. 給与計算以外のオプション料金

給与計算だけでなく、給与計算に関連する業務をまとめてアウトソーシングする場合は、オプションとして利用料金が加算されます。

利用できるオプション例は、次の通りです。

  • 勤怠管理
  • 年末調整・賞与計算
  • 住民税の更新
  • 社会保険料の算出や入退社の手続き

毎月給与計算とセットで発生する勤怠管理をはじめ、年に1回~数回の年末調整や社会保険料の算出などの業務を依頼できます。

オプションによって料金は変わりますが、従業員50名あたりの相場は、
1カ月:10万円~20万円
1年間:120万円~240万円

ほどです。

現時点での担当者の業務負担の兼ね合いや、アウトソーシングの予算に応じて、依頼するオプションをぜひ検討してみてください。

給与計算のアウトソーシングの主な依頼先3選

ここで、給与計算をアウトソーシングする際の主な依頼先を3つ紹介します。

主な依頼先は大きく分けて、

  • アウトソーサー
  • 社会保険労務士事務所
  • 税理士事務所

の3つです。

1. アウトソーサー

おすすめの従業員規模数100名~1,000名ほど
メリット
  • 給与計算システムの構築から依頼可能
  • 一部分だけ外注化もできる

アウトソーサーの場合、給与計算業務の代行はもちろん、システムの構築から運用開始までのサポートなど、幅広い業務に対応してもらえるのが特徴です。給与計算担当者の状況や予算に合わせて、給与計算と年末調整のみなど、必要な業務だけ依頼できるサービスが多くあります。

給与計算システムの構築から依頼できるため、従業員数が100~1,000名ほどの企業におすすめです。

また、各給与計算アウトソーシングサービスによって、給与計算以外にオプションで依頼できる内容に若干の差があります。利用する際は料金だけでなく、対応内容をしっかりと確認して選定しましょう。

2. 社会保険労務士事務所

おすすめの従業員規模20名~数100名
メリット
  • 労務管理にプロなので法律にも詳しい
  • 法律違反がないか専門家の視点で確認してもらえる

社会保険労務士は、労働社会保険諸法令の申請書作成や代行を専門としている士業です。そのため、給与計算をはじめとした人事・労務を専門家の観点から適切に対処してもらえるのがメリットです。

給与計算にまつわる法令にも瞬時に対応できるので、法令違反のおそれがなくなり、安定した企業経営に一役買ってくれます。

社会保険労務士に依頼する場合、基本的な給与計算の算出をはじめ、社会保険料や残業代の算出など、手間がかかる給与計算も安心して依頼できます。

ただし、年末調整の代行は税理士の業務にあたるため、社会保険労務士に依頼はできないので注意しましょう。年末調整に必要な給与計算は、アウトソーシング可能です。

3. 税理士事務所

おすすめの従業員規模10名程度
メリット
  • 顧問料の範囲で行ってもらえるケースもある
  • 源泉徴収票の作成を依頼できる

従業員数が10名程度の小規模な企業の場合、税理士事務所に給与計算をアウトソーシングするのも一つの手段です。税理士の主な仕事である税金の計算は、給与計算と密接しているため、給与計算も併せて依頼できるケースもあります。

税理士事務所にもよりますが、顧問契約している場合は、顧問料の範囲で給与計算を行ってもらえる場合も少なくありません。

また、社会保険労務士と異なり、年末調整の計算をはじめ、源泉徴収票の作成まで対応してもらえるのがメリットです。

現在すでに契約しており、信頼関係が成り立っている税理士がいる場合、ぜひ給与計算のアウトソーシングを検討してみてください。

給与計算のアウトソーシング先を選ぶ際に知っておきたい3つのポイント

次に、実際に給与計算のアウトソーシング先を選定する時に確認しておくべき3つのポイントを把握しておきましょう。

1. サービス内容


出典:MINAGINE 給与計算アウトソーシング

まず、給与計算業務のうち、どの範囲を対応してもらえるかの確認は必須です。

給与計算業務の中には、以下のようなさまざまな業務があります。

  • 毎月の給与計算
  • 賞与計算
  • 年末調整
  • 社会保険料の計算・手続き
  • 特別徴収住民税の手続き

これらの給与計算業務の全てを委託したいのか、また一部の業務を委託したいのかによって、どこに依頼するかが変わってきます。

なぜなら、社会保険の手続きは社会保険労務士にしか認められていない独占業務であるなど、依頼先によって対応業務に制限がある場合もあるからです。

アウトソーシング先によっては、別途社会保険労務士事務所と契約する必要が発生します。あらかじめ、アウトソーシングしたい業務内容を精査しておきましょう。

2. アウトソース先の専門性

次に、給与計算業務の正確性、労働保険や社会保険に対する専門知識を兼ね備えているかの確認も大切です。給与計算業務は、正確性だけでなく、社会保険などに関する専門知識が必要となります。

給与計算は、以下のような想定外の事体にも対応する必要があるからです。

  • 従業員がケガや病気をした
  • 産休や育休、介護休職などの休暇を取得した
  • 社有車で事故を起こしてしまった

アウトソーシング先が、人事・労務に関する専門知識をしっかり兼ね備えているほど、さまざまな状況に応じた丁寧な対応を期待できます。

これらの知識の有無は、導入時のヒアリングや無料体験などの際に、アウトソーシング先のコミュニケーション能力や対応から確かめるのがおすすめです。

3. 価格

最後に大切な確認すべきポイントが、給与アウトソーシングの価格です。アウトソーシング先によって価格が違うことや、企業ごとに予算があるため、選定時に悩みやすいポイントでもあります。

予算に合わせつつ、納得のいくアウトソーシング先を選ぶためには、ひとつめのポイント「サービス内容」と同じく、給与計算のどの業務を依頼したいかを精査しましょう。依頼する業務範囲によって、合計金額に差が出てくるからです。

これら3つのポイントを抑えたうえで、アウトソーシング先を比較検討していきましょう。

おすすめの給与計算アウトソーシング3選

最後に、おすすめの給与計算アウトソーシングサービスを紹介します。今回お伝えするサービスは、次の3サービスです。

  • MINAGINE給与計算アウトソーシング
  • NOC給与計算アウトソーシング
  • 給与PRO

それぞれのサービスがどのくらいの規模の企業におすすめか、また給与計算以外に依頼できるオプションも合わせてお伝えしていくので、ぜひ参考にしてください。

1. MINAGINE給与計算アウトソーシング

出典:MINAGINE給与計算アウトソーシング

おすすめの従業員規模従業員1名から対応可能
オプション
  • 年末調整・賞与計算の代行
  • 明細書の封筒封入・各拠点への発送
  • 支給控除計算
  • 有給日数管理

MINAGINE給与計算アウトソーシングは、人事労務のプロフェッショナル集団である株式会社ミナジンが運営する給与計算サービスです。

クラウドを活用した勤怠管理システムも展開しているため、勤怠管理と給与計算を連携した幅広い代行業務も可能です。


出典:MINAGINE給与計算アウトソーシング

また同サービスは、給与計算をはじめ、振込データの作成、給与明細の配布を行ってくれます。加えて、オプションで「年末調整や賞与の代行」や「明細書の封入作業・発送」なども依頼可能です。

さらに同社の場合は、希望すれば自社の勤怠管理の課題を解決するための人事コンサルティングや労務顧問サービスも受けることができます。勤怠管理システムや人事評価サービスなど、人事・労務にまつわるサービスを展開していますので、ニーズに合わせて人事・労務の総合的なサービスを受けることができます。

▼サービス詳細
MINAGINE給与計算アウトソーシング

給与計算において以下のようなお悩みを抱えていませんか?

煩雑な給与計算による業務負担が大きい
・勤怠管理から給与計算までトータルで委託したい
・法律にしっかりと従った正確な給与計算を行いたい

このようなお悩みは給与計算のアウトソーシングサービスの導入によって解決することができます。「MINAGINE」が提供する給与計算アウトソーシングサービスは、給与・人事を知り尽くしたエキスパートが多種多様な業界の会社の給与計算業務をサポートします。給与計算のアウトソーシングサービスについて詳しく知りたい方はこちらの資料「給与計算アウトソーシング選び方ガイド」をぜひご覧ください。

2. NOC総務アウトソーシング 給与計算サービス


出典:NOC総務アウトソーシング

おすすめの従業員規模50~750名
オプション
  • 勤怠管理
  • 年末調整
  • 特別徴収住民税計算
  • 文書管理

NOC総務アウトソーシング 給与計算サービスは、30年以上に渡り、企業の人事・経理・総務業務のアウトソーシングサービスを提供してきた実績を持つNOCアウトソーシング&コンサルティング株式会社が提供しているサービスです。利用した企業の継続率は95%以上、スタッフの接客態度の満足度は100%と評価が高いのが特徴です。

給与計算サービスについては、給与計算をはじめ年末調整や特別徴収住民税をオプションで依頼できます。

加えて、文書管理やコスト削減の見直しサポートなど、幅広い人事・総務担当者が行う業務全般も依頼可能です。

▼サービス詳細
NOC総務アウトソーシング 給与計算サービス

3. 給与PRO


出典:給与PRO

おすすめの従業員規模1~50名
オプション
  • 労務保険・社会保険業務
  • 特別徴収住民税計算
  • 年末調整業務代行
  • 退職者の手続き

給与PROは、従業員1~50名程度の小規模企業向けの給与計算アウトソーシングです。従業員数に応じて、従業員1人あたりの給与計算の代行費が変わる料金プランを採用しています。

例えば、従業員数が50名の場合は、1人あたり380円で給与計算のアウトソーシングを依頼可能です。

また、オプションでは社会保険料や特別徴収住民税の計算をはじめ、退職者の手続きも行ってもらえます。最低限のコストで給与計算をスムーズに進めたい企業におすすめです。

▼サービス詳細
給与PRO

まとめ|コア業務に集中するために給与計算をアウトソーシングしよう

ルールが複雑で、特に締め日前後に手間がかかる給与計算業務は、アウトソーシングサービスを利用することで、担当者の負担を減らせられます。また、給与計算業務を委託することで、担当者が本来注力するべきコア業務を対応する時間を増やすことも可能です。

随時変わる労働基準法などの法律にも適切に対応できるので、安心した企業経営の基盤作りにつながります。さらに、これまで給与計算の対応を行っていた社員の業務効率を上げられます。

本来集中してやるべきコア業務に気兼ねなく対応できるよう、給与計算をアウトソーシング化してみてはいかがでしょうか。