従業員の勤怠管理義務はある?適切に勤怠管理を行うには?

タイムカードやICカードなど、従業員の出退勤の時間について管理することが当たり前のようになってきています。そもそも、使用者に従業員の勤怠管理の義務はあるのでしょうか。法的な義務の有無から、厚生労働省のガイドラインを基準にした適切な勤怠管理について解説していきます。

労働者の勤怠を適切に管理する義務はあるのか

勤怠管理は、労務において必須のようになっていますが、そもそも企業に労働者の勤怠を適切に管理する義務はあるのでしょうか。

実は、労働基準法などをはじめとした法律では「企業は労働者の勤怠を適切に管理すること」などのように明確に義務として明記されていません。つまり、法的な義務はないのです。

しかし、労働者の権利などを守る労働基準法の内容をみてみると、たとえば以下の内容が記載されています。

※労働基準法の内容の一部より

  • 1週間につき40時間を超える労働は原則認められない
  • 休憩時間を除いた1日8時間以上の労働は原則認められない
  • 少なくとも週1日の休日を設けなければならない
  • 基準を超える時間外労働や休日出勤は使用者と労使協定を締結しなければならない
  • 全労働日の8割以上出勤している労働者には有給休暇を付与しなければならない

このように、労働時間や休日出勤など労働基準法では細かな規定があります。仮に規定を無視すれば、労働基準法違反にあたるということ。労働基準法に違反すれば、是正勧告や罰金の対象です。

それでは、労働基準法に違反しないようにするにはどうすれば良いかというと、勤怠管理を行っていくほかありません。つまり、労働者の勤怠の適切な管理義務はないものの、実質勤怠管理の責任が使用者にはあるということです。

■労働安全法改正案で予定される法的義務化


労働者の勤怠を管理する義務は法的に定められていないと紹介しましたが、あくまで平成30年度時点の話です。実は、労働安全法改正案では労働時間の把握を明記することが検討されています。法改正があれば、今後勤怠を適切に管理することが義務化される可能性があるということです。

実質、勤怠の適切な管理は現行法でもおおむね必要なものではありますが、今後法改正によってさらに法的な縛りが強くなり、労働基準監督署による指導の強化などが予想されます。

どのように労働者の勤怠状況を把握しているのか

使用者に労働者の勤怠を適切に把握する法的な義務はないといったものの、勤怠管理の責任の法規は労働基準法違反にあたってしまう可能性があります。それでは、どのようにして勤怠状況を確認するべきなのでしょうか。

厚生労働省、平成29年1月20日策定の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(PDF)」より7つの措置を確認してみましょう。

1.始業時刻と終業時刻の確認


1日どれくらい従業員が働いたか、労働時間が法律に触れないか確認するために、始業時刻と終業時刻の記録と管理を行います。

2.始業時刻と就業時刻の確認のための方法


始業時刻と終業時刻の適切な記録のためにガイドラインにあるのは、使用者自ら確認して記録すること、客観的な方法によって記録することの2つです。客観的な記録には、タイムカード、パソコン、ICカードを利用したものがあげられます。

3.労働時間を自己申告する場合


仕事によっては自己申告の方が管理しやすいこともあります。自己申告制を採用する場合は、使用者側が十分な説明をしたうえで、自己申告の時間とデータに記録された時間に、著しい乖離がないように管理しなくてはなりません。

4.賃金台帳の調製


使用者は、従業員の労働時間や休日出勤などの勤怠を適切に賃金台帳へ記入します。

5.関連記録の保存


出退勤など労働時間の記録にかかわる書類は、労働基準法にもとづき3年間の保存義務があります。

6.労働時間を管理する者の責任


管理責任者は、労働時間を適切に管理する責任があります。ここでの管理責任者とは、使用者だけでなく、人事担当役員や各部署の責任者なども指すので注意したいです。

7. 労働時間等設定改善委員会などの活用


必要に応じて、使用者は労働時間等設定改善委員会などの組織を活用して、労働時間についても問題や解決を考えていくことが推進されています。

あくまでガイドラインの範囲ではありますが、適切な勤怠管理のためにさまざまな措置を講じることが必要だとわかるでしょう。なお、項目の中で自己申告制の勤怠管理について触れましたが、実際のガイドラインではさらにこと細かに条件が設けられています。

現実的に考えると自己申告制を採用して勤怠管理をしようというのは、先に解説した実働時間との乖離も発生する可能性がありますし、困難といわざるをえません。

客観的に適切な勤怠管理を行うには

従業員の勤怠を適切に管理するために、厚生労働省のガイドラインでは始業時刻と終業時刻を使用者が直接管理すること、または客観的に管理することのいずれかが基本となっていることを紹介しました。それでは、そもそも客観的な勤怠管理とはどのようなものを指すのでしょうか。

ガイドラインに記載されている、パソコンによる管理、ICカードでの管理、タイムカードの管理についてそれぞれの管理の特徴を確認していきましょう。

■パソコンの使用時間で管理する


まず出退勤をパソコンの使用時間によって管理する方法です。パソコンが起動していた時間を調べれば、従業員が記録しなくても自動的に勤務時間が記録できるというもの。使用者は、従業員のログインの時間とログオフの時間を記録して管理します。

メリットは、デスクワークの仕事を管理するのに役立つということ。1日のほとんどが事務作業という職種やシステムエンジニアなどパソコンでの作業がメインの職種であれば、パソコンの使用時間=出退勤の時間とカウントしても実働時間との乖離はほとんどありません。

一方、事務作業がメインでない職種や、デスクワークがあっても外回りなどでそのまま直帰することが多い仕事は、正しく管理ができないためデメリットが多くなります。

■ICカードで管理する


社員証などをICカード型にして、会社に設置しているカード読み取り機に読み取らせ、出退勤を管理する方法です。導入するシステムによっては、交通系の電子マネーなど一般的に使われるカードをICカードとして採用できるものもあります。

読み取り機に読み込ませるだけなので便利ではありますが、問題はICカードを忘れてしまったり、紛失してしまったりする可能性があること。また、一般の電子マネーをICカードとして採用する方法もありますが、全ての社員が対象のICカードを所持しているとは限りません。

■タイムカードで管理する


中小企業などを中心に人気があるのがタイムカードによる出退勤の管理です。メリットは、使い方がシンプルで覚えやすいということ。アナログ式なので、年齢問わず取り入れやすい面があります。

一方のデメリットは、管理があやふやになってしまう可能性があること。タイムカードの保管方法にもよりますが、同じ場所に保管していると誰でも打刻できてしまいます。仮に本人の代わりに違う人がタイムカードを打刻したとすると、実働時間と差が発生して正しい労働時間の把握ができません。

また、タイムカードがアナログ式であることから、打刻された時間を確認して、パソコンなどに入力しなければならないものもあります。労働者だけでなく、管理者や労務担当にも負担がかかるのです。

■より適切な管理のためには


パソコンの時間による管理、ICカードでの管理、タイムカードでの管理を紹介してきましたが、どれも欠点になる部分があります。今後義務化が予想される中、適切な労働時間の把握はこのような方法のみでできるのでしょうか。

今後の法律改正も視野に入れて、適切に勤怠を管理するには、パソコンの時間による管理、ICカードでの管理、タイムカードでの管理をベースに、さらにスムーズに処理ができるよう弊社、MINAGINEの勤怠管理システムの導入がおすすめです。

こちらの記事では、MINAGINE勤怠管理とあわせて22種のおすすめ勤怠管理システムを紹介しています。まとめて一気に比較検討できるので、どの勤怠管理システムを導入するか迷っている担当者さまはぜひあわせてご覧ください。

まとめ

従業員の勤怠管理についての義務は法的にないといったものの、実質管理は必須のようなものです。労働基準法違反にならないためにも、適切に管理することが望まれます。

適切な勤怠管理をするためにも考えたいのが、今後の法的義務化を視野に入れた対策です。MINAGINEでは、そうした法改正も視野に適切かつシンプルに管理が行なえるよう、勤怠管理システムを展開しています。