もう迷わない!たった5分で理解できる振休と代休の違いとは

休日労働があったとき、代わりに従業員に休みを与える方法として、振休(振替休日)と代休があります。それぞれ、休日労働の代わりという点は同じです。しかし、大きく違う部分があります。それは、賃金面の取り扱いが変わってくることです。ともすれば、会社側が損してしまうこともあります。振休と代休はどう違うのか、どのような点に注意すべきなのか確認していきましょう。

意外と知らない振休と代休の違い 余分な割増賃金を支払っていませんか?

振休と代休では割増賃金の計算が異なっており、時間外労働や深夜労働などの要因にも左右されるため、もしかすると余分な割増賃金を支払ってしまっているかもしれません。

本紙では振休と代休の違い、割増賃金の計算方法、休暇管理ができていなかった際のリスクと対応法について分かりやすく解説をしています。

事前と事後で変化する休日の取扱

冒頭で、代休と振休はまったく同じわけではないと紹介しましたが、それでは、代休と振休をどうやって分けるかご存じでしょうか?代休、振休、どちらも労働日でない日に出勤したときの休みですが、事前に決まっているか、あるいは休日出勤後に決まったかで変わってきます。

振休は事前に決まったもの

振休は、休日と決まっている日を労働日にする代わりに、あらかじめ労働日の代わりに休みを設定するものです。これにより、従業員は休日労働しなければならない日と、休日労働の代わりに休みになる日を事前に知ることになります。

ただし、あらかじめといっても直前で従業員に知らせるのではなく、少なくとも休日出勤の前日までに知らせる必要があります。つまり、従業員は、前日までに休日労働しなければならない日を知っており、さらに振替休日がいつかも知っている状態にしなければならないということです。

もし仮に、従業員に事前に知らせずに休みを振り替えようとすると、それは振休ではなくなってしまいます。

代休は事後に決まったもの

休日出勤が決まっている場合、休日出勤の代わりに休みを設け、さらに休日出勤の代わりの休日をあらかじめ指定することを「振休」と紹介しました。それでは、あらかじめ休みを指定しない場合はどうなるのでしょう。

あらかじめ休日を指定せず、休日出勤があった後に休みを決めた場合の休日は「代休」といいます。ここでポイントになるのが、あらかじめ休日と労働日は入れ替えられていないことです。この場合、休日に働いた分は、労働日に働いたのではなく、そのまま休日に働いたことになります。

「振休」では、労働日と休日が入れ替えられることで、もともとは休日でも労働日に働くことに変更できますが、代休は休日のまま従業員を働かせていることになるのです。

つまり、労働日でない休日に従業員が出勤していることになるため、代休だと会社は賃金だけでなく、休日に働かせたとして従業員に割増賃金を支払わなければなりません。

振休と代休の取扱い

先に紹介したように、事前に労働日と休日を振り返るのが振休、休日労働という事実が発生した後に休日出勤の代わりとして休日を与えるのを代休と説明しました。ここで注意しなければいけないのが、事後の休日出勤の取扱い、つまり代休の場合の休日出勤についてです。

代休は割増賃金が発生する休日

振休は、先にも述べたように、あらかじめ休日と労働日を入れ替えるため、賃金は発生しても休日労働の割増賃金が発生することはありません。基礎賃金のままです。

問題は、事後に決まった代休の場合です。先にも述べたように、代休の場合、振り替えたとしても先に労働している休日出勤については労働日扱いにできません。休日のままとなるので、法定休日にかかわる割増賃金が発生します。

なお、法定休日とは労働基準法によって定められた休日のこと。曜日は決められていませんが、週1日あるいは4週の中で4日は法定休日となります。法定休日の出勤は、3割5分増しの割増賃金を払わなければならないため、先に代わりの休日を指定しなかった代休は会社にとって損です。

同じように休日と労働日を交換しても、たとえば時給1,000円の場合、振休なら休日労働した分が8,000円(1,000円×8時間)で済みますが、代休だと10,800円(1,000×8時間×1.35)にまで増えてしまいます。この場合、会社側は2,800円の損です。

なお、上に紹介したのは従業員1人の場合ですから、代休として休日出勤をした従業員が多ければ多いほど会社側が損することになります。上記の例なら、従業員10人であれば28,000円の損、100人なら280,000円の損です。さらに、代休が多く発生するようなら会社はさらに損をする計算です。

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割増賃金の計算方法は?

代休では休日出勤扱いとなり、給与を割増賃金で支払う必要があります。また休日出勤の他にも、割増賃金が発生するケースをおさえておきましょう。

通常休みになる予定だった土日や祝日に勤務する場合は、基礎賃金の1.35倍の割増賃金です。

さらに残業代は基礎賃金の1.25倍、深夜帯勤務の場合は基礎賃金の1.25倍でそれぞれ計算します。これらの割増条件が重複する場合、以下のように割増率を足し算して賃金を計算する必要があります。

・深夜残業

法定労働時間を超えた残業の割増率(1.25)+深夜勤務の割増率(1.25)=1.5倍

・休日の深夜勤務

休日労働の割増率(1.35)+深夜勤務の割増率(1.25)=1.60倍

ここで注意したいのが、休日労働の残業の場合には、残業代としての割増賃金にはならないということです。例えば休日に10時間勤務をしても、8時間を超過した分の割増率が「法定労働時間を超えた残業の割増率(1.25)+休日労働の割増率(1.35)」となることはありません。全体の10時間に対して1.35倍の割増賃金のみが発生します。

▼残業代や深夜残業などの割増賃金について詳しく知りたい方は別記事「もう手間がかからない!深夜所定の計算方法と残業の種類を徹底解説!」も合わせてご覧ください。

代休はどのようにして決めるのか

振休は、事前に決めておかなくてはなりません。これは、割増賃金にかかわることなので、振休にしたいなら絶対です。しかも、先にお話ししたように、振替日の前日には決めておき、知らせておかなくてはなりません。もし、振替当日に従業員に知らせたのなら、それは振休としては認められません。

それでは、代休の場合はどうでしょう。振休のように決定しなければならない日の決まりなどはあるのでしょうか?

結論から述べると、代休の取得日については明確な取り決めがありません。なぜなら、代休は労働基準法で明確に定められているわけではないためです。振休は割増賃金にかかわってくることなので、共通の決まりがありますが、代休については各会社で決めることになります。

ただし、労働基準法で定められていないからといって、独自のルールで判断したり、変更したりするようなその場限りの対応は良くありません。労働基準法で定められていないからこそ、会社がルールとして定めている就業規則に沿って判断するべきです。また、就業規則に沿って代休を振ることで、後々トラブルになっても「就業規則で決めていた」ということで説明できます。

たとえば、就業規則で定めていれば、従業員が休日出勤したとして、休日出勤後、2~3ヶ月後に代休を与えても問題ないのです。つまり、根拠があれば代休を取得させる時期が遅かったとしても、すぐに法令違反とはならないということです。

なお、基本的に付与する期限について決まりのない代休ですが、やはり一般常識的におかしい付与の仕方は指摘される可能性があります。たとえば1年後や2年後など、従業員が引き続き働いているかもわからないような期日での付与は不適切です。

代休の取得期限は?代休の管理方法も知っておくと便利!

代休に明確な取得期限は定められていません。ただし労働基準法の施行規則第19条の2第1項第3号では、休日勤務をした給与計算期間内の時間外労働が60時間を超えた場合、次の給与計算期間内までに代休を取得させるのが望ましい、とされています。

休日勤務と代休があまりにも離れてしまうのは避けたいことです。なぜなら先延ばしにしておくほど、労働基準法の第35条や会社の就業規則、労使協定などに抵触する危険性が高まるからです。代休の制度を設けるのであれば、労働者に不信感を抱かせないためにも速やかに取得させることが望ましいといえます。

このような代休の制度を設けるにあたっては、そもそも代休や有給を管理するための就業規則及びシステムづくりが大切です。代休の管理方法として有効だと考えられるのは以下の3つとなります。

  1. 休日勤務の申請時に代休日を決定する
  2. 代休ではなく「振替休日」で対応できるようにする
  3. 勤怠管理システムを導入する

特に勤怠管理システムの導入では人為的なミスを避けつつ正確な管理が可能になるので非常におすすめです。

▼代休の効率的な管理方法について詳しく知りたい方は別記事「代休の取得期限はいつまで?リスクを抑える代休の管理方法」も合わせてご覧ください。

法的な定めはなくても努力義務はある

代休は会社の就業規則をもとに付与するべきと紹介しましたが、もし仮に会社が決めた代休のルールに従業員が従わなかった場合どうなるのでしょうか。たとえば、会社が代休を取得するのは3ヶ月以内としているにもかかわらず、5ヶ月後に従業員が代休を取得しようとした場合です。

こうしたケースは過去に判例があるのですが、実は会社側だけでなく、従業員にも代休取得の努力義務があるとして、従業員側の請求は無効になっています。就業規則にあったというのも強いですが、会社側の主張が通り、従業員は代休でなく有給休暇を消化することになりました。この場合は、従業員側に非があったこととなりますが、反対に会社側も気をつけなければならないということです。

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まとめ

代休と振休、どちらも意味合いとしては同じように感じますが、法的な拘束、賃金面ではまったく別のものです。代休か振休かだけで、会社側は支払わなければならない賃金が変わってしまいます。

代休と振休自体は、事前に決めるか後から決めるかという違いだけですが、ただそれだけの違いで支払う賃金が増えるのは会社として痛いです。だからこそ、抜けがないようにしっかり勤怠について管理することが大切。

しかし、システムなしにきっちり管理するのは至難の業です。シンプルに、かつしっかり管理できるよう、ミナジンの勤怠管理システムの利用を検討してみてください。

意外と知らない振休と代休の違い 余分な割増賃金を支払っていませんか?

振休と代休では割増賃金の計算が異なっており、時間外労働や深夜労働などの要因にも左右されるため、もしかすると余分な割増賃金を支払ってしまっているかもしれません。

本紙では振休と代休の違い、割増賃金の計算方法、休暇管理ができていなかった際のリスクと対応法について分かりやすく解説をしています。