労働時間管理とは?従業員の勤怠を正確に把握するための3つのポイント
全ての働く人が、それぞれの生活に合わせて活きいきと働ける社会を目指した「働き方改革」。その一環として、2019年4月の労働安全衛生法改正によって、「企業が従業員の労働時間を客観的に把握しておくこと」が義務化されました。
これは規模を問わず、1人でも従業員を雇っている企業が対象となっています。
働き方改革が始まる2017年より以前は、一部の労働者はこの対象者から除外されていたこともあり、今もなお全従業員が対象ではないと誤認している企業も少なくありません。
そこで本記事では、労働時間管理について、企業担当者が知っておくべき大切なポイントを解説いたします。また従業員数別に、労働時間管理を簡単に行うことができるおすすめの業務管理システムをご紹介します。
全てお読みいただければ、勘違いしがちな労働時間管理の対象や、管理のために何が必要なのか、ご理解いただけるはずです。
ぜひ、最後までお読みください。
目次
労働時間管理の義務化とは?
まずは、労働時間の管理対象となる労働者の定義と、労働時間の把握が義務付けられている企業の条件について、解説します。
労働時間管理は全ての労働者に対して必要
労働時間管理は、労働者の健康確保を図るため、原則として従業員を雇う全ての企業に義務付けられています。
2017年より以前は、「管理監督者」と「みなし労働時間制の適用者」は、労働時間の把握が義務となる対象者から除外されていました。
しかし同年の1月20日「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」により、「管理監督者」と「みなし労働時間制の適用者」を含む、全ての労働者の労働時間を把握し、管理することがが義務付けられました。
ここで注意したいのが、会社法により「役員」は「使用者」と定義されており、「管理監督者」ではない、という点です。(日本の会社法における「役員」は、取締役・会計参与・監査役のみを指します。)
一方で、「執行役員」は役員というタイトルであるものの、同法では従業員として定められています。
▼会社法による定義と労働時間管理の必要有無
会社法による定義 | 労働時間管理の適用有無 | |
取締役・会計参与・監査役 | 役員(使用者) | 無 |
執行役・理事・監事 | 従業員 | 有 |
執行役員 | 従業員 | 有 |
管理監督者 | 従業員 | 有 |
みなし労働時間制の適用者 | 従業員 | 有 |
つまり労働時間把握の義務の対象となるのは、「会社法が定める役員」を除く全ての従業員である、ということを覚えておきましょう。
勤怠管理は原則全ての企業が対象!従業員の人数は関係なし
労働時間管理は、従業員数は関係なく、全ての企業が実施の義務を負っています。
従業員人数が少ないなど、小規模な企業は勤怠管理の義務がないと誤認している企業の担当者も少なくありません。
これは従業員数が少ないと、以下のような義務が発生しないことから、勤怠管理も不要だと混同している場合があるためです。
- 従業員5人以上雇った場合→社会保険加入義務発生
- 従業員10人以上雇った場合→就業規則の作成義務
しかし会社の規模に関わらず、1名でも従業員を雇っていれば、勤怠管理が必須になるので注意しましょう。
※労働時間の規定が適用されない自然や天候に仕事が左右される農業や水産などは、労働基準法第41条により、除外されています。
参考:e-gov|労働基準法
労働時間を管理する上で必ず押さえておくべき3つのポイント
働き方改革によって順次進んでいる法改正では、違反した場合に罰則規定が設けられているものもあります。
本章では労働時間管理において特に気を付けるべきポイントを、厚生労働省のガイドラインでに沿って、下記の3点に絞ってご紹介します。
- 法定三帳簿は、原則3年間の保存が必要
- 労働時間以外の勤務日数・休日出勤・残業時間・深夜勤務時間の管理が必要
- 自己申告の勤怠管理は原則、認められない
それぞれ、詳しくみていきましょう。
法定三帳簿は、原則3年間の保存が必要
労働者名簿、賃金台帳、出勤簿の3つの書類は、労働基準法107条から109条によって作成・管理が義務付けられており、まとめて「法定三帳簿」と呼ばれています。
労働時間管理は出勤簿に含まれますが、これらは3年間保存(保管)することが義務付けられています。
労働基準法第109条(記録の保存)
使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない。
出典:e-gov|労働基準法
この保存期間の義務に違反した場合には罰則規定も設けられており、保存期間を守らず廃棄したり紛失したりした場合、同法第120条に基づき、30万円以下の罰金を科せられる可能性があります。
また、法定三帳簿は労働基準監督署による監査の際に提出を求められることがあります。
労働時間以外の勤務日数・休日出勤・残業時間・深夜勤務時間の管理が必要
労働基準法では、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けることで、労働時間を適切に管理するよう、使用者に求めています。
しかし、従業員の自己申告を元に労働時間を管理するなど、長時間労働や割増賃金の未払いといった問題が生じており、使用者が労働時間を適切に管理していない場合があるのが現状です。
こうした状況を是正するべく、労働時間数に加えて
- 労働日数
- 休日労働時間数
- 時間外労働時間数
- 深夜労働時間数
といった事項を、賃金台帳として記録することが求められています。
これも違反した場合、30万円以下の罰金を科せられる可能性があります。
参考:厚生労働省|労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
自己申告の勤怠管理は原則、認められない
従業員の勤怠管理にあたり、自己申告のみで管理している場合は、使用者が労働時間を適切に把握していないとみなされる場合があります。
このため、自己申告による労働時間の管理は原則、認められていません。
使用者は、従業員の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録することが義務付けられており、原則として、
・使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
・タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。
の2つによる管理が求められます。
やむを得ず自己申告制にする場合は、本人に説明のうえ実態と乖離していないかを確認する必要があるため、現実的には客観的記録が不可欠です。
参考:厚生労働省|労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
正確な労働時間管理に勤怠管理システムがおすすめな3つの理由
労働時間管理の方法として、一般的に「エクセル」「タイムカード」「勤怠管理システム」の3種類が利用されています。
しかし、これまでに解説した内容を踏まえると、従業員の労働時間は勤怠管理システムで管理をすることをおすすめします。
勤怠管理システムであれば、前章でも解説した下記3つのポイントを、ストレスなく、全て満たすことができるからです。
- 法定三帳簿の原則3年間保存
- 労働時間以外の勤務日数・休日出勤・残業時間・深夜勤務時間の管理
- 自己申告の勤怠管理
▼項目別|労働管理のしやすさ
エクセル | タイムカード | 勤怠管理システム | |
法定三帳簿の原則3年間保存 | △ | △ | ◯ |
労働時間以外の勤務日数・休日出勤・残業時間・深夜勤務時間の管理 | ◯ | ◯ | ◯ |
自己申告の勤怠管理 | × | △ | ◯ |
この章では「MINAGINE就業管理」を例に、システムの導入で労働時間管理はどのように変わるのか解説いたします。
「MINAGINE就業管理」は、人事労務のプロフェッショナル集団である株式会社ミナジンが開発した勤怠管理システムで、労働時間管理をはじめとする様々な法改正にも対応しています。
出典:MINAGINE就業管理
詳しくみていきましょう。
1. 法定三帳簿の管理・保存が容易にできる
タイムカードでの管理では紛失の恐れもあり、また量がかさばるため、従業員の大量のタイムカードを正確に保管することは少し大変かもしれません。
また紙面での管理の場合、過去の記録を引き出す作業にも一苦労です。
エクセルのデータでの管理では、物理的なストレスはありませんが、保存場所がわからなくなってしまったり、誤ってデータを消去してしまうという恐れもあります。
MINAGINE就業管理には、過去の労働時間データをボタン1つで表示できる機能があるので、必要な時に必要な情報をすぐに取り出すことができます。
作成できる出勤簿は、労基署で指定のフォーマットで出力されるため、そのまま労働基準監督署への提出することも可能です。
全ての従業員の3年分の労働時間データとなると、かなり膨大な量です。
これらを3年間ストレスなく保管できるのは、勤怠管理システムのみといっても過言ではないでしょう。
2. 勤務時間以外の勤務日数・時間の管理が楽
従業員の勤務時間は、勤怠管理システムに限らず、エクセルやタイムカードでも管理・集計が可能です。
しかし、勤怠管理システムであれば、休日出勤をした分の振替休日や代休までシステムで一貫して管理できます。
MINAGINE就業管理には振替休日・代休申請の機能が備わっており、休日出勤と紐付けて、振替休日や代休を申請できます。
出典:MINAGINE就業管理
上記は申請フローの一例ですが、申請のフローも会社のルールに合わせて柔軟に設定が可能であるため、システム導入のために自社のフローを変える必要もありません。
3. 勤怠を自己申告しても客観性が保たれる
各従業員が各々エクセルに労働時間を入力し、提出する方法では、は「自己申告」になるので推奨できません。
タイムカードは出退勤時の打刻に自分以外の人が確認できるため、ある程度の客観性はありますが、在宅勤務や外出先での打刻に対応できません。
勤怠管理システムでは打刻機による管理だけでなく、PCの立ち上げとシャットダウンのタイミングで勤務時間を登録できる「ログオン/ログオフ方式」といった客観性を持った労働時間の記録が可能です。
その他サービスによっては、
- Webブラウザ刻
- PCのログオン/ログオフ
- Slack
- スマホ・タブレット
- ICカード
といった様々な方法での出退勤の打刻機能が備わっています。
スマートフォンによる打刻では、同時に位置情報が取得できる機能もあり、従業員が外出した出先のどこで、いつ出退勤したかという情報を把握できます。複数拠点での勤務が多い企業や、雇用形態が煩雑な企業でも、従業員それぞれの勤怠管理を正確に行うことができるでしょう。
外出先や在宅勤務の場合でもインターネットが接続されていれば打刻できるため、多様化する働き方に対応して客観的に労働時間を管理できるのは勤怠管理システムのみであると言えます。
企業規模別にご紹介!おすすめ勤怠管理システム6選
ここまでお読みいただければ、勤怠管理システムの導入に興味を持たれた方も多いと思います。しかし、数ある勤怠管理システムの中から、自社にぴったりのシステムを判断すること簡単ではありません。
本章では、会社の規模を一つの判断軸として、すぐに導入が可能な勤怠システムを6つご紹介します。
従業員が10人以下の企業におすすめ|無料版勤怠管理システム
数あるクラウド型勤怠管理システムの中には、無料で利用できるサービスがあります。
保存できる期間やデータに制限があるため、従業員を多く抱える企業で利用する場合には、かえって扱いづらくなってしまう場合があります。
無料版の勤怠管理システムは、従業員が10人以下など、比較的小規模な企業におすすめです。
従業員数が多くさまざまな機能を使いたい場合は、「絶対に失敗しない!勤怠管理システムのポイントとおすすめ3選を比較」もお読みください。
1.IEYASU
出典:IEYASU勤怠管理
IEYASUは完全無料でありながら、様々な機能が備わったクラウド型勤怠管理システムです。
利用できる機能は日次勤怠(タイムカード・打刻)、承認・申請、CSVデータ出力、各種設定、ICカード打刻、日報機能、レポート機能、残業(36協定)アラートなど、充実しています。
月額3,800円〜の有料プランではさらに、有給休暇の自動付与機能、時間単位の有給休暇機能、届出申請フロー機能、勤怠アラート機能、新労働基準法対応の残業管理レポートが利用可能な他、メールによる手厚いサポートも受けることができます。
▼サービス詳細
IEYASU
2.スマレジ・タイムカード
出典:スマレジ・タイムカード
スマレジ・タイムカードでは、多くの他サービスで有料の、申請・承認ワークフロー、シフト管理・プロジェクト管理といった機能を含めた、全ての勤怠管理システムを無料で提供しています。
スマレジ・タイムカード内で給与計算ができるのはもちろんですが、すでに人事労務freeeやマネーフォワード クラウド給与、 弥生給与などの、 外部サービス(給与計算)を利用している場合はシステムを提携することも可能です。
また、メールでの問い合わせは当日返信を原則としているなど、無料でもサポートが厚いことも魅力です。
▼サービス詳細
スマレジ・タイムカード
3.コーパス(Corpus)
出典:Corpus
コーパス(Corpus)では基本機能である勤怠管理はもちろん、給与計算機能、プロジェクト管理機能、ワークフロー管理機能、な、企業に必要な機能を無料で利用することが可能です。
また、勤務時間と作業内容を紐づけることで作業項目別のコスト、社員別のコストなどをとても簡単に表示させることができ、今まで見えなかったムダなコストが発見にも役立ちます。
▼サービス詳細
Corpus
従業員が10人以上の企業におすすめ|制限なしの有料勤怠管理システム
従業員を10人以上抱えている企業や、データの保存期間や容量を無制限に利用したい、といった場合には、有料プランの勤怠管理システムを利用することをおすすめします。
保存できるデータに制限がないだけでなく、有給取得時季や長時間労働を知らせるアラートや申請・承認フローといったさまざまな機能が利用できます。
従業員数が多くさまざまな機能を使いたい場合は、「絶対に失敗しない!勤怠管理システムのポイントとおすすめ3選を比較」もお読みください。
1.MINAGINE
出典:MINAGINE就業管理
「MINAGINE就業管理」は、人事労務に長けたメンバーが作成した、コンプライアンスに強い勤怠管理システムです。
労働基準法の遵守と業務効率改善を、両方実現してくれるのが特徴です。
打刻管理をはじめ、労働基準監督署が推奨するフォーマットでの出勤簿の出力が可能なため、企業担当者のチェック工数を削減してくれます。
また、業務効率を上げてくれる下記の機能も利用できます。
- 交通費・宿泊費の精算
- ストレスチェック機能
- 組織分析レポート
ストレスチェック機能では、従業員個人の日々の業務時間を細かく管理し、メンタルヘルスの維持ができるようサポート。働きすぎといった場合には、従業員と管理者の双方にアラートが送られ、未然に大事を防ぐことができるようになっています。
また、組織分析レポートでは休暇の取得率や離職率を算出できるので、従業員が快適に勤められる企業作りのデータを得ることができます。
ただ従業員の就労データを集めるだけでなく、管理側の業務効率化や理解促進まで考え抜かれた面倒見の良いサービスです。
▼サービス詳細
MINAGINE就業管理
2.ジョブカン
出典:ジョブカン
ジョブカンは10年以上の歴史を持つ、クラウド型勤怠管理システムです。これまで約5万社以上の企業が導入してきた実績があります。
ジョブカンでは、自社に合った社会保険労務士や公認会計士、税理士を探せる「ジョブカン認定アドバイザー検索」サービスも用意。地域や得意分野を選択してできるので、よりスムーズに探せるよう配慮されています。
また、日本語以外にも英語・韓国語・タイ語・ベトナム語の切り替えも可能です。外国人従業員の多い企業におすすめです。
▼サービス詳細
ジョブカン
3.KING OF TIME
出典:KING OF TIME
KING OF TIMEは、他社より豊富な打刻システムを用意しているなど、さまざまな業界や働き方に対応したシステムを多く用意しているのが特徴です。
特に、打刻方式が他社より豊富に取り揃えられています。テレワーク化を進めている企業にぴったりのPCやスマートフォンからの打刻はもちろん、飲食店などの職場への出勤がある企業にもぴったりの顔認証などの打刻方式を用意。導入時に必要な機材も、同社公式サイト(KING OF TIMEより購入可能です。
また、法改正によるシステム変更や利用者からの要望を反映させた無料アップデートを年3回実施。労働基準法を遵守しつつ、常に最新の使いやすいシステムを利用できます。
▼サービス詳細
KING OF TIME
企業規模別のおすすめ勤怠管理システムをご紹介しましたが、もう少し多くの種類をみてみたいご担当者さまもいらっしゃるでしょう。こちらの記事ではMINAGINEが厳選した22種の勤怠管理システムをまとめて紹介しています。各システムの強みや特徴を一気に比較検討できますので、ぜひあわせてご覧ください。
まとめ|労働時間管理は勤怠管理システムでストレスフリーに行おう
本記事では、労働時間管理について、解説いたしました。
企業規模にかかわらず、従業員を1名でも雇っている場合は労働時間管理が義務付けられており、さらにその管理には客観性が求められます。
これまで労働時間の管理を従業員の自己申告に任せていた企業や、従来の客観性のない方法で管理を行なっている企業は、行政指導の対象となる可能性もあります。
働き方や法律の変化に対応し、労働時間に限らず勤怠管理における全ての煩わしさを一気に解決してくれるのは、勤怠管理システムだけです。
勤怠管理システムを導入し、労働時間をストレスフリーに管理しましょう。