“残業削減を行うための手法”を取り入れて成功した事例を紹介


日本は、以前から「働き過ぎ」といわれている国です。賃金が支払われないサービス残業の問題、超過する残業時間、それによって過労が引き起こす心身的な病気などが取りざたされ、早期改善を図るべきところにきています。

最近では、少子化による人手不足問題も絡み、ますます深刻な問題となっていくと予想されています。

問題視される残業が長期化する前に、企業としてできることを早急に取り組んでいきましょう。

残業削減が注目されているわけは?

私たちが日ごろよく使う「残業」という言葉。実は、「残業」という言葉は法律用語ではないのです。私たちが「残業」と言葉にしているのは、労働基準法における「時間外労働」のことをいいます。

以下で、残業が問題視されているわけを見ていきましょう。

サービス残業は企業の体質?

残業(時間外労働)とは、具体的には、「1日の実労働時間-8時間(法廷労働時間)」のことを指します。

社員が時間外労働をした場合、企業は割り増し賃金を支払わなければならないと法律で定められています。(法第37条)

参照:労働基準法・労働基準監督署ガイド

時間外労働を行っているにも関わらず、その分の報酬が支払われず「サービス残業化」してしまっている問題もよく聞かれます。

サービス残業は、企業が「人件費を抑えたい」という思いから起きてしまっていると考えられるでしょう。

サービス残業が行われる理由として、残業を規制する法律に抜け道があることも問題点の1つです。その代表的な法的制度は3つあります。

1つ目は「固定残業性」です。こちらは残業時間に関わらず一定の報酬を支払うという制度です。この制度はあらかじめ残業時間を決め、それを超えた場合は追加で残業代を支払うことになります。

2つ目は最も問題点となりやすい「みなし労働時間制」です。実労働時間に関わらず、一定時間労働をしたこととみなす制度です。この制度は外回りの営業マンやツアーガイドなど特殊な勤務体系の人に適用されることが多くあります。

3つ目は残業代の対象から外れる「管理監督者」です。法律上(労基法41条3号)、管理監督者には残業代を支払う必要がありません。立場上、給与が高いことからこのような運用が認められています。

残業が必要となる根本的な理由

残業が必要となる理由として、顧客からの不規則な要望に対応する必要があることがあげられます。終業時間間際に顧客から何か要望があれば応えないわけにはいきません。顧客からはいつどのようなようぼうがあるかわからないので残業になるケースがあります。

また、仕事の繁閑の差が大きく、繁忙期には業務量が多くなるため時間外労働が増えることがあるでしょう。

通常は、忙しくなる繁忙期に人を多く採用することで対応すべきところ、一度雇い入れると簡単に人材を解雇することはできないことが理由で増員が躊躇されてしまうのです。

一度雇い入れてしまうと、企業は閑散期のときに余分な人材を抱えてしまうことになります。そのようなリスクを抱えることを防ぐために正社員を雇うことができず、結果一人ひとりの労働時間が増えてしまうことになるのです。

繁閑期に関わらず常に仕事量が多く、非効率な仕組みができあがっている場合もあります。考えられる原因は、作業環境が悪いために生産性が落ちてしまっていること。これらはすぐに解決するものではありませんが、一度見直すべき項目でしょう。

残業を大幅に削減するために必要なこと

残業が続くと、心身ともに社員に負担がかかってしまうことになります。また、企業側からすると、時間外賃金を支払わなければいけないため計画よりも人件費がかかり、両者にとって望ましい状況ではありません。

残業を大幅に減らすために必要なことを見ていきましょう。

「ノー残業デーの導入」や「事前申請制にする」

ノー残業デーとは、企業が定めた曜日に残業することなく社員を一斉に退社させることをいいます。あらかじめ、「残業をしてはいけない」と決まっているため、業務の効率化を進める取り組みを目的としているのです。

社員にとっては効率があがって残業が減り、かつ早く帰ることができるため、モチベーションの向上につながると考えられます。また、企業側は時間外の人件費を削減できるというメリットがあります。

一方で、「事前申請制」とは、その名のとおり事前に残業することを申請する制度のことです。申請して、それが認められた場合にのみ残業ができるので、不要な残業を減らすことができるでしょう。

メリットとしては、企業側は部門ごとで発生している残業の理由や、残業量の実態を把握することができます。

「業務の多能工化」と「残業時間に応じて人事評価制」

「業務の多能工化」とは社員一人ひとりが別の仕事を受け持つのではなくて、各社員がさまざまな業務に携われるよう、担当の仕事をローテーションして、多能工化を図ることです。

その結果、担当以外の仕事をフォローできるようになって、特定の社員に残業がかたよることを防ぐことができます。

「残業時間に応じて人事評価制にする」ためには、管理職の人事評価の項目部分に「部下の残業時間」を追加します。つまり、残業時間も考慮して管理職の評価を決める制度です。

部下の残業時間が多いと管理職の評価にも影響するので、残業時間削減に取り組むようになる、と考えられます。

残業時間削減の事例を紹介

父親の仕事と育児両立を支援する「NPO法人ファザーリング・ジャパン」は、2016年12月12日に、「長時間労働削減施策緊急アンケート」の結果公表をしています。こちらのアンケートをもとに、残業時間削減の事例をご紹介します。

「イクボス」企業へのアンケートを実施

「イクボス企業同盟参画企業」とは部下のワークライフバランスを考えたものです。自ら仕事と私生活を楽しむことができる「イクボス」上司を増やそうという取り組みに賛同する大企業によって成り立っています。

こちらの「イクボス企業同盟参画企業における長時間労働削減施策緊急アンケート」から残業時間を削減する事例を取り上げます。

参照:NPO法人ファザーリング・ジャパン

長時間労働削減のポイントは「強制力」

企業が実際に長時間労働を削減するために取り組んだ結果、効果が高かった施策をランキングでご紹介します。

1位 PC強制シャットダウン
効果あり:4社 取組社数:4社 効果率:100%

2位 ノー残業デー(一律 例:全社毎週水曜日)
効果あり:27社 取組社数:49社 効果率:55%

3位 強制消灯(その後、点灯不可)
効果あり:2社 取組社数:4社 効果率:50%

4位 PCログ管理(タイムカードとPCログオフの時間かい離の把握)
効果あり:17社 取組社数:35社 効果率:49%

5位 管理者による見回り&残業者への声掛け
効果あり:10社 取組社数:21社 効果率:48%

ランキング上位の取り組みを見るとわかるように、個人的な取り組みだけでは実現できないと考えられます。企業が一丸となって考案し、働きかけることが重要であるといえるでしょう。

引用:イクボス企業同盟参画企業における長時間労働削減施策緊急アンケート

まとめ

残業が多いうえに、サービス残業化してしまうと、モチベーションが下がり生産性も落ちることになります。同時に、社員の不満は募り離職につながります。

このような事態にならないために、社員が気持ちよく働ける環境を整えることが大切です。事例で紹介したように、最近では残業を少なくするために取り組む企業が増えてきています。

しかし、働く時間が減っただけで実質の業務内容は同じ場合、社員の負担は増加する可能性があります。時間の制約があるからこそ、効率的に働くことができる一方で、ストレスを抱えることになるかもしれません。

時間外労働を減らしながら、社員が健康的に働ける環境を整えることが大切といえるでしょう。