自社の給与金額の決め方

2015年11月11日  

 
人事屋の仕事をしていますと、多くの経営者・人事担当者の皆さまより、「うちの給料は高いですか、安いですか?」と聞かれる事がよくあります。しかし、当然ながら、金銭的報酬の適切な水準と言うのは各社各様で、何とも言えないというのが答えです。業種や職種、ビジネスモデルなどによって払える給料の金額は異なります。
 
そこで、本日は金銭的報酬を決定するのに考慮するべき基準項目についてお話ししたいと思います。

 

(1)各社の利益水準
(2)労働分配率
(3)同業種・同職種との比較
(4)従業員の年齢・家族構成・学歴・性別など

 

(1)各社の利益水準

 先ずもって重要なのは、会社の利益水準です。(営業利益に人件費を足した)利益の金額です。
この利益金額が人件費の原資となります。この利益金額が、(設備や原材料価値などではなく)役員・従業員の生みだした付加価値です。この利益金額を従業員数で割りこんだ金額(一人当たり付加価値金額)を、一人当たり付加価値金額とします。

これ以上の給与を支払う事は不可能です(但し、事業が投資フェーズで、資本金や借入金で資金を厚めに持っている場合はその限りではありません)ので、先ずは、自社の事業モデルの収益性をよく見てください。

 

(2)労働分配率

次に、一人当たり付加価値金額の何パーセントを今現在の人件費として支払うかを決めます。
付加価値金額全てを給与として支給してしまうのは、給与を全て消費に遣い切ってしまうのと同じ事で、貯金や将来に向けた投資をする事が出来ません。

会社の安定性(自己資本比率。どれだけ将来に備えて貯金しておくか)、未来投資(更なる成長と発展を目指して、目の前の収益ではなく将来の収益を作る為の投資)、などを考慮して、付加価値金額からどれ位の割合を人件費に充当するのかを決定します。
会社の規模や成長ステージなどにも依りますが、優良企業の35%前後(給料の3倍稼ぐとよく言われますが、ここから来ています)を目指したいです。

 

(3)同業種・同職種との比較

採用(特に、中途採用)における優位性を考慮すると、同業種・同職種の他社における給与水準は無視出来ません。定期的に、同業他社の求人情報をチェックし、少なくとも同等水準は維持したいです。

裏を返すと、当社では同業他社と同じ水準を出せないという事は、自社の事業モデルや収益性が同業他社に劣っている可能性があるので、商品・サービスの差別化戦略を見直す必要があるかも知れないです。

 

(4)従業員の年齢・家族構成・学歴・性別など

金銭的報酬は、万人共通の価値基準・測定基準で評価されますので、他人と比較し易いのです。
社内外の友人や学生時代の友人などと比較して、自分の給与が高いとか安いとか思いがちです。
また、自分は良くても、家族の状況がそれを許さないという事も大いにあり得ます。例えば、子供の教育コストであったり、家族の病気があったりする訳です。いわゆる、生活給の要素です。

特に、日本の物価水準・生活水準・教育コストなどに照らし合わせて、自社の給与水準が低い場合には、より生活給の意味合いが強くなりますし、経営者はこの水準を上回るように意識をしないといけません。

これは、私の経験則からの感覚値なので、極めてデタラメではありますが、現在の日本の労働者の意識としては、生活給として以下の水準をクリアしたいと考えています。
逆に、この水準をクリアしていなければ、結婚はしない・子供は作らない・共働きする、など給与水準に合わせた家族構成を考えがちです。
 

20~28歳  : 300~400万円
29~35歳  : 400~600万円
35~55歳  : 600~800万円
いつかは    : 1,000万円

 
従業員の属性によって給与に差を設けるという意味ではありません。
同じ会社で同じ仕事をしているならば、勿論の事ながら、能力や成果に応じて公平に給与金額は決められなければいけません。
 
しかしながら、もし自社の給与水準が上記水準をクリアしていない場合には、扶養家族手当など本来の成果・能力に関係の無い生活給的要素の手当支給も考慮するのも従業員満足度を高める方法と言えます。
こちらは、最も重要な能力・成果主義に反するものなので、自社の築きたい社風や経営者の考え方などを考慮しながら、慎重に採用するべきで、手当を支給される人が当然の権利として捉えるのではなく、「周りの仲間に助けて貰っている、もっと頑張って成果を上げよう」と考えてくれる様な取り組みとセットで取り組まないといけません。
 
また、ベンチャー企業などこれから伸びていく成長市場で勝負をされている企業においては、優秀な新卒社員を積極的に採用する事により、会社全体の平均賃金を抑えながら優秀な人材を活用出来る可能性があります。
20~28歳の若手人材は、未婚率が高いので目の前の収入よりも成長機会を重視する傾向があります。
また、20代では大手企業と中小企業の賃金格差が比較的小さい事から、大学時代の大企業に就職した友人と比較しても、さほど大きな差が付きません。経験値の少ない若手社員でも、地頭の良さと頑張りで成果を上げれる仕組みを作れたならば、競合他社に勝てるチャンスをつかむ事が可能となります。
 
反対に、経験値がものを言う様な労働集約型領域においては、現在の高齢化社会を考慮し、シニア人材の登用が検討できます。大手企業を定年退職された方は、家のローンも払い終わり、お子さんも自立されていれば、高額な給与をあまり必要とされません。
それよりも、次世代の育成や仕事そのものの楽しみなど「やりがい報酬」を重要視して仕事選びをされる方も沢山いらっしゃるので、大いに活用出来ます。
また、転勤・労働時間に制限を設けて働きたい主婦の活用も有効です。給与以外の雇用条件を各人の生活環境に柔軟に対応してあげる事で、本来の賃金水準よりも低い給与でより優秀な人材を活用する事が可能です。

 

最後に

最も重要な事は、経営者としては「安く使おう」という意識ではなく従業員の幸福を実現しようという意識です。
また、従業員は「楽して稼ごう」という意識ではなく「少しでも周りの役に立とう、給料以上の成果を上げよう」という意識を持つ事です。
 
 
誰かが得をして誰かが損をするのではなく、全員が互いを思いやり、自らが他人の役に立とうとする組織風土を醸成する事なのです。

 
 

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