「成長加速を実現させる組織の共通点」 第2部書き起こしレポート

2019年4月22日、「”元東証上場推進担当役員”が語る!上場を実現する”成長を加速させる組織創り”とは」と題する、共催セミナーが行われました。本セミナーの第2部「成長加速を実現させる組織の共通点」の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー

株式会社アトラエ
川本 周

新卒で当時未上場の株式会社アトラエ入社。 入社後、エンジニアなどIT系に特化をした転職サイト『Green』のコンサルティング営業。経営者や採用担当者に対して『Green』を活用した採用支援を実施。その後、組織課題は採用に留まらないということで、新規事業の組織改善プラットフォーム『wevox』へ異動。現在は、年間1000名を超える経営者や人事担当者へお会いをしながら、エンゲージメントを軸にした組織改善を支援。

株式会社アトラエとは

はじめましてアトラエの川本と申します。宜しくお願いします。私の方からは森田先生とまた違った観点で組織を成長させていくにはどうしたらいいのかというところをお話出来ればと思います。今回は弊社が運営をしている組織改善プラットフォームのwevoxのご紹介というよりは、その前段階にあたってこれからの時代どういう組織運営をしていけばいいのか我々の会社の観点からお話し出来ればと思います。どうぞ宜しくお願いします。

早速、アトラエ知ってますよという人いらっしゃったら手を上げてもらえますか。ありがとうございます。ようやく知名度も上がってきまして嬉しい次第です。まず、我々の紹介をさせていただいてその上で先ほどのテーマについてお話出来ればと思います。我々はアトラエという会社は、昨年度41名の時点で東証1部に上場した企業になります。今回のテーマをお話するにあたりまして、2つの観点から弊社なりの見解をお話できればと思います。まずは1つは我々が運営をしている事業領域にございます。自分達ではピープルテックという造語を作って人と人との可能性を拡げていく事業をテクノロジーを駆使しながら展開しております。一般的にはHRテックと呼ばれる領域のサービスを運営しています。主に採用系のサービスの「Green」にて、人を採用することを支援し、そしてその人を定着活性化していく組織体制を先ほどの「wevox」、また垣根を超えて人と人との出会いを加速していくビジネスマン向けのマッチングアプリ「yenta」という三つの事業を展開している会社になります。こういった事業的な観点と、もう1つの観点が、我々自身自らが創業当初から組織作りにかなりこだわってきた会社という点になります。最近では、おかげさまで、さまざまなメディアに取り上げ頂く機会が増えてきました。例えば弊社の特徴の一つとして我々には役職というものがありません。なので出世という概念自体が存在がせず肩書きもありません。おそらく東証1部に上場している会社で唯一のフラット組織かと思っています。

また、少しずつわかりやすい形で数字が出てきたというところもありまして非常に人が辞めない中で年々生産性が上がり、GPTW、日本における働きがいのある会社ランキング(Great Place to Work)で今年2019年度小規模部門で1位を取ることが出来ました。アジアでも5位と日本企業で唯一の一桁台になり様々なところで会社を評価していただけるような状態にやっとなってくることができました。ですので、繰り返しになりますが、今回は運営している事業の側面と自身が自ら行ってきた組織作りを実際にやってきたこの2つの観点で今回のテーマの成長を加速させる実現する組織とはどういうものかお伝え出来ればと思います。

やる気や働きがいの状況

早速本題に入りますと、日本の状況というところで言いますと非常に良くないです。日経新聞にも上がり話題になりましたがそもそも日本には仕事に対して熱意を持っている人が少なく139カ国中132位でありやる気のある社員はわずか6%しかおらずやる気のない社員が70%で残りは周りに不満を垂らしているそんな状況であります。生産性であったり一人当たりのGDPも低い状況でこちらも昨年度話題になった記事ですが平成元年時点では、世界の時価総額ランキングでは50位中32社が日本の企業だったのに対し昨年度平成30年時点ではわずかトヨタの1社のみと平成という時代は失われた30年と呼ばれています。平成生まれの私はこの状況に憤りを感じておりここから変えていくためにはどうすればいいのかお話ししたいと思います。

まず、組織運営や市場においての前提条件が変わってきていることがあります。かつてはいかにミスを最小化して効率のいい仕組み、オペレーションを作っていくかというところに組織としての競争優位性がありました。それに対して、今後の時代はクリエイティビティやアイデア、多少のミスは許容しながらでも挑戦や変化をし続ける組織が競争優位になっていくと考えています。従来の組織のあり方は労使関係の中で会社の内と外に大きな壁を作りながらヒエラルキー型の組織で先ほどのオペレーションを回していました。

これからの時代の3つのキーワード

しかし、これからの時代は「チーム」と「ビジョン」と「自律分散」の3つがこれからの競争優位のキーワードになっていくと思います。
先ほどの労使の関係でいうと労働者側はいかに最小限の労働で最大の対価を得るかという思想になるが、一方で経営者はいかに最小のコストで最大のリターンを得るかという発想になり利害が一致しない。これでは強い組織は作ることができません。そこで必要なのは、「何」をやるかではなく、「なぜ」やるのかの部分としてビジョンを掲げ、経営者もチーム一丸となり、誰かが誰かに命令していく型ではなくそれぞれが自分達の考えや思いで自律分散的に進めていくことが今後の組織において大事であると考えます。こういった変化に強い組織がポイントだと我々は考えています。

ここで大切な事はテクニックや方法論ではなく従業員の皆様が高い意欲を持って働ける組織を作る事に尽きると考えています。これでなぜ成長につながっていくのかですが、我々の考えている成長サイクルがあります。まずは従業員の意欲、そして人が今後の時代はより大事になってくると考えています。なので、社員の物心両面の幸福を追求していくことによって採用市場において良い人材の獲得が出来、獲得した人材の定着や活性化をしていきます。そこで、正しい価値観でもって事業を創造運営していくことによって売上や株式市場での評価につながりさらに会社の社員の安心出来る一歩につながっていく、このサイクルを続けていくことが大事だと考えて我々も実践しております。そして、前述の通り、年々一人あたりの生産性を更新しながら企業として成長をしてくることができております。

組織作りの3つのポイント

では、そのような組織をどう作っていくかは大きく3つポイントがあります。一つ目はソフトの改善、二つ目は対話・コミュニケーション、三つ目はマネジメントスタイルの変更です。具体的にソフトの改善がファーストステップです。ここでいうソフトは会社の文化や考え方であったりマインドを指しています。一方で対比のハードは制度やルールを指しています。

弊社が運営をしている組織改善サービス「wevox」でのお客様とのお話において、どういう人事制度や評価制度を入れれば良いですかというお話を頂きます。ですが、ここで大事なことはいきなりハードの改善ではなく、なぜそういう状況なのか深掘りしていくソフトの改善がファーストステップだと思います。いきなり制度を作ると与える側と与えられる側の関係性になり浸透やお互いの腹落ち理解が揃わずにうまくいかないことが多いので、当然変化にも強くありません。まずは素の考え方を改善していくのが大事だと考えています。二つ目は対話・コミュニケーション。最近でこそ、少しずつ対話を推進していく流れが出てきていると思いますが、人間効率を字面だけ追っていくと、対話は無くしていく傾向にあります。お互いの信頼関係をベースにいいものを作っていく上でそもそも他人が何を考えているのかわからないので対話をしないといけない、そういった意味で対話は重要だと考えています。wevox上でも対話をベースとして組織改善を進めていく企業様はエンゲージメントでは改善傾向にあり、そういったデータからも対話は重要だと考えています。

最近はKPTやOKRなどフレームワークが出てきているので活用すれば対話を推進出来ると考えています。三つ目のマネジメントスタイルの変更は、これからの時代は選択肢が多く価値観の多様化していく中でトップダウン的にマネジメントをしていくのではなく後ろからお尻を押していくような形、サーバントリーダーシップと呼ばれるがその人にとって一番頑張れる栄養分をマネージャーの方が見つけてあげてそれを後ろから押してあげるようなスタイルが大事だと考えています。ですのでこの3つの点は今後成長していく組織になる為の一つポイントだと考えています。社員の意欲を高めてクリエイティビティやアイデアを最大限に発揮出来る組織を作っていく事が変化にも強く成長していく組織につながっていく大切なポイントだと考えています。

エンゲージメントについて

ではそのような企業はどういう状態を意味するのかというところで、ここでエンゲージメントが高い状態を作り上げていくという話になりますが、エンゲージメントの語源はエンゲージメントリングからきており婚約とか契約を表す言葉で人と何かの間の関係性の質を見ていく指標になります。これを組織に置き換えると従業員の組織や仕事に対する自発的な貢献意欲を見ていく指標となります。ES(従業員満足度)との違いは、ESは会社から与えられているものに対しての評価であり満足度でしかない。なので、会社側が給与や福利厚生を与えれば不満足ではない状態は作れるが活力やパフォーマンスの向上にはつながりにくい。またモチベーションは、個人それぞれの動機であり例えば女性にモテたいとかお金が欲しいなど必ずしも仕事や組織に関係ない部分もある。そのため我々はこのエンゲージメントを採用しています。

エンゲージメントを上げていくとどうなるのかというと当然一人一人の働きがいや人間関係の関係性が強まり結果として組織のパフォーマンスが上がりその一方で離職や欠勤などネガティブな部分が改善されていく指標と言われています。実は欧米の方が進んでいてエンゲージメントを世界的な成長企業は経営の中に取り入れて経営をしています。背景としては、元々従業員満足度を重視する流れは10年程前からありましたが従業員満足度を重視した結果、従業員満足度が高いにも関わらず経営破綻する会社が現れてきました。その状況を受け、経営として追いかける指標が別にあるのではないかという課題感からこういった企業が先進的にエンゲージメントを経営の中に取り入れてきました。

実は、日本においてもメディアにエンゲージメントの記事が上がってきたり経産省様や厚労省様などの官公庁様も今は非常にエンゲージメントに注目しています。働き方改革の実態として働きやすさ改革みたいなものが多くいわゆる働きがいや活力を上げてパフォーマンスを上げていくという部分に関して取り組みがうまく出来てないところもあります。実は官公庁の方が実際に弊社の組織に視察に訪れられていたり、一部の官公庁では実際にwevoxを導入頂いたりもしています。自分たちで実際に取り組みながら、様々な施策を考案していくという姿勢です。まさに日本全体でも注目をしている形になっています。ですので、ここまでのお話をまとめさせていただくと、成長をしていく組織において大事な部分は社員のエンゲージメントを高められる組織作りの経営をしていく事だと我々は考えているというのは本日のテーマに対する解となります。

事例やデータのご紹介

ここからは実際の弊社の事例やデータのご紹介になります。まずwevoxのご紹介をさせていただきます。先ほどのエンゲージメントをわずか3分のアンケートで測定する事が出来るサービスです。現在700社以上にご利用頂いており自社内や他社とも比較出来るサービスになっておりエンゲージメントを簡単に可視化して次の改善につながることができるサービスになっています。今からお見せするのが自分たちで使っているアトラエのエンゲージメントスコアの結果になります。100点満点で縦がグループで横がエンゲージメントの改善のための9つの要素ですがアトラエにおいては高い状態になっています。700社の中で平均は100点中67点くらいになっており80点を超えてくると非常に高く上位の10〜20%になります。

ここで、実際に、弊社がどのような組織運営を取っているかといいますと、大前提はルールは最小限でいい、まずは意欲を持っている社員が無駄なストレス無くいきいきと働ける組織であれば手段はなんでもいいと考えています。余計なルールは一切ありません。基本的には性善説で全てを運営しております。その一つの表れが先ほど冒頭でご紹介した役職がない組織や360度評価によって全ての給与を決めている事です。自分が指名した5人からの評価によって自分の評価が決まるという給与の評価制度を設けています。また、全社員が経営者レベルの情報を取得出来ます。いわゆる他社員の給与情報以外の全ての情報に触れる事が出来ます。そして全社員に、オーナーシップをもってもらうインセンティブとしてRS(リストリクテッド・ストック)が付与されて株式を持っています。

また、働き方も様々でありどこでどういう形で働いていても良く最低限の道徳や倫理に反する事以外は何をしても良いです。こちらはアトラエの執務スペースの風景ですがお子さんが夕方くらいにオフィスに帰ってきてお母さんと宿題をしていることがよくあります。過去にペットを家に置いておくのは可哀想という事で犬が半年くらい出社していた時期もありました。基本的には何をやっても良いという会社です。働きがいがありすぎる為か、仕事に夢中になる社員が多いので働き過ぎる社員が多いので3年連続勤続すると1ヶ月間休暇を取れるサバティカル3という制度も設けていて海外に行ったりインプットしたり違うことにチャレンジしたりする環境もあります。

「対話」という観点では、2年くらい前からATPF、アトラエ的プレミアムフライデーとして1ヶ月に1回全社でいろんなメンバーといろんなテーマで会社について話すというのを設けています。その他、事例を申し上げますと、役職が無いのもそうですがポジションも自由です。こちらの写真は、社員がテレアポをしている風景です。このときは、ある大規模なイベントで名刺交換をさせて頂いた方達にいるシーンです。でも実は彼らのポジションは、奥から順にエンジニアとインターン生とデザイナーとなっており、本来はテレアポをするようなポジションではありません。例えると、サッカーでいうフォーメーションを決めているイメージで、今この局面で試合に勝つ、成果を出すためには開発やデザインより目の前の1日2日であればアポを取って出来る限りセールスをするのが良いだろう考えてフォーメーションを変えながらやっています。

2種類のエンゲージメント

ここからは大きく話が変わりましてデータ的な話になります。エンゲージメントメントを大きく分けるとワークエンゲージメントとエンプロイーエンゲージメントに分けられます。仕事好きの対仕事と、会社好きの対会社になります。我々はツールを使ってその人にとってなんの要素がエンゲージメントをあげるのかを解析する事が出来ます。会社によって当然従業員が重視するエンゲージメントは異なります。ベンチャー企業がイメージしやすいと思いますが小規模な企業の従業員様は会社好きの方がエンゲージメントに影響するケースが多いです。社長が好きなど想像の範疇ですが会社好きが影響していると思います。

一方、数百名以上の大手企業は仕事好きの方が影響があるというデータが出ており、さらに仕事好きの中でも約30個近い項目の中で影響度の強弱のランキングがあります。働き方改革で重視されがちな給与とか労働環境は実はそれほど影響を与えていない、トップ6を見ていただくとやりがいや能力を活用出来ているかだったり成長機会や上司との関係性という所の方がエンゲージメントには影響しているというデータ出ています。ですので、先ほど申し上げたマネジメントスタイルの変更のポイントになるような上司の項目はかなり重要になってくる事と上司とのコミュニケーションの量や質がエンゲージメントに大きく影響しているというのがありまして、wevoxのデータ上では1on1を実施している会社とそうでない会社では、実施している会社の方が圧倒的に点数がいいという結果が出ています。

その中でもプライベートの話をしている方がより点数がいいという結果もあります。1on1が良いというより1on1の機会の中で効果的に行っていくというデータになっています。またエンゲージメントスコアは明確に離職率と相関性があります。我々が今持っているデータでいくとその会社の平均点の15点低い層は離職率が20〜25%と高く危ないゾーンになっています。こういったものがツールを通じて出てきていますというお話です。あとは、組織改善において経営者のコミットは大事だがそれだけではダメで、(スライドの)赤線が経営者や人事などの会社の一部の人達だけが推進したエンゲージメントスコアになっています。

一方で青線のように経営者や人事の方はもちろんのこと現場のメンバーが自ら自分たちのチームがどうやったら良くなるか議論しながら進めていったものは実際改善をしています。何かを変えてく時に一部だけではなく全体で一致団結で変えていくことが大事になります。あと実は、年齢が上がる、勤続年数が増えるとエンゲージメントが下がる傾向があります。役職、昇級してる人を含めたデータでもそうであり昇格している人を外すとさらに下がります。感覚的には大丈夫だと思っているところも実は違うこともあります。それをいろんなツールで可視化する事が出来ます。

上場前後のエンゲージメントスコアの変化

せっかくですので本日のテーマである上場の前後でどういう風にエンゲージメントスコアが変わったのか我々のデータをお見せしたいと思います。管理部門の支援の項目、職場周りで支援をもらえているかに関しては我々は上場の6月頃は下がってしまっているというデータです。オレンジ線と赤線に分かれていましてオレンジ線は職務上で支援を受けられていたか赤線は使命や目標の明示があったかそれぞれ上場承認が降りた時点で右肩で下がってしまっていますが、一方で同じ時期にセールスでは承認の項目は上がっており対外的にも自分たちはある種の認められたサービスを行っているんだというところで上がっています。

さらに一社だけ別の会社の例を持ってきますと上場前後は全体としてはエンゲージメントは上がっていました。上場日から見て半年前からと上場後2ヶ月の約8ヶ月間を見て右肩上がりにエンゲージメントは上がっていました。その中で何が一番良かったのかを会社様にヒアリングしたところ上司との人間関係の改善が影響が大きかったという話であり、そのことはデータにもあります。

まとめとして、社員のエンゲージメントを高められる組織作り、これが今回のテーマの一つの回答になります。ご清聴ありがとうございました。